凄い構成力としか言いようが無い。
打ち明けられたファイの嘘は、とりあえず3つ。
●セレス国にサクラの羽があるのにファイは東京編以前の「サクラの羽が目的」だった頃でも黙ってた
→セレス国へ戻りたくないためと思われる。
●阪神共和国編冒頭で、小狼の衣服に付いていたとファイが差し出した1枚目は、実はファイがもとから持っていたもの
→魔力のある真・小狼は看破していた。ゆえにファイと少し距離を取っていた。
●ファイには自分より魔力が強い者を殺す呪いがかかってる
→両眼のファイより魔力が強い侑子さんは当然知っており、冒頭の雨の日の侑子邸の場面では、違う次元に身を置いて防御していた。
すげー。三番目とか、ちょっと読み返してみたんだけど、本当にあの雨の場面、他の皆は水滴がついてる絵があったりで雨に濡れてるのに、侑子さんにはそういうカットが一切無いの。長期伏線回収どころのさわぎじゃないです。すげー(二度言った)。
そして、ここであえてあの雨の日の皆の選択に読者の意識を遡らせておいて、それと対になるファイの選択。
「セレス国へ戻ります」(ファイ)
あの雨の日は、大切な魔力制御の入れ墨を対価に渡して「セレス国へは戻りたくない」という願いを願ったファイが、物語を通して、今度は視力を対価に「セレス国へ戻りたい」という願いを願うという、転覆構成。その真逆の結論に行き着いたのは、無論旅を通して得た(特にサクラとの)関係性があるわけで。
物語冒頭(それこそあの雨の場面)で敢えて小狼とサクラの間の「関係性」を奪ってみせて「関係性」の尊さをあぶり出していた「ツバサ」ですが、ここでも、飛王のコントロール下にあるとか無いとかを凌駕する作中是として、紡ぎ出された「関係性」が描かれます。「東京編」にてそれまで培ってきた仲間間の「関係性」が一旦転覆するんですが、それでもなお強く、紡ぎ出された「関係性」は「生きる」ということを描いているのがカッコいいです。「東京編」で対価と引き替えにサクラがファイの生存を望んだのも、今、ファイが対価と引き替えに全てを覆してまでサクラの体を救済するためにセレス国へ戻ることを願うのも、起点は「東京編」以前で紡がれてきた仲間同士の「関係性」にあります。「東京編」以前/以後で色々なものが変わった「ツバサ」ですが、ちゃんと「東京編」以前のお話も重要な意味をもって生きているように構成されてるのがやっぱり凄いなぁ。
◇夢の中のサクラ
これは、今週のヤンマガの「XXXHOLiC」を必ず読みましょう。夢に渡ったサクラと四月一日が邂逅する場面が描かれ、非常に幻想的な演出で作中における「夢」が何なのかが語られます。
一番のポイントは「夢」は次元云々を超えて他者間で「繋がって」いるという設定。そしてその前の四月一日と遥さんの会話、及び今話の見開きの侑子さんの台詞(「XXXHOLiC」の方)から推測するに、もう一歩踏み込んで、「他者の見てる夢があなたの現実、あるいはあなたの見ている夢が他者の現実」というような幻想文学的な世界観を描き出そうとしているのだと思います。この「夢」を通して他者と共起関係にあるというのも、哲学的に深い話を抜きにすれば、描いているのは「関係性」の尊さだと思います。あー、今週の「XXXHOLiC」&「ツバサ」は本当に神がかかってたなぁ。
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僕なんかの読解力を大きく上回って作品を掘り下げてらっしゃるので、なんだか最近自分にはもったいない作品です(汗)
ところで今回の記事xxxHOLiC部分の「静さん」は「遙さん」ではないでしょうか?
それにしても、あの筒の反対側に小狼はやってくること、夢の中の羽根は誰が持っているのか?(いよいよ百目鬼が持つ卵に関係??)
楽しみですね!