「でも私は信じています。今を生きている限り、思い出は流れる時のように、新たに生み出されていくことを」(サクラ)

 原作には無いサクラのモノローグは、作品のテーマを言語化して語っちゃった感じです。こういうのはそこはかとなく物語全体から感じ取るのが視聴者側の醍醐味だとも思うんですが、視聴年齢層を意識して分かりやすく言葉にして表現した模様。
 雑誌ニュータイプ4月号の『ツバサ・クロニクル』記事にて、監督の真下氏が語っておられます。

 「サクラの記憶を取り戻すための旅なんですけど、そんなことどうでもいいじゃないかと。旅をして、これからつくっていく未来の記憶・体験のほうが重要なんだよということが、原作を読むとばーんと表に出ているんですよね。たとえ何かを失うとしても前向きに生きるんだと言い切っちゃってるすごさ。そこはアニメでも一番大切にしていきたい」

 この「前向きさ」が今話冒頭のサクラのモノローグには込められていたように思います。僕的にも原作が開始した序盤から、『ツバサ』の帰結は侑子さんに対価として差し出したサクラとの過去の関係性以上の深い関係性を、その後の旅の中で小狼とサクラは作り上げていた……という所に着地するしかないだろうとずっと言っておりました。失っても前向きに作り上げる。ときおり厳しさが描かれる物語ですが、全体ではとことん前向きなメッセージを発しています。

◇今話はサクラ放浪のオリジナルエピソード

 原作では阪神共和国編の羽が見つかるまでサクラは眠っているんですが、改編してサクラパートを第04話に持ってきました。衣装お着替え編とか、普通にエンタメしていて楽しかったと思います。こういう風に改編した利点はこういう風にサクラというキャラを楽しさパートの中に組み込んでヒロインとしての印象を視聴者に残しておくことができる点かと。今話はバトルパートこそ無かったものの、クライマックスの宙に舞うサクラを小狼が受け止める所をコーラス付きのBGMで盛り上げていたのは普通に盛り上がりました。サクラ原理主義者の小狼くんがサクラのためにアクションするシーンがツバサの爽快感の源だと思うので、サクラを長い間物語から離さずにこうやってヒロイン役割で物語を盛り上げる役を買ってもらうのは短期的な盛り上がりも大事なアニメ版としては良いんじゃないでしょうか(ワルを改心させてたのも聖女ベクトルでヒロインらしさをアピールしてました)。
 改編の欠点の方は、なまじ羽がどうこうとサクラが喋ってしまったので、原作通りだとサクラが目覚めた瞬間に発する最初の言葉が小狼に対する「…あなた だあれ?」だという切なさ演出の重みが軽くなってしまったことでしょうか。ずっと喋らず眠り続けていたサクラを守るためにボロボロになって奔走した小狼にかけられる最初の言葉がそれかよ!という所が切なさ炸裂の演出だったんで、そこん所はアニメ版のように改変して既にサクラが色々動いてちゃうと、そのシーンの重さがちょっとばかし軽くなってしまいます。引用した監督コメントを素で解釈するなら、そういう重いシーンよりもポップな前向きさ重視で改変したのかな。「前向きさを前面に出す」と言い切ってるアニメ版も好きなんでOKですが。

 
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