2007年12月15日
機動戦士ガンダムOO(ダブルオー)/感想/第11話「アレルヤ」
超渋い脚本。今までで一番大人向けの話だと思うし、子ども視聴者は今回は最初からターゲットから外すくらいの勢いで書かれた脚本だったんじゃないかと思います。というか、アレルヤと同年代視聴者(二十歳前後)でも、描きたかったと思われる感覚をじっくりと味わえたかは疑問なくらい。スメラギさんの年齢、スメラギさんの立ち位置にまで視聴者がなって、ようやくあの感覚を描きたかったのか、と分かるというか。
たぶん一番描きたかったのは、「成人」というか、大人になることと、それに伴う「痛み」。前から書いてるようにガンダムマイスター三人(刹那、アレルヤ、ロックオン)は今は天上にあがって活動してるけど、地上時代の「過去」を重要なファクターとして抱えていて、そのうちその過去が自分の前に立ちはだかってくる展開になるかのような伏線(刹那にとってのアリーの存在、、アレルヤにとっての超人機関にハレルヤ、ロックオンにとっての同じ顔をした何者かの存在、など)が張られていたんだけど、今回はその第一弾として、過去に対峙するアレルヤのお話が描かれた回。
極端に言えば、過去の自分を自分で否定して、自己否定の末に大人への階段を上がった(成人した)というお話。戦争のために作られた人工生命は害になるからここで殺しておくのが世のため(というかソレスタルビーイングの理念)というのは理屈では分かっているんだけど、過去の自分もそこにいたものだから、アレルヤは中々引き金が引けない(自分を否定はできない)。
だけど、結局、昔「撃ちたくない」と本心から思いながら結局引き金を引いたように、今回も泣叫びながらアレルヤは超人機関に向かって引き金を引く(=自己否定)という展開。あんだけアレルヤに向かって綺麗事を言うな、殺せ殺せと言っていたハレルヤが、作戦行動後に表面的な言葉ではアレルヤの行動を称賛しながら、自己否定の痛みで涙を流してるという二律背反な描き方が良かった。
で、こういった自己否定の末に痛みを伴って大人になるという感覚は、ガンダムマイスターとして有益なら過去の清算はちょうどいいみたいなこと言ってたティエリアや、作戦後に「大スキャンダルっスよね」とか言ってたプトレマイオスクルーには分からず、どうやら既にそういう痛みを経験して今に至ってるスメラギさんだけが理解できるという結び。
ラストシーンは渋すぎる。
なんでスメラギさんはお酒を飲むのか?という物語序盤から張ってた伏線、及び今話Aパートでも丁寧に入っていた仕込みを受けて、ちょうど二十歳を迎えたアレルヤが、「無性にそういう気分」と、先行者であるスメラギさんの感覚に到達。お酒を大人にしか分からない「痛み」のガジェットとして機能させてカッコよく結んでいます。
「何故こんな苦いものを?」(アレルヤ・ハプティズム)
「そのうち分かるわ、きっとね……」(スメラギ・李・ノエリカ)
スメラギさんも経験しているらしい(おそらくは自己否定の末の)大人になる痛み(=お酒の苦さで表現)を、スメラギさんは先行者の立場から、アレルヤは成人して今回大人になった立場から共有した所でエンディングへ(アレルヤの方はその痛みの正体が何なのかまだ分かってない感じなのがまた良い)。
渋い。渋すぎる。子供視聴者は置いてけぼりだったと思うけど、この渋い脚本は称賛。苦さ、痛みをあえて飲んでるという感覚。大人になる過程でどこかでそういった苦さ、痛みを自分のものとして取り込んでいるという繊細な感覚を、一話内で上手く物語として表現していたと思います。
#そして、否定されるべき存在としての悲哀を立場上ソーマとアレルヤが共有してるように描かれており、そんな存在に温かい目を向けてしまう大人の存在として、セルゲイ中佐とスメラギさんが同じ立場として描かれている。このセルゲイ&ソーマ:スメラギ&アレルヤ構造はこの作品の中のかなりの見所。
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この記事へのコメント
(ブラックラグーン)
多分、アレルヤが二十歳になったという話は嘘のような気がするけれど(超人機関のようなところで育てられた強化人間が自分の誕生日を覚えている可能性は低いと思う)、スメラギ女史もそれを承知で、そのうえで、大人になる痛みを体感した彼に飲酒の資格があることを認めたような気がします。
大人になったばかりのアレルヤ、大人の痛みを知るスメラギ女史、責任逃れに終始する超人機関の汚い大人、セルゲイの毅然とした大人ぶり……。『OO』初のサイドストーリーはカタルシスはないけど、しんみりとしたエェ話でした。
ああ、確かにアレルヤの二十歳は嘘の方が、それでも気持ちを汲んだスメラギさんの情がより強調されてイイ感じかもです。
とにかく、天上から何でも予測しちゃう完璧人間かのようにミスリードさせて始まったスメラギさんというキャラが、今回自分でも言ってたように実は不完全で、痛みが分かって、情があって、実はとっても人間的な人というのがしんみりするポイントだと思うんで。
毎回記事を興味深く拝見させていただいてます。
>今までで一番大人向けの話
今回の話、あちこちの感想を拝見させていただいてると、確かにある年齢辺りから肯定と否定が分かれているように思います。
迷いながら、本心は嫌なのに引き金を引かざるを得なかったあの姿は、とても人間らしいと思いました。
一度決心してもまた揺らぐ・・・
「子供」なら逃げや奇麗事が赦されるかもしれなくても「大人」には赦されないこと。
だからやらなくてはいけない。
大人になると言うことは、清濁併せ呑むことでもありますからね・・・
最後のお酒のシーン、本当に秀逸でした。
では。
どうも初めまして、コメントどうもです。
ラストのお酒のシーン良かったですよね。視聴者の年齢によって、アレルヤ側の視点から見るか、スメラギさん側の視点から見るかに別れると思うんですが、スメラギさん側の視点から見られる大人視聴者が、ああ、あの感覚かとしみじみとする形で一番輝く脚本だった気がします。
若いうちは不条理とか矛盾とかそーゆーヨゴレっぽいモノに反発してナンボみたいなトコありますけど、ハレルヤの言葉ようなキツいのも飲みこまなアカン時もありますよねぇ。
歴代ガンダム主人公はどこまでも若さ全開で反発するみたいなのが定番でしたけど、こーゆー形で人間の成長が描かれるってのはジーンと来ましたねぇ。
「アレルヤ」というサブタイにふさわしいイイ話でした。
スメラギさんは結構高給であろうCBの給料をかなりの程度酒代に費やしてこだわりの一本を買ってそうだから、そうとうイイのを買ってこないと(笑)
そういう僕はお酒飲まなくなって4年くらいになりつつ、こんなお酒と大人がどうこうという文章を書いてたりなんですが(笑)
確かに大人が作り上げた世界に子供が反発していくお話が多いガンダムの中、大人の世界の痛み、苦さを飲み込む形で成長が描かれるというのは珍しいかもです。ゆえに、今回は「渋い」と称してみたわけですが。
「そのうち分かるわ、きっとね……」(スメラギ・李・ノエリカ)
私はどうしても自身がアンチ酒人間なので
ここらへんを理性的に分析できませんでしたね…
わかるととても渋い表現ですねぇ
アレルヤとスメラギさんがやけに仲が今まで良かったのも
アレルヤが酒をのめる相手としての伏線だったみたいですね
黒田さんはこういう渋いのうまいですね〜
(逆にあの人は今までのガンダム路線の脚本は苦手そう…それかリヴァイアスの範囲内になっちゃいそう)
渋いラストでした。
スメラギさんのお酒要素が、ただの飲んだくれお茶目さん要素じゃなくて、ちゃんと意味があったという。
第1話からお酒飲まなきゃやってられない発言がスメラギさんにはあったので、10話越しに綺麗にパズルのピースがハマった感じですね。たぶんこういうのがシリーズ構成の方の実力が反映されてる部分なんだと思います。









