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 今週の「バクマン。」で、以前書いた「現実経験を漫画に生かすシュージン・サイコーVS現実経験は薄くても漫画に特化した天才である新妻エイジ」の対立構図の他に、もう一つこの作品でフォーカスしている対立軸が見えるようになった気がするので、簡単に感想をば。


 もう一つこの作品でフォーカスがあたっている対立軸は、たぶん、

「既存のランキングで上位を目指すのを是とするかVSそういうの関係なく自分の好きなことをするか」

 なんじゃないかと思います。

 今回がジャンプ内のアンケートの順位(ランキング)に焦点があたった話だった訳ですが、この「既存のランキング」っていう概念が「バクマン。」の中では意味深に何回も出てきていて、最初は、「中学校の学力テストのランキング」、次がシュージン原作「1億分の」に出てきて、「この世は金と知恵」にも設定として生かされた、作中作設定の、「全人類にランキングを付けて管理する」という設定。そして、今回出てきた、ジャンプ内のアンケートによって決められる、「作品の価値のランキング」です。一見バラバラですが、ここまでは、意図して同じ主題をあぶり出すために繋げて「ランキング」に焦点をあてていたのではないかと僕は感じました。

 一つ一つ、対立軸になるようにキャラクターを設けているんですよね。

 「中学校の学力テストのランキング」の時は、「既存のランキングで上位を目指すのを是とする」側のキャラクターが岩瀬さんで(深層意識ではそういうのに疲れちゃってるのも見え隠れしていた気はしますが)、「そういうの関係なく自分の好きなことをする」方が他ならぬシュージンで、シュージンは「学業で上位を取る」という既存のランキングに基づいた価値観よりも、「好きな漫画をやる」という、既存のランキングとか関係無い自分のやりたいことをやる道をこの時は選んだのでした。

 作中作「1億分の」「この世は金と知恵」は詳細な内容は分かりませんが、断片的な情報からすると、どうも「コンピュータが管理する全人類のランキングシステム」に、肯定的な立場のキャラと、否定的な立場のキャラが対立する内容だったんじゃないかと僕は推測しています。現実の学業関連イベントを糧にした、まさに前回書いた「現実経験を漫画に生かすシュージン・サイコー」が色濃く出てた作中作だったんじゃないかと。

 そして、今回の「アンケートによって決まる作品の価値のランキング」ですが、ここでは、カウンターキャラがなんと新妻エイジなんですね。

 「アンケートって何です?」

 シュージンとサイコーが、おじさんがアンケート1位にこだわっていたという設定もあり、あくまで王道路線に切り替えて、既存の「アンケートによって決まる作品の価値のランキング」で1位を目指すことに今話時点では着地してるのに対して、新妻エイジはアンケートの存在すら知らず、自分の描きたい漫画を描いているという。

 この時点では新妻エイジの方は「好きなものを描く」がそのまま「アンケートでも上位」に結びついている点がまだ物語として過渡期な感じですが、思想対決としては、「既存のランキングで上位を目指すのを是とするシュージン&サイコーVSそういうの関係なく自分の好きなことを描いてる新妻エイジ」というのが今話時点では形成されていると思います。ちょうど、中学校の学業ランキングの時とは、シュージンの立場が逆なんですね。あの時は既存のランキングよりも好きなこと、やりたいことを取ったシュージンが、今話ではジャンプのアンケート依拠ランキングで上位を目指すのが是という思想側に傾いちゃっているという。

 で、「1億分の」がどういう作品かは分からないんですが、万が一最終的に「コンピュータが管理する全人類のランキングシステム」を否定して終わるお話だったのだとしたら、実はシュージンの本然はアンチランキングの方にあって、今話の王道でジャンプランキング1位を目指すオチは、サイコーに感化されているだけというネガティブ描写だった可能性もあると思います(そもそも、シュージンの作風は王道向きじゃないのに、それを曲げるのに同意してしまっている。つまり、「ランキングとか関係なく好きなこと」というシュージンの本然に反している)。

 というよりも、

 ランキング上位を志向するサイコー
   |
 間で揺れるシュージン
   |
 ランキングとか関係なく描きたいものを描く新妻エイジ

 という構図を既に何となく見て取っていたりです。

 さらに、この「ランキング是か非かでシュージンは迷うポジション」に設定されているんじゃないかと思わせるのに、既にシュージンは、一度このランキング是か非かで選択を迫られているのに、かなりあやふやな態度を取ってしまった場面があったというのがあります。

 (学業の)ランキング上位を志向する岩瀬さん
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 間で揺れるシュージン
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 (学業の)ランキングとか関係なく好きなことやって生きてる感じの見吉

 の場面でシュージンが選択を突きつけられていた場面です。

 この場面、今思い返すと、かなり象徴的なシーンだったような。この時はなんだか見吉を選んだことになった訳ですが、果たしてシュージンの本質って?となってくると、今後のサイコー側のランキング上位目指せ志向と、新妻エイジ的なそういうの気にせず本然に従って描く志向との間で揺れるんじゃないかと予想するシュージンの物語が俄然面白くなってくる感じです。

▼メモ
・服部さん初登場時の、ずーっと同じコンビでやっていくのは難しいけど二人には言わなかったという、シュージン・サイコー、一時仲違いフラグと取れるシーンも、シュージンとサイコーの対立の原因が生まれるとしたら、今回書いた辺りの要因で描かれるのかもな、とも思ったり。
・シュージン&サイコーの作中目標がアニメ化なのも、既存のランキング重視価値観に引っ張られている面があって、今の所明確に亜豆関係でアニメ化の目標が顕著なサイコーに、シュージンは引っ張られている側面がある感じもする。母数を取るアニメ化なんかしなくても自分の作風で自分に価値を感じてくれる読者向けに描くという価値観もアリなので、やはりシュージン・サイコーの人間関係の展開には何か用意されていそうな感じ。あと資本主義社会的にはアニメ化を達成した方がお金にはなるので、アニメ化=成功がまさに「既存の」価値観って感じなんですが、シュージンはもともと既存の価値観である「学業ランキング」から抜ける所から始まったキャラだったりするので、そんなシュージンが現在「この世は金と知恵」(=アニメ化して儲けたもん勝ちとも取れる)という作品を作ってるというのが、実はメタ的な皮肉描写なんじゃないかとも深読みしたり。

→前回:10ページ「不安と期待」の感想へ
→次回:17ページ「バトルと模写」の感想へ