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涼宮ハルヒの憂鬱 に参加中!
 「学園コメディ」、「青春活劇」、「ビミョーに非日常系学園ストーリー」、全部その通りだと思ったけど、とにもかくにも、こ、これは、実は普通にイイ話だ!
 ネタバレ感想につき、原作読まずにタイムリーにアニメ版だけ楽しんでるという方はご注意を。
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 これは、アニメ的特撮的漫画的「非日常」じゃなくても、現実の「日常」も面白いぜ!っていう話だよね?

 もう少し言えば、面白くできるぜ!っていう話ですよ。

 幼少の頃はアニメ的特撮的漫画的「非日常」に憧れてたんだけど、今ではイイ感じにドライになって、

 「でも人生ってそんなもんだろ?」

 「凡人たる我々は、人生を凡庸に過ごすのが一番であってだな……」

 とか言ってたキョンが、涼宮ハルヒと出会って、

 「しかしな。ハルヒの生き様をうらやましいと思う理屈では割り切れない感情が心の片隅でひっそりと踊ってることも無視できない」

 と、ちょっとハルヒが求めてるような非日常的面白さに惹かれていくんだけど、最後の最後にもう一度裏返って、そういう非日常的面白さは、実は自分たちの現実の日常の中にもあったんじゃないかって気づくまでの物語なんですよ。

 「俺は戻りたい こんな状態に置かれて発見したよ。俺はなんだかんだ言いながら今までの暮らしがけっこう好きだったんだな。アホの谷口や国木田も、古泉や長門や朝比奈さんのことも。消えちまった朝倉をそこに含めてもいい 俺は連中ともう一度会いたい。まだ話すことがいっぱい残ってる気がするんだ」

 のクライマックスのキョンの語りはけっこう感動もの。非日常へのチケットを棒に振ってでも戻ってきたい「今までの暮らし」があるってステキだよね。

 でもって、最後の最後は、先にそんな「今までの現実でも面白いじゃん」って気づいたキョンが、今までの現実をブッ壊して新しい非日常の世界を作ろうとまでしてたハルヒを日常に連れ帰るラスト。

 最後の決め手は王子様のキス。ギャグチックにはぐらかされてるんでストレートな恋愛感情だったのかは微妙なんですが、ハルヒにとってもキョンと一緒に活動してた現実の時間は悪くなかった、面白かったってことですよね。それに気づかせる王子様のキス。ハルヒ的に、もう少し、今までの現実、日常でキョンと過ごすのもいっかって感じで、今までの現実が守られてフィナーレ。

 こういう不思議な世界から現実へと帰還してくる物語、あるいはヒロインを不思議な世界から現実へと連れ帰る物語っていうのは、村上春樹『海辺のカフカ』とか、最近観たのでは新海誠監督の『雲のむこう、約束の場所』とか、わりと王道なんだけど、その「帰ってくる場所」たる現実が、S・O・S団で過ごしたハジけた日常っていうのがイイ感じにバカでコメディででも愛しくてイイよね。S・O・S団の学園コメディパートがここで生きてきます。あんな楽しそうな日常なら帰ってきてもいいよねと、読者にも思えるのが、この作品の日常コメディ要素を上手く大きい話に組み込んでる所じゃないかと。

 気づけば日常が素晴らしい、気づけばあなたも特別なあなた……って感じのメッセージをメッセージとしてる作品は最近沢山ありますし、野球場のエピソードで自分は全然特別じゃないと絶望して、ラストに「お前が知らないだけで意外とおまえは特別なんだ」とキョンから語られるハルヒしかり、アニメOPの「誰もダメじゃない!」のフレーズしかりで、この作品も一応そういうメッセージを持ってる作品なんですが、精一杯ハジケギャグコメディでオブラートに包んでるのがこの作品独特でイイんじゃないかと思います。作者のテレ隠し?みたいな。こういう、普通に語っては「感動的な話」、「イイ話」になってしまう物語を、精一杯面白可笑しくデコレーションしようという心意気は好きです。そんな意味で『涼宮ハルヒの憂鬱』、大・満・足

→読む順番に列挙


涼宮ハルヒの憂鬱
涼宮ハルヒの溜息
涼宮ハルヒの退屈
涼宮ハルヒの消失
涼宮ハルヒの暴走
涼宮ハルヒの動揺
涼宮ハルヒの陰謀
涼宮ハルヒの憤慨

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