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 「別に今生の別れって訳じゃねェ 誰とだって会おうと想えばいつでも会えるじゃねェか」(相楽左之助)

 単行本初収録の「弥彦の逆刃刀」をはじめ、思わず読みふけってしまった『るろうに剣心』最終章部分の感想です。口絵は描き下ろし緋村夫妻&剣路。和月先生の書き下ろしあとがきは絵柄が随分変わってるなーとか当たり障りの無いことしか書いてなかったんですが、それでも買って良かった。タイムリーに連載されてた多感な青春時代から、もの凄く繰り返し読んだ作品なんで新たに気付くことはそんなに無いんですが、一つ気付いたことと言うと……
 ……VS雪代縁の最終戦が終わったあと、剣心と薫とで京都の巴さんのお墓を参るエピソードに1話さいてるのね。この場面だけちょっと忘れてたんだけど、その後『武装錬金』を読んで和月作品では死者を尊ぶことに特別な価値を持たせて描いていることが分かっていると(『武装錬金』でもカズキと斗貴子さんが犠牲者のお墓に手を合わせるシーンが物語上非常に重要な意味合いを持っている)感慨深い一場面です。落人群から立ち上がった時に夢の中の雪景色で笑顔の巴さんと邂逅して以降、巴さんは一切剣心視点では出てこないというのがイイ。

 「抜刀斎、貴様、先程姉さんが微笑ったとぬかしたが…今はどうだ?微笑っているのか……?」(雪代縁)

 「いや…微笑う微笑わないの前に拙者にはもう見えていない…あの一度きりの笑顔が最後…あれ以来影も見えない……声も聞こえない…けれどそれでいい…一度きりでも十分…それだけで拙者は、一番大切な人と、仲間と、目に映る全ての人々の笑顔を求めて、前より力強く新たな一歩を踏み出せるのでござる」(緋村剣心)

 最終戦の最後にずっと過去に囚われていた剣心の口から「今」という言葉が出てくるのが熱い。過去を尊びながらも、死者は生き返らないし、ずっと死者に寄り添って生きることもできない。過去を踏まえて、未来へと今、歩を進めなければならない。墓前に最後の言葉、「さようなら」をかけて、剣心が選んだ薫へと手を差し伸べて、二人寄り添って歩いていく図で引きという美しい場面です。

◇弥彦の逆刃刀

 弥彦がついに独力で人を守りきるという、最終話の剣心→弥彦への逆刃刀の受け継ぎエピソードの補完的なお話。VS十本刀戦でも、VS鯨波戦でも、結局ラストは誰かに助けて貰っていた弥彦ですが(前者は比古清十郎、後者は復活した剣心)、このエピソードでついに独力で人を守りきります。

 剣心から受けついだ逆刃刀は言わずもがなですが、背中に左之助から受けついだ悪一文字を背負ってるのも何気にポイントでしょうか。ゆえに、クライマックスの抜刀コマは、「人の命を守るため」に「政府のお偉いさん」を逆刃刀で打倒と、剣心イズムと左之助イズムをダブルで体現してる意味合いになってるのが熱いです。剣心ほど綺麗事ベクトルに偏りすぎることが無いという意味で、いい意味で作中で示唆された剣心超えに向かっている感じ。

 どうでもいいけど、赤べこの衣装をメイド衣装にしていた和月先生は、時代の先を読んでいたと思う。よもや、こんなにメイドカフェが流行ろうとは誰も思わなかった時代に描かれた作品ですよ。すげー、微妙な先見性だ。

◇春に桜

 冒頭で引用した、最終章で左之助の口から語られる、

 「別に今生の別れって訳じゃねェ 誰とだって会おうと想えばいつでも会えるじゃねェか」(相楽左之助)

 を体現した優しいエピソード。大人恵さんがひたすら美しい。

 最終章時点では左之助の言葉には、巴さんを思い出させる形で、裏を返せば死んでしまった人とはどうやってももう会えないという含みが込められていたと思うのですが、そっちの方には話を持っていかず、生きてる限り会えるじゃない!というもう、ひたすらユートピアなメッセージ。バカみたいなハッピーエンド。物語の質を取るなら薫は殺すべきだったと自ら認めながらも、それでもハッピーエンドにこだわりたい自分がいたと語る和月先生の和月作品。結局続く『武装錬金』でもライナーノートでどんなご都合主義と言われようとカズキは救済されなければならないと述べてバカみたいなハッピーエンドに落ち着いたわけですが、この「春に桜」を読んでるとそれでいいんじゃないという気になってきます。「予定調和のハッピーエンドをお金を出して読みたい気持ちが分からない」、「お金を払ってまで鬱なバッドエンドを読みたい気持ちが分からない」。意見としては等価にあり得ますし、あり得ていいと思います。たまたま和月作品が後者の人向けのニーズを満たすために描かれた作品だというだけのことです。

●漫画語りWEBメディア「マンガタリ」様に書かせて頂いた僕の『るろうに剣心』記事はこちら↓

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