2007年12月26日

ツバサ/マガジン感想/Chapitre.177「醒めない夢」

 今週の「ツバサ」。マガジン雑誌本編のタイムリーネタバレ感想、Chapitre.177「醒めない夢」の感想です。
 怒濤。
 ◇

 「貴方と私のことも!」(サクラ)

 躰の記憶のために写身小狼はサクラを殺せないという所で、写身小狼のターゲットが真・小狼に変わったところで、サクラの「小狼君」「小狼」「貴方」の三つの呼び方が入り乱れたシャウトが炸裂。夢の世界が崩壊して外界の日本国へ。

 サクラの台詞はやや難解だけど、たぶん、

 「小狼君」→旅の途中で培った写身小狼との関係性そのままに写身小狼のことを呼んでる箇所。

 「小狼」→真・小狼を呼んでいる箇所。真・小狼をサクラと旅で関係性を結んだ写身小狼と区別して「君」を省いて呼んでる箇所。

 「貴方」→写身小狼を呼んでる箇所。写身小狼は真・小狼の餌である存在だから、厳密には「小狼」じゃないという含意を込めて真・小狼と区別して「貴方」と呼んでいるのだと思われる。

 重要なのは、サクラが写身小狼と真・小狼をごっちゃにしないで、虚構の存在である写身小狼に一つの「個」を認めて必死に語りかけているのがこの箇所だという所。

 インフィニティ編序盤が、写身小狼と真・小狼を重ねてしまうサクラの苦悩から、最後の戦いの前に真・小狼のことをサクラが「小狼君」と呼んで真・小狼の「個」を同定するまでの流れを描いたお話だったのに対し、今回は真・小狼の方を「小狼」、写身小狼の方を本当は小狼ではなかったんだけど、サクラにとっては重要な存在である一人の人間である「貴方」と呼ぶことで、写身小狼の方の「個」を同定してあげてる場面。

 こう、虚構の存在に対して、培われた関係性のみをたよりにして「個」を同定しているという。ぐっとくる箇所です。

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◇奈須きのこ『空の境界』◇

 一話ごとに、「俯瞰」、「痛覚」、「矛盾」、「記憶」、そして表題「空の境界」といった概念を濃密にテーマとして絡めて煮詰めきってるのが凄まじいです。一話一話が高密度であるだけでなく、全話を通してみると、それはそれでしっかりと一本通った伏線、テーマが縦軸として存在すという美しさ。概念云々だけじゃなく、ストレートに切なさが残留する恋愛小説としても読めます。初読で満足できず、繰り返し読み返す類の作品です。

空の境界 上 (1) (講談社文庫 な 71-1)
空の境界 上 (1) (講談社文庫 な 71-1)

空の境界 中 (2) (講談社文庫 な 71-2)
空の境界 中 (2) (講談社文庫 な 71-2)

空の境界 下 (3) (講談社文庫 な 71-3)
空の境界 下 (3) (講談社文庫 な 71-3)

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