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 「君はまだ、何も傷つけてないよ」(柴田竹虎)

 『サイコメトラーEIJI』&『クニミツの政』の黄金タッグの最新作は、少年犯罪に相対する新米刑事さんのお話。相変わらず安定して面白いです。今週号のマガジンに載ってた分を初めて通して読んで、面白かったんで3冊だけど衝動的に大人買い。
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 『クニミツの政』で「政治」を扱った後に、今度は「少年犯罪」。社会的な題材に果敢にチャレンジです。『M・I・Q』を読んで株や経営を全て分かった気になるのも、『ガンダム』を観て戦争が全て分かった気になるのもバカなように、娯楽補正を十分に考慮してこういう現実の社会問題を扱ってる漫画は読まなきゃならないと思ってるんですが、エンターテイメントに補正しながら、真面目に考えるにあたって十分に導入材程度にはなってる点で、この安童夕馬・朝基まさしコンビのバランス感覚は好きです。

 どちらかというと、少年犯罪の加害者の少年・少女の立場からの、犯罪は重罰で抑制しておけばそれでOKみたいな単純化への問題提起というスタンスの作品みたいです。主人公の新米の少年係刑事柴田竹虎が加害者の少年・少女と真面目に向かい合って、ギリギリで取り返しのつかない重犯罪を阻止するというテンプレートが続きます。既に軽犯罪は犯してしまってる少年・少女なんですが、やり直しは可能というメッセージ。

 後は、少年犯罪に対する過度の一般化・テンプレート化に対するカウンターでしょうか。最新号のマガジン分の話では、TVで評論家達が「ネットの闇」、「キレる子供達」というテンプレートで過度の一般化を行って一括りに評論してる様がネガティブチックなテイストの絵で描かれるんですが、そうじゃないんだ、犯罪を犯す一人一人に背景があって、事情も違うんだ、そこを過度に括り過ぎないでくれ、と、これもたぶんメッセージ。主人公の柴田竹虎が、一人一人の少年・少女に向かい合って、個別の案件、個別の事情を解体していって、ギリギリで少年・少女を救い上げます。

 余談としては、村上春樹の「抜け道が多い方が良い世の中だと思う」って言葉をこれ読んで思いだしたなぁ。進学エスカレータ・就労エスカレータなんかに代表される、世の中の一般・スタンダードと言われる道から何らかの事情で外れてしまって、外れたんだけどどこにも他に生きられる「抜け道」がなくて、優先順位が下の方の選択肢として犯罪を選ばざるを得ないって側面は確かに犯罪にはある気がする。

 スタンダードからドロップアウトした者の気持ちっていうのは、ドロップアウト経験者じゃないと中々理解できないよなぁ。呆然とした気持ちのまま「抜け道」を探すんだけど、中々見つからない。僕は自分で道を造るということをやってのけたつもりだけど、それを完遂できるタフさを持った人ばかりではないと思う(自賛でこんなこと言うわけじゃなくて)。

シバトラ 1 (1) (少年マガジンコミックス)

シバトラ 2 (2) (少年マガジンコミックス)

シバトラ 3 (3) (少年マガジンコミックス)