「こんなことばかり繰り返す我々に、彼女はもうあきれてしまったのだろうか?」(デュランダル議長)

 この議長のラクス評から垣間見える前作と変わらないラクスのポジションに燃え。「こんなことばかり繰り返す」が所属に分かれて争いの連鎖を繰り広げ続ける状況だとすると、ラクスがいるのはそういった所属同士の争いの連鎖を外から見つめるメタ位置。
 「あきれてしまったのだろうか?」辺りの言い回しからは、逆に今後、まだあきれてもいない、諦観もしていない、「今度こそ」と動き出す「本物」。そういったラクス始動の展開に期待感を膨らませられます(←当方ラクスファン)。

 メタ位置の話絡みで言うと、今回はラクスとは違う(というか敵対する)立ち位置で戦争を外から見ているのが「ロゴス」だというような情報も明らかになりました。

 ジブリールがビリヤードで八つ当たりしてた辺りの描写はおそらくこの辺りの設定に由来していたんでしょう。ジブリールはブルーコスモスでコーディネーターを殲滅したいと、どちらかというと所属の中で戦争に没入してるキャラなんだけど、ロゴスは戦争を外から見ながらそれを操って戦争で利益を受けている集団。同じ戦争がしたいもの同士でもロゴスの大物らはメタ位置からジブリールを見てるため、それがジブリールは気に入らなくて、あのビリヤード八つ当たりの演出に繋がってるんじゃないかと思われます。

 所属同士が連鎖的に争いあってるのを外から見ながら戦争を歓迎しているロゴスVS同じく所属同士の争いの外側に脱出しながら戦争を終わらせようとしているラクス(アークエンジェル)という構図には燃えるものを感じます。

 それにしてもバトルエンタメが無いのは子ども視聴者的には娯楽要素の観点からは激しくマイナスですが、一方で「戦争には経済活動の側面が大きい」というようなちょっと戦争に関する本を読んだ大人なら誰でも知ってるような事実を、子ども視聴者向けに分かりやすく伝えてるのは娯楽抜きで考えると中々良かったんじゃないかと。そういう側面があることを教えられて普通に驚くシンら子ども主人公集団という絵で、子ども視聴者らはキャラに感情移入しつつそういった情報を頭に入れることができたんじゃないかと思います。

 一方でそんな相変わらずメタなラクスに対して、所属の中でザフト軍人の心理誘導を行ってる偽物ミーアはネガティブ要素がにじみ出てき始めました。

 SEEDは前作から「思考を誰かに預けてしまうんじゃなくて、自分で考え抜け」というメッセージを繰り返し発しているので、軍人の思考を誘導するような偽者ミーアの存在は、憎しみという名の愛で民衆を誘導しようとしたロゴスと何が違うの?みたいな話になってきます。

 「勇敢なるザフト軍兵士の皆さん!平和のために、本当にありがとう!」(ミーア)

 とか、訳分からなくて本当思考放棄誘因台詞って感じだし。

 そういうワケで、今話でミーアに懐疑的な視線を向けていた描写があったキャラが作中ポジティブということになりそう。具体的には、ハイネ(ワンカット入りました)、ミリアリア(再登場燃え)、タリア艦長など(「まったく……」の台詞辺りから、タリアは偽者ミーアのことを知っていると思われる)。この理屈からいって、西川ハイネが結構イイ奴キャラになりそうなのが個人的には嬉しい。

◇シン

 民間人強制労働を目撃して怒り、民間人コニールの必死の訴えに何かしらを感じ……と、この辺りにシンの戦う理由のポジティブ面が見え隠れしていたんですが、今回の、

 「普通に平和に暮らしてる人達は守られるべきです!」(シン)

 の発言から、かなり明確にシンの行動原理には普通に日常を暮らしてる人達へのエンパシーがあるものと分かって好感。その日常を奪った存在への憎しみだけが先行してるような第1クールの描かれ方に比べて、そういう人達を(武力を使ってでも)「守りたい」と思ってるという「純粋さ」が第2クールでは描かれ始めてきて、僕的に好感度が上がり始めています。

 そんなこんなでシンの掘り下げが大分なされてきたので(次回はまんまシンの過去篇みたいだし)、そろそろステラとの接触イベントが起こるものと思われます。

 今話でステラが普通の少女の表情で海を眺めていたのが描写的伏線かと個人的には思います。第01話でステラとシンが接触したのも、ステラが普通の少女的にクルクル回ってた描写が入った後でした。今話でシンが休暇に入ったという情報も提示されているため、シンの休暇先の海でステラと遭遇……なんて展開がありそう。

◇議長

 上記のシンの台詞の後、復讐の連鎖の果てに平和は来るのか?というカガリの問いを議長にぶつけるアスランという辺りから、やはり第01話から対比キャラとして接触してるだけあって、議長と対比されるのはカガリということになりそうです。

 そんな議長、着々と平和に向けてことを進めてるんですが、あまりに議長に賛同してべったりなのは、先述した「思考を他人に預けるのはネガ描写」の法則からすると危ない。レイあたり、まるっきりべったりなんでちょっと危ないかな、なんて。

 議長への依存度、レイ>シン・ルナマリア>アスラン>タリアってな感じだと思います。普通に叙勲の話とか、(殺した相手のことには触れず)戦果を褒められて気分良くなってるシンとルナマリアは結構高い。その辺りには疑問符を打つ表情しながらも、アスランも今の所議長依存で動いているのはかなり明確。そうなると所々に議長への不審描写が入るタリア艦長は「自分で考えてる」感が強く、この人は最期まで作中で肯定的に描かれるんじゃと期待してしまいます。指示がアバウトなのもステキだし。

 そして、議長依存が最も低いのがご存じアークエンジェル。最後に議長がその議長から最も遠いアークエンジェルについてアスランに尋ねてるのが意味深。議長にとって遠い(というか議長の思惑通り動いてくれない)んだけど、議長、めっちゃ気にはしてるという。議長−アークエンジェル(主にカガリとラクス)の物語の今後にも期待です。

◇描写

 「キミは何故だと思う、シン?」の戦争が無くならない理由を問いかける議長の場面のバックに兵器であるグフイグナイテッドを描いておいて、そこから兵器産業経済の話に繋がっていく構成は上手いと思いました。

◇今週の和み描写

 「ああ……まあ、いや」(アスラン)

 「ああ……ええ、まあ」(アスラン)

 アスラン、ミーア絡みは曖昧にしか答えられなさ過ぎ(^_^;

◇追

 今日(2/26土)は23時30分よりフジテレビの「僕らの音楽」にて、「ガンダムの音楽」という切り口で「ガンダムSEED DESTINY」の総力特集が組まれる模様。
 T.M.Revolution、玉置成実、HIGH and MIGHTY COLORによるライブ&インタビュアー鳥越俊太郎氏、西川貴教氏、福田己津央監督らによるスペシャル対談ってな感じで面白そうなので、視聴間に合う人は是非観てみては?(僕は視聴します)

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