「足りないんだよ、羽根(キオク)が」(ファイ)

 この辺り、現在連載続行中の原作版の、ココロや笑顔を取り戻したサクラを見てると感慨深い。こういう風にココロがゼロの状態から始まったサクラが、小狼くん達との旅を通して空白のココロを埋めていくココロ再構築物語でもあります、ツバサ。そして、「再構築」と敢えて言うのは、記憶と友にココロを取り戻したサクラは単に前のサクラに戻るというワケではなく、旅を通して成長し、小狼くん達と新たな関係性を築いていくニューサクラでもあるから。とことん前向きな話です。このサクラ物語の基本的な作りはとても好きです。
 それに関連して、今回入った呼び名がお互いに、(小狼→小狼くん)、(サクラ→サクラ姫)と変わってるという切なさ演出は、変化してしまった関係を描写してるだけじゃなく、この高麗国編クライマックスに繋がる伏線だったりします。アニメ版初見の人は覚えておくと後で燃えられます。

◇サブタイ「砕けたカタミ」はアニメオリジナル

 春香(チュニャン)の母の形見の扇が砕かれてしまうのはアニメオリジナル展開。遺跡発掘に骨董品鑑賞と、歴史や人の想いがこもった“モノ”に対して敬意を持ってる小狼くんという設定があるので、ここでそういった類の想いがこもった“モノ”を敵サイドにぞんざいに扱わせるという展開は上手いです。小狼くんの静かな怒り不可避というシチェーションです。アニメオリジナル要素を追加するにも、原作の設定に配慮してるなぁという感じです。

◇暗行御史(アメンオサ)は密偵衆に変更

 いきなり音声のみで「アメンオサ」とか言われても分からないですからね。その辺りを考慮してか、全体的に原作であったコリア読みな名詞は改変。

◇服装で世界観描写

 次元が変わるごとに異なる世界を旅するというのがツバサの魅力の一つなので、毎回毎回その世界の風俗やら何やらで世界観を表現していくのがポイントになります。小狼くんとサクラの衣装チェンジが今回の高麗国のコリアな世界観を表現する潤滑油として機能してるのが上手い。
 あと気付いたんだけど、原作でも二番目の国にコリアな世界観を選んだのは、小狼くんの足技をこの国で披露する展開をも考慮してですかね。コリア衣装に動画で炸裂する小狼くんの足技を見て、そうか、テコンドーやりたかったんだ!と納得させられました。動画で描かれる足技はカッコいいっス。1話に1クライマックスとして、コーラスで盛り上げての小狼くんの足技バトルを後半に持ってきてるのも相変わらず丁寧だと思いました。

◇サクラの賭博サイドストーリー

 原作版ではサイコロ賭博でしたが、アニメ版では福引き。地味に色々な世界でサクラちゃん賭博サイドストーリーとも言えるような、サクラが色々な賭け事に参加して勝利する話が入ります。アニメ版でも色々とサクラにギャンブルさせて欲しい所。

坂本真綾『ループ』

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ツバサ・クロニクル Vol.1