2006年11月05日
最高の「さらなる旅路へ」エンド/『ツバサ・クロニクル』第2シリーズ/最終回「明日へのツバサ」/感想
「私と一緒に旅をしようよ」(幼サクラ)これは良かったですよ。原作がタイムリーに連載中の作品をアニメ化したものの中途最終回なので、ジャンプの打ち切り作品ベクトルで「冒険はこれからだ!」的にまとめてはあるんですが……
具体的には第1シリーズの物語冒頭では、小狼は義務感、黒鋼、ファイはやむを得なく、サクラにいたっては心が無くなって眠ってる状態で「旅」が始まったのに、4クール分の旅を経て、物語終幕では4人それぞれが自分の自由意志で能動的に「旅」を続けていくんだという気持ちになってる。と、こういった4人の「旅」に関する内面の変遷を綴った物語としてまとめてきたんですね。だから最後にファイは「皆ともっと旅を続けたい」みたいな事を言うし、黒鋼も「冗談じゃない」と言いつつまんざらでもないような顔をしてる。そして、小狼とサクラのこの部分を描いたギミックが最高でした。
羽王カオスから1枚だけ取り戻せた羽根に宿ってたサクラの記憶は、幼き日に、幼き小狼に向かって「一緒に旅をしようよ」と呼びかけてた記憶。共に旅する将来を誓いあったのは、カオスではなく、小狼の方だった。幼き日の約束は打ち砕かれて、サクラは心を失い、その時約束した小狼の記憶はもうサクラには無いんだけど、侑子さんの店で対価を渡してから過ごしてきた「旅」の果てに再び新しい関係性を構築したサクラと小狼は、記憶に無いはずの幼き日の約束をリフレインするように、今度は再構築された自分たちの意志で一緒に「旅」を続けていくことを確認し合うという最高のラスト。最後に(アニメ版)最後の羽根の記憶の意味が明かされる所はかなりグっときたよ。何度も書いてきたけど、ツバサのテーマの一つは、「一度関係性が失われたとしても、新たな関係性を紡いでいくことはできる」。最後に奇しくも幼少の時の気持ちをなぞるような気持ちに小狼とサクラが到達できたのも、2シリーズ分の物語で新しく紡ぎ続けてきた新たな関係性があればこそ。この、「新たな関係性」に対してまるまると与えられた「是」。アニメ版52話分の物語をまるまる肯定した、優しい、見事なラストでした。こんな、「これからも旅を続けていく」こと自体がまとめになるような「さらなる旅路へ」エンドがあったとは。
◇原作の核となる伏線部分の尊守(反転部、原作雑誌掲載分までのネタバレあり)
もう一人の小狼や、飛王の思惑など、コアな部分の伏線は、特に無理矢理まとめるためにいじったりせず、そのまま未消化伏線として残しておいて、おそらくは機会があったら続編も原作準拠なまま可能なようにまとめたのだと思いました。具体的には、星火が「サクラ姫はともかく……」と他の3人よりサクラを別格視する台詞が入ったのは、「サクラこそが次元の記憶を集積できる媒体で、幾つもの次元を旅させて記憶させた後に飛王が手に入れたいもの」という原作設定準拠の伏線だし、星火が笑みを浮かべてるようなカットが入るのは、「星火が本当の小狼を逃がして飛王に反乱するという」原作の展開への伏線でした。ここまでやったら原作完結してからゆっくりでいいんで、最後まで映像化して欲しいなぁ。大川さん(CLAMPの原作の方)がインタビューで仰ってた通り、「最初の構想時点から『東京編』以降は作風がガラっと変わる予定だった」を地で行って『東京編』からはそれまでの子供向け冒険活劇テイストが薄れてシリアスで過酷な展開に入っていくので、ちょうどアニメ版も切り替える感じで映像化。だけど設定や伏線は『ツバサ・クロニクル』から継承……みたいな感じで。実現しないかなぁ。
◇羽王カオスはサクラの羽の集積体でいわばサクラ自身という種明かし
今回も、サクラを勝ち取るのは小狼かカオスか二人に一人、譲れない「願い」、相克する「願い」という状態から、うまく相克を解消するエンドで落ち着きました。サクラ自身だからカオスも救ってやる対象……という風にもっていくのは反則級に優しい解消法だよなぁ。ただ、アニメ版はCLAMPはほとんど感知してないんですが(CLAMPニュータイプに「ノータッチでおまかせしてます」と書いてありました)、こう何度もCLAMP的な、「本当の覚悟と誠意」を宿した「願い」、その相克……という部分の作劇をこうして解消される終わり方を見せられると、CLAMPの原作の方も、今は「願い」の尊さの方を全面に押し出して描いてる感じだけど、最終的には、もしその「願い」が他者と相克してしまった場合は、他者を打倒するだけじゃなく、それ以外の解消策を模索することも大事だ……という所に落ち着くんじゃないかという気もしないでもない気がしてきた。原作でも飛王の「願い」がネガティブ一辺倒とは暗示されてないゆえに、今回アニメ版ラストで小狼がカオスへの刃を止めたように、原作でも飛王は打倒される以外のラストなんじゃないかなぁ。
◇ラストバトルは王道の燃えを押さえていた点
黒鋼とファイから鍛え直された緋炎が小狼に投げ渡されて、炎と共に抜刀、右手に緋炎、左手に蒼氷の二刀流、BGMは第01話からつかわれてきたこれぞ『ツバサ・クロニクル』という代表クライマックス曲……という所は普通に燃えた。二刀かざして突っ込んでいく所は、空中戦解禁設定を最高に生かしててカッコ良かったよ。劇場版の小狼くん樽大砲で突撃とかのクライマックスよりも数段カッコ良かった。ラストクライマックスでは、主人公は二刀流にならなければならないのだよ!
◇
◇というわけで!ツバサ・クロニクルはジ・エンドなの!
原作が現在凄まじい展開をしてるだけにやっぱり原作スゲーとは思いますが、先に書いた通り、作風が一変する「東京編」以前の冒険活劇部分を子ども向けにアニメ化した映像作品としては非常に満足。随所にあったバトル追加/単純化の子ども視聴者用の改変も好感が持てましたし、一方で原作よりもサクラを重要視して、「心を失ったサクラが旅を通しての新たな関係性の中で心を再獲得していく物語」としての成熟度は原作よりも上をいってる部分もあって、大人視聴者的にも楽しめる部分が多々ありました。特に第2シリーズになってからはオリジナルエピソードが光ってたかな。第21話「はたらくサクラ」なんかが大好き。羽王カオス絡みのファイナルエピソード以前の実質最後のお話ですが、冒頭で心を失って眠るしかできなかったサクラが、Vividにはたらけるまでになったんだ……というのを感じられた点で、アニメ版のサクラ物語としては最終回というくらいに楽しい話でした。
そんなこんなで第3シリーズの制作にも期待しつつ、当ブログでは引き続き原作感想でお付き合い下さい。次の17巻は11月17日発売です!
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ある人は『偽の羽は「偽記憶」という形でサクラと小狼の間の関係性を問い直す試みだった』と考察しています。
カオスは様々な色の羽根を持っていたから羽根は偽物だと思っていました。
第3シリーズをやるとなると真小狼の位置付けをどうするのかが問題になると思います。24話の小狼の夢の中に出てきた時は不敵な笑みを浮かべていましたから。
記事中に書いた通り、一度小狼達よりも強者であるカオスがいれば小狼達は必要無い/無かったのではないか?と52話分の旅の意義を問いかけておいて、最終的にサクラの側にいるのも小狼の自立意志なら旅をしているのも4人の自立意志だとまとめることで、52話分の旅を肯定するようにおとしてきました。まさに総括といった感じだったと思います。
第3シリーズ、真小狼は別に原作通りでいいのではないでしょうか。原作通りで都合が悪くなるような設定変更は無かったと思います。あっても多少の誤差の範囲かと。
どうして反発するのか不思議で仕方ありませんでしたが。
第3シリーズは原作の進行状況を考えれば、色々なものが絡むテレビアニメ化という事業にあたってはまだ明かせる段階では無いと思うんですが、あんまりそういうことに想像を馳せたりはせずに、口が赴くままの自己顕示のアウトプットが蔓延してる場所だと思いますので。





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