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 思考の断片を箇条書きで綴っておきます。
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・神様的な天上の存在から一方方向で「正しいこと」を付与されて、一般の人間はそれをありがたく受け取るだけという構図から、人間一人一人が自分で考えて正しいこと、価値基準を決めるようになった……という歴史・思想史的変遷が、ものすごくざっくりとした「近代的自我の目覚め」の概略(ニーチェの「神は死んだ」など)、と、とりあえずしておきます。

・現在のコンテンツ業界の変遷は、特権的な「作家」がマスメディアの向こう側から一方方向で正しい「作品」を発信して、一般人はそれをありがたく受信するだけという構図から、一般人一人一人が自分で考えて発信者に回ったり、価値を感じる「作品」を能動的に選択して受信するようになったという点で、上記の「神は死んだ」までの流れに似ている側面がある(刺激的に言えば、「作家は死んだ」時代に突入してるとも言えそう)。

・きっかけはやはり、インターネットの双方向性と、それがメディアとして普及したこと。

・一般ユーザーが娯楽に使える時間は、人間等しく1日が24時間な以上、有限。今まではマスメディアの向こう側の特権的な「作家」から発信されるコンテンツにその有限の娯楽時間をあてていたけれど、現在は個人の同人誌、個人のブログ、SNSでの個人同士の交流などに娯楽時間を割く一般人が増えている(これらのケースはマスメディアが娯楽にほとんど介入していない)。ユーザーが娯楽に使える時間が有限な以上、そういうユーザーがマスメディア外に使う時間が増えた分、当然マスメディア側に割く時間は減り、マスメディア側の「特権性」は弱まっている(→「出版不況」「TVの視聴率低下」などの源泉)。

・図にすると、今までが、

<図1>
図1

 な感じだったのに対して、「現在」、「これから」は、

<図2>
図2

 になった(&さらになっていく)感じ。

・現在は双方向交流に圧倒的に優れたWEBの存在でダイレクトレスポンスマーケティングが個人でもある程度勉強すれば身につけられるようになったため、特にマスメディアの壁の向こう側にいかなくても、地上での活動で生活していける程度のコンテンツ発信者にはなれるようになってきた(専業同人作家、個人のイーブック販売者、など。同人というと二次創作のイメージがまだ強いですが、オリジナルでやっている人も増えた&これからも増えそう。漫画やアニメからは少し離れますが、WEBビジネスの世界では、「趣味起業」、「好きなこと起業」と、個人or小規模で、自分が情熱が持てるコンテンツorサービスを制作し、ダイレクトマーケティングで販売して生計を立てているフットワークが軽いビジネスを営む人が増えてきている&さらに増えそう。広義のコンテンツ業界も、今後こっちの方向へ進む流れになりそうな気がしています。)。

・そういう特権的な「作家」が死ぬかもしれないコンテンツ業界で、今後従来概念の「作家」が生き残っていくには(「作家」の定義自体が「揺らぎ」に入ってる時代ではありますが)、基本的に以下の3つのパターンのように思う。

・パターン1は、『魔法先生ネギま!』の作者であられる赤松健氏(先生)パターン。

・図にすると、

<図3>
図3

 な感じ。

・赤松さん(先生)自身は出版社経由(商業誌の「マガジン」で発表)と、マスメディアの向こう側からの発信をメインにしているものの、積極的にマスメディアの壁のこちら側(図では「地上」と表記)とも交流をはかっている。

・日記での「読者との共闘」というお話や、ブロガーとのオフ会を開催したりと、かなり積極的な印象。やはり双方向ツールであるWEBを最大限に活用しているようで、驚くことに全部では無いにしても、読者からのメールにも返事を出している様子が日記からは伺えます。また、二次創作同人活動に日記で言及することもあり、地上人の間での「発信−受信」のサイクルにも寛容なスタンスを持っているように感じます。

・マスメディアの壁のボーダーを積極的に超えたり戻ったりで行き来する赤松さん(先生)タイプの「作家」は、今後も生き残る確率が高そう。

・パターン2は、『ひぐらしのなく頃に』『うみねこのなく頃に』の作者であられる竜騎士07氏パターン。

・図にすると、

<図4>
図4

 みたいな感じ。

・基本的に竜騎士07氏自身はマスメディアの向こう側ではなく、地上側、一般人側で活動しているのがポイント(「ひぐらし」も「うみねこ」も、原作は「同人」扱いというスタンス)。

・自然、地上人同士で、竜騎士07氏本人と読者さんの交流も活発(ホームページを通した交流、実際にコミックマーケットに竜騎士07氏本人も参加、ひぐらしイベントに本人も参加、など)。あと、ひぐらし裏エンディングでの宣言など、事実上二次創作を認めている感じで、特権的な「作家」が一方的に「作品」を読者に授与するのではなく、読者それぞれの内側にある物語を「活性化」させるのが竜騎士07氏の立場かのような、従来型とは違う「作家」スタンスが垣間見える。

・一方で、ひぐらしのアニメ化、商業漫画化など、逆に地上側の活動が天上(マスメディアの壁の向こう側)に渡る形で、従来型とは逆方向のマスメディアとのつき合い方をしているのも特徴的。赤松氏(先生)のケースと同じく(図の通りいる位置がちょっと違うけれど)、積極的に地上と天上のボーダーを無効化する、こういうタイプの「作家」も生き残りそう。

・最後、パターン3は、生き残ったビッグコンテンツがマスメディアの壁の向こう側である程度の特権性を維持するケース。

・図にすると、

図5

 みたいな感じ。

・いや、プリキュアとガンダムが本当に残るのかは時代に任せるしかないので(笑)あくまで「仮」の例ですが、上述のような時代の変遷で、マスメディア側の「特権性」が今後さらに減衰していくと予測しておりますが、そんな中で、少数の生き残りが洗練化された上である程度の「特権性」、天上性を維持しながら残るというのはあると思います。

・マーケット全体の法則として自動車業界を例によくビジネスの世界では語られますが、自動車会社も、一時は100とかあったのが、時代の変遷と共に、淘汰&統合を繰り返し、結局洗練化された数社のみが残った。漫画、アニメなどの業界も、天上側は今後こういう流れを体験すると予測します。

・現在は自動車会社が100社とかあった頃の段階で、マスメディア側に存在しているコンテンツが、沢山存在している状態(アニメバブル、漫画新雑誌創刊バブルなど)。残念なような嬉しいような話ですが、やがてより少数に絞られていくという流れは避けられない気がします。

・個人的には、上述のマスメディアの「特権性」の減衰、地上の活動の活発化への流れは押しとどめられないとは思いますが、かといって小さくてフットワークが軽い、地上の創作活動・コンテンツビジネス活動だけになっては寂しいので、生き残ったマスメディア側のビッグコンテンツには頑張って欲しいですし、深い敬意を感じます。嗜好や価値観が細分化し過ぎたこれからの時代では滅多に得られなくなってくる、「同時代人としての共有体験」を作りだしてくれるのが、こういった生き残ったビッグコンテンツだからです。

・そういった生き残ったビッグコンテンツによる「同時代人としての共有体験」を元に、地上人がブログで語り合ったり、同人誌作ったりというのは、引き続き続いていって欲しい一種の「文化」と個人的には考えています。

・逆に言うと、上記3パターンに当てはまらない「作家」は、これからの時代厳しそうです。具体的には、自分は特権的な「作家」なんだからと固執して、地上との交流をおろそかにするマスメディアの権威性を過信し過ぎてしまう作家とか。マスメディア側のビッグコンテンツが洗練化、少数化していく流れの中で、削られていく側に当てはまる現在はマスメディア位置にいるけれど、パワー不足のコンテンツ創作&提供の会社とか。
(そういう部分に当てはまってしまうコンテンツ業界者は、どう舵を切っていくか(上記3パターンのどれを目指すのか)、あるいは、地上でのスモールビジネスに移行するのか←結構楽しいです(^^;、少し考えてみる時期なのかもしれません。)

・まああくまで予測なんで、外れても責任とかはもちませんが(^^;
(例えば、国家規模とかで大規模なインターネット規制とかが行われたりしたら、今回の予測はまったく意味をなさなくなったりなので。)

・活版印刷機登場の時もそうですが、やはり新しいメディアの登場時は、色々なものが変遷するようです。

<参考>
春夢の洞:神も作家も先生も死んだかもしれない