『偽物語(公式サイト)』第一話を視聴してみました。センスが最前線だと思いました。
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 西尾維新作品にはそんなに触れてる方ではないのですが(小説いくつかと、『めだかボックス』『化物語』くらい)、普通にエンタメを追及してる作家さんなのかと思っています。だいぶ前の雑誌「ファウスト」か何かに載っていたインタビューにも、確か「ネギま!」とか見て、だいぶエンタメよりに調整したみたいな話が載っていたと記憶しています。

 そういう印象もあって、最初から何か(文芸的にとかそういう方向で)崇高なものを提示したいとかよりは普通にエンタメしてるな感を感じました。特に大きいドラマがまだ起こってる訳じゃないんだけど、キャラクターが会話してるだけで楽しいというエンタメ。それも戦略に入ってるのでしょうが(西尾維新フェアとかやってるし)、もっと生の言語感覚を味わいたくて、小説の方を読みたくなる言語的快感を多分に含んだエンタメです。書くペースが早いのでたぶん全部を追えるということはないのですが(『グイン・サーガ』を全部読むことは一生のうちたぶんないんだろうな的感覚)、時々読んで同じ時代に凄い作家さんがいたのは確認したい書き手さん。僕の場合、たいていアニメタイムリー放映とかは終わってから、自分のタイミングで読むことになるんですが。

 タイムリー性で盛り上がれるアニメはアニメで楽しみたい。これ、コミケとかで撫子本たくさん出るだろ、とかそういう感覚は共時的に共有していたい。

「偽物語」かれんビー(上)【完全生産限定版】 [Blu-ray]
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 昨日は仙台は「どんと祭」でした。お正月の飾り物などを、神社などに集まってみんなで火で燃やすというお祭り(ざっくりした説明ですが)。塾講師の行き帰りにちょっとでしたが、玉飾りを燃やしつつ軽く参加できて良かった。寒い中火にあたると、無駄にテンション上がるよ!

 関東圏から帰ってきて間もなく介護生活に入ったので、地域共同体のイベントとは疎遠な感がありましたが、徐々にその辺りも変えていきたい。もっと昔は、地域のお祭りで偶然知り合いに会う! とかもっとたくさんあったんだよな……。

 最近いくつかコツコツ進めてることの中の一つに、防災やら教育やらのミニ拠点も兼ねた、昔の教会やら寺やらのポジションの小さい「場」を作りたいというものがあります(それのWEB時代対応版)。既に仙台市で出してるハザードマップとかチェックしつつ、この辺りの場所でこれくらいの大きさでとか、イメージはあるんですが、あとは金か……(遠い目をしながら)。まあ、これはまだ夢のたぐいで。お年寄り一人の介護にあっぷあっぷ言ってる現状からすると、ガンダーラ並みに遠い夢ですが。最近はどうしても100年先の東北のこととかも考えてしまいます。

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 色々と方向性も定まってきつつある過程で手元に置いておきたい本というのはいくつかありますが、その中の一つに『マリア様がみてる』の一連の志摩子さんの話……というのがあります。メインの祐巳の話からするとサイドストーリー的ではあるんですが、個人的に凄い胸の奥に食い込んでいるストーリー。

 キリスト教徒の母と仏教徒の父の間に生まれた上で、自身はキリスト教を信仰して女学院に通いながら、家はお寺という境遇に悩む志摩子さん(しかもお父さんとお母さんの代の話は少し悲劇的に終わっている)。だけど、いつの間にか仏像鑑賞が趣味だという少女(同性)に惹かれていく……というお話(繰り返しになるけど志摩子さん自身はキリスト教)。

 このストーリーラインに先代から続く「白薔薇」ストーリーのエッセンス(聖さまと栞さんの話など)なんかも絡まってきてすごいライトノベルと言うよりは文芸的な話が展開されていくのですが、驚くのは『マリみて』完結後に個人的にキリスト教の本も仏教の本もある程度読んだのですが、そうやってこっちの知識が増えても、志摩子さんストーリーは陳腐化しないこと。執筆当時の今野緒雪先生にものすごい(学者クラスとか、そういう意味で)キリスト教や仏教の知識があったとも思えないんですが、それでも珠玉の筆致にまとめてるのは(志摩子さんストーリーは比較的短くまとまってるのもイイ)、やっぱり緒雪先生すごいな、と思うのでした(尊敬していて、一時は真面目に文体の研究とかしてみたりしていました。主観の文といわゆる神視点の文が、さらっと交差して独特の文章世界への導入効果を生み出しているというのが個人的な感想。)。

 祐巳も由乃もイイけど、何となく人生の進展上、一番しばしば思い出すのは志摩子さんのストーリーな気がするぜ……。サイン会で緒雪先生本人に好きなキャラは志摩子さんです!って言ったこともあるしな!

マリア様がみてる チェリーブロッサム (マリア様がみてるシリーズ) (コバルト文庫)
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