ヤマノススメ(1) (アース・スターコミックス)
ヤマノススメ(1) (アース・スターコミックス) [コミック]

 しろ『ヤマノススメ』コミックス第1巻の感想です。
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 幼い頃二人で見た山頂からの朝日、という児童時間の共有体験が、高校生の大人になった現在の私達にリンクをもたらしていく、というような作劇。この子供の頃見た山頂からの景色、という要素が、思いのほか僕個人でも思い当たるフシが多々あって、郷愁感なんかも刺激されてしまう漫画でありました。そう言えば小中学校の頃は遠足とか課外活動とか何かのきっかけで山に登っていたし、友達と朝日を見るために登ったことなんかもあったなーと。で、大人になるにつれてそういう時間的余裕とか、自然・景観への原初的感動とか忘れがちで、だからこそ漫画でも響くと。日本、山多いので、児童時間の体験に山体験がある人の母数は多そう。

 高校生になるまでにすっかり人見知りのインドア少女になっていた主人公が、登山をきっかけに気持ち的にも人間関係的にも外の世界に開け始めていくという流れも気持ち良い感じ。外の世界と繋がっていくきっかけは趣味、というのはリアルに感じられる昨今です。そっちの機微が中心なので、山登りが題材でも、言うなれば『バクマン。』的上昇志向とは異相を異にしている感じ。エベレストを制覇してやるという上昇志向、マッチョ志向が題材なのではなく、山を通した人との出会いとか、ある対象に没入することの謎のエネルギー、ワクワク感とかを切り取っていくのが題材な感じ。だから高い山に登るのが目的ではなく、最初は関東圏の登りやすい低い山、むしろもう観光地化されてる山からはじめていく。それはそれで、発見とか出会いとか面白さとかある、と、そういうのを眺めてるのが心地よい漫画でした。

 改めて趣味パワーは自分も持ちたいとも刺激される内容だったりも。今作の山にあたるような対象は自分にとっては何だろうなと。ハマると面白く、求道しようとすれば専門知識とかの射程が広く深く、一方で快感が一般的にわりと理解されるという点では語学とかが自分のそれにあたるやも。今作で求道的な登山用リュックの知識を紹介するように、求道的な文法書とか紹介できるキャラでいたいというのは、わりとそうありたいと思える人間像だったりです。

ヤマノススメ: 1 (アース・スターコミックス)
ヤマノススメ: 1 (アース・スターコミックス) [Kindle版]

ヤマノススメ [Blu-ray]
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