訴求力のかけらもない記事タイトルですが、期待にたがわず普通の日記です。
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 井上陽水の初期の有名な曲に、「傘がない」というのがあります。


テレビでは我が国の将来の問題を
誰かが深刻な顔をしてしゃべってる
だけど問題は今日の雨 傘がない


 井上陽水「傘がない」より


 傘くらい買えよと僕はこの曲を最初聴いた時思ったのですが、よく分からない。この人にも何か傘がゲットできない深刻な事情があったのかもしれない。他人の事情はそれぞれだし、とりあえず今日は歌詞の解釈論的話ではないので、話を先に進めるのですが、井上陽水クラスの大問題として僕が最近ブチあたったのが、「靴がない」ということでした。

 これは僕の靴ではなく、母親の靴です。

 知ってる方は知っての通り、うちの母親は半身が不自由な車椅子生活なのですが、最初は一歩、二歩、何年かかけて数歩、今では数十歩と、リハビリの結果、補助付きなら一日に少しの間だけ歩けるように現在はなっているのです。リハビリの結果歩けるようになってきたとも言えるし、がんばって歩いてみるのが終わりのないリハビリだとも言えます。

 そこで今回出て来たのが、靴問題。母親がリハビリ時に履いていた靴がいい加減ボロボロになってきたというので何回か新しい靴を買ったのですが、どうにも上手くいかない。微妙なさじ加減で、新しく買った靴では、足が曲がってしまって歩くことが出来ない。歩行リハビリが可能なのは、もう5年以上前に買ったボロボロの靴を履いている時のみ。最後の望みとしてゴム上靴(学校の上靴みたいなの)を買って本日リハビリに行って貰ったのですが、結局足が曲がってしまって一歩も歩けなかったとのこと。

 リハビリ先のデイサービスの担当の方からは「医師と相談してください」とメモが入っていたけれど、医師に相談すれば、経験上「装具」を足につけましょうと言う話になるのは予想ができる部分(今までも何回かこの話はあった)。装具は料金的にも高いし、やはり仰々しい装具をつけて歩くのは母親も好ましいとは思わないし、かなり精神的なストレスにもなる。

 この段階で母親と父親はがっかり感100%で、いよいよ歩くリハビリもできなくなって一生車椅子か、その先は寝たきりかといったお話に。何ということか。「傘がない」のは、基本的に買えばOKでどうしても特定の傘が必要になるケースというのはあんまりない気がするのだけど(や、井上陽水の歌のケースもやっぱり何かあったのかもだけど!)、今回の我が家の「靴がない」のケースでは、ある特定の靴(今まで履いていたそれだと歩行リハビリが可能な靴)がないばかりに、このまま深刻な介護問題に突入してしまうのであった。

 5年以上前のどこで買ったかも分からない靴なので、どこのお店に行けばいいのかも分からない。そもそも今でも流通しているのかも不明。さらには在宅介護生活者というのはなかなか実店舗に足を運ぶという時間も作れない。父親が「俺が作ってみる」とか訳が分からないことを言い出したので、僕は言ってやりました、「検索してみる」と。

 そう、僕らにはインターネットがあるじゃない!

 しかし、これまでも何回か何気なくネットでも探していたのだけど、見つかるまでは至らなかった。しかし、今回はケースもケースで事情が深刻です。靴が見つからないだけで、5年以上のリハビリの努力が無に帰するというのは許せない。ついに、僕も本気を出す時がきた。

 とりあえず、「検索をはじめよう」と仮面ライダーWのフィリップ君のポーズを取ってみて、「靴」とGoogle先生に打ち込んでみる。フィリップくんっぽい服装に着替えてコスチュームプレイ感を出しつつ気分を乗せたい所だったのですが、今回は時間的にもせっぱ詰まってるので(来週のデイサービスまでに解決しないと「装具」ルートへ)そこまでのこだわりは持ち込まないことに。

 しかし案の定「靴」だけでは全然分からない。「キーワード追加、『CHOKOTTO COLLECTION』」とか(頭の中で)言いながら、靴のマークに付いてた会社名ともブランド名ともシリーズ名とも分からないキーワードを足してみるも、一件もズバリとはヒットせず。

 海外の会社の可能性もあるかもと、WEB全体で検索するもダメ。Amazon検索でも出てこない、楽天検索でも出てこない。やばい、仮面ライダーWのフィリップって、検索ワードが分からなければ全然役に立たないんじゃ……。

 しかし、ここで諦めるのは、ネイティブデジタリアンな若い世代である(いや偏見だけど!)。こちらは、Amazonがまだなかった頃に、一冊の学術書を探して神保町を歩き回った世代である。そう、僕らにはまだ、「しらみつぶし」という手段が残っているのだ!

 そういう訳で、靴ってそもそも特定のブランド名とかは有名ブランドでもない限りネット上にはキーワードとして記載されてないと悟った僕は、ネット上の靴屋をしらみつぶしに回り、PCの横に母親の例の靴を置いて、ネット靴屋の靴の画像一覧と逐一照合するという行動にでることに。

 そんな行動に出ること15分(意外と早かった!)、見つけた! わりと大きいネット靴屋さんの、レディース>スニーカーのカテゴリの中に、探していた特定の母親の靴と、色違いだけどどう照合してもこれだというものを発見。『CHOKOTTO COLLECTION』なんてキーワード微塵も販売ページに記載されていない。僕は分かってはいたけど改めて悟った。キーワードマーケティングは万能ではない。

 中国製で819円! 安かった。母親のリハビリが続けられると思えば10万円でも高くない買い物だけど(装具の値段と比べてもいい)、ネット靴屋の片隅に堂々と置いてあった! 中国製、悪くも言われるけれど、5年以上履いて、今でもこうして我が家のような深刻なニーズを生むほどに(母親にとっては)履きやすい製品を作っているとは、あなどれないな! 製造から流通、マネージメント諸々に携わった靴関係の人達に感謝したい気分でありました。

 さっそく、色違いだけどカラーバリエーションが3種類あったので、画像をノートPCで母親に見せて選んで貰った。父親も母親も何故に見つかったのか分からない、奇跡を目撃したかのような勢いだったので、とりあえず言ってみた、「俺はインターネットの魔術師だからな!」。うむ、この台詞はカッコよくないが、やったこと自体はカッコよかった気がする。真面目な話、デジタルディバイドはやっぱり今の時代大きいな。

 そんな感じで母上様に新しい靴をプレゼントしたというお話でした。一週間くらいで届きますと表示されたので、おそらく来週のリハビリまでには間に合うのではないかと思います。危なかった。井上陽水の歌の通り、テレビ上の国の将来の話よりも、「靴がない」のが深刻な問題な小一時間だった。

 しかし、実は僕は最終手段として、靴を撮影した上で、Twitterとかもろもろ3000人と連絡が取れる全自分メディアで聞いてみるという切り札を残してもいた。『幽遊白書』の蔵馬的には切り札を使う時はその次の切り札を準備しないといけないので、切り札を使う前に見つかって良かった。それくらい、「靴がない」だけだったのだけど、我が家にとっては深刻な問題だったのでした。

 最終手段。僕は今回は使わなかったけれど、僕に関して言えば、Twitter上などで捜し物とか聞いてくれて全然OKです。持ちつ持たれつでも等価交換でも困ったときはお互い様でも何でもいいですが、タイミングが合って可能な限りは僕も協力させて頂きます(^_^;

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