ブログネタ
読書 に参加中!
 自分の身近な部分でも、日本全体とかの世の中的にも、「介護」にまつわる諸々の環境が絶望的で暗澹たる気分になって、あー、もう今日は死にたいとか思ってたんだけど、一時間ほど外に出る時間が取れて町の図書館で本を読んでたら、ちょっぴり元気になってきた。
 ◇

 どんなにツライ、苦しいっていう状況でも、一日一時間くらいでいいから自分的に気持ちのいい思索の時間を取れると人間何とか生きていける気がする。別に読書じゃなくてもいいので、漫画を読むとか、絵を描くとかそういう時間でもいいんで。

 そう思うと、日本のコンテンツ産業っていうのはエラいよなぁ。極端な話、週一のジャンプを楽しみに介護生活を送ってる若者とかがいるならば、漫画雑誌(コンテンツ産業ね)っていうのは心療内科とか諸々のカウンセリングとかの仕事とも比肩して捉えられる気がする。

 ◇

 ちなみに図書館で読んでたのは、木田元『現代の哲学』。

 あと50年経てば俺が言っていたことが分かる(概意)と言いつつ精神錯乱して世の中から退場したニーチェが予見していたニヒリズムの到来を、数学の危機とか物理学の危機とかの到来に伴う、「今まで確固たる前提として信じていたものが懐疑の対象になってしまった」という二十世紀初頭の思想風土に結びつける所からこの本は始まります。

 神が与えたもうた摂理を記述する客観的な言語であったはずの「数学」と、そんな磐石の基盤を元にして最も客観的な学問として信用されていたはずの「物理学」。

 その辺りが、ゲーテルの「不完全性定理」で数学が大ダメージを受け、ハイゼンベルグの「不確定性原理」で物理学が大ダメージを受けと、なんだか今まで前提として信じて疑わなかったモノが、ガラガラと崩れていく感覚。

 アインシュタインに至ってはニュートン物理学からパラダイムの転換を起こしてしまったりして、これはもう、鎖国してたら黒船が来たとか、そういうレベル以上の圧倒的な前提の崩壊。

 で、思考するための前提が危機に瀕して、みんなボロボロになっちゃうんだけど、それでも真実っていうか、確かなモノっていうか、そういうモノを再構築するなり視点を変えるなりしてもう一度見つけよう、作ろうっていうもがきが「現代の哲学」な訳なんですが、そういったあり方に僕は「物語」的な感動を感じてしまいます。

 で、いきなりサブカルチャーな話に飛びますが、最近の漫画やアニメやゲームに、「一度物語中盤で信じていた前提が崩れて、だけどそこから自分なりの「答え」を導き出すために頑張るお話」が多いのは、そういった思想史的な時代背景も関係しているのかもしれないとちょっと思った。きっと登場人物達のそういうあり方に僕らは(というかたぶん作り手も)共感できるんですよ。

 ネタバレになるので詳しい部分は反転させておきますけど、

●ツバサ
------------------------

 信じていた前提(=自分自身)が実は写身だった、虚構だったという崩壊から、そういった断絶を超えるものはある!というのを描いている物語。写身小狼と写身サクラが培った「関係性」はそれでもホンモノだった、というお話だと思われる。

------------------------

●コードギアス
------------------------

 信じていた前提(=自分自身の記憶)が実はニセモノだった、虚構だったという崩壊から、立ち上がるお話。皇帝に勝つというのは表面的に戦争で勝つというだけじゃなくて、記憶を改竄するギアスを乗り越える、一度記憶という前提を壊されてもそれを乗り越えられるものはある。そういうのを獲得するということだと思われる。

------------------------

●リトルバスターズ!
------------------------

 信じていた前提(=自分自身を取り囲んでいた世界)が実はニセモノだった、虚構だったという崩壊から、その虚構の世界で培った力で現実の方をハッピーエンドに改変してしまうお話。

------------------------

 諸々、信じていた前提が崩れて、それでも諦めないよっていう現代思想の求道者達に通じるモノを感じます。

 まー、こういうの「燃え」ますよね。一度信じていた前提が崩れた時に、ニヒリズムに走るか、もう一度立ち上がるかの選択肢がギャルゲーの如く目の前に現れる訳ですが、そこで「もう一度立ち上がる」にカーソルを合わせた人間っていうのは、とてもカッコいい。それこそが現代のヒーロー像なんじゃないかっていうくらい。理想的な代案なんてすぐに思いつく訳も作れる訳もないんだけど、それでも諦めないという、その姿勢、そのあり方に共感を覚えるんだなぁ。

 ◇

 という訳で、介護保険の締め付けで来年からはヘルパーさんも僕の環境では使えなくなりそうなんですが、諦めないで頑張っていきたいと思います。

現代の哲学 (講談社学術文庫)