黒子のバスケ 1 (ジャンプコミックス)
黒子のバスケ 1 (ジャンプコミックス) [コミック]

 最近の連載分は雑誌週刊少年ジャンプでタイムリーに追ってますが、一時追えてなかった箇所があったのでコミックスで一気読み。

 藤巻忠俊『黒子のバスケ』第1巻〜第16巻(ウィンターカップ桐皇戦決着まで)の感想です。
 ネタバレで書いているので注意です。
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 破綻してしまった過去の最強の共同体の、新しいカタチでの再生の物語です。

 過去の最強の共同体というのは、もちろん帝光学園の一時期の「キセキの世代」という共同体。競争の世界での最高、日本一連覇という栄光の代償に、赤司、青峰、緑間、紫原、黄瀬、黒子、という共同体は破綻して、物語冒頭の「現在」に至る、という所から始まる物語です。ちょうど現在雑誌連載分では過去編である「帝光編」をやっていますが、基本、過去と現在の二重構造で構成されている作品かと思います。


過去:日本一の代わりに破綻してしまった帝光学園の「キセキの世代」という共同体

現在:破綻した過去を乗り越え、再生するために黒子と火神の「信頼」を軸にそえた「誠凛高校バスケ部」という共同体


 両方を重ねながら、行ったり来たりしながら物語が進んでいく。バスケシーンで「パスを繋ぐ」という役を演じる黒子が、劇中の中心の物語で、破綻してしまった「キセキの世代」を、現在軸で「パスを繋ぐ」という風な役回りにしてるのも上手い。黄瀬、緑間、青峰らが、最後は自分しか信じなくなって繋がりが破綻した過去から、現在軸の黒子&火神と戦うのをきっかけに、また少しずつ変わっていく。


「またいつかバスケやろーね! みんなで!」
「…はい」(コミックス第9巻より)



 劇中に「過去の最高の共同体」の再生を願ってる登場人物は主に二人いて、黒子と桃井さん。

 桃井さんはイイな。上記の二重構造のうち、「過去」の方のヒロインは桃井さんで決まりだと思う。チームは日本一になった。巨乳になった。能力も上がった。競争世界の現在でとても恵まれてるように見えるのに、あの「みんなで楽しくバスケをやっていた過去」だけが壊れてしまっている。それだけがとても悲しい。それを黒子と共有している。

 そういう仕込みがあったので、ウィンターカップの桐皇戦ラスト、ついに現れた「互角に戦える他人」たる火神を前に、「青峰君が昔のように笑ってるのに桃井さんが気づく」というシーンはボロ泣きでありましたよ。これも含めて、一度の敗戦からかなりの巻数を経ての再戦の決着戦のこともあり、ウィンターカップのVS桐皇戦は熱い。

 上記の二重構造、


過去:自分だけを信じて独力を押し進めた結果日本一にはなるけど共同体は破綻

現在:仲間を信頼した上で日本一を目指す


 に対応するように、劇中のバスケシーンの要所要所に、「決定的な場面で、自分で行くか? 仲間を頼るか?」という選択肢がけっこうな頻度で描かれます。

 自分で行って敗北したのが描かれるのもあれば、逆に仲間を信じて敗北したのが描かれるのも、今の所両方劇中にはあるので、まだどっちか二択という意味では作中でも結論が出ていない感じなんですが、そういう意味で、ウィンターカップVS桐皇戦ラストの、「黒子は青峰と火神の両方を信頼していた」が勝因になる展開は熱い。少年漫画的仲間パワーよりの火神を信頼するのは自然だと思うんですが、黒子は現在は独力唯我独尊側にふれてしまっている、青峰をも信頼していたのですよ!

 そういう意味で、上記二重構造、過去と現在が「信頼」でリンクする結末を描いており、ウィンターカップVS桐皇戦はこれで最終回でも何の異論もない勢いだったのでした。破綻してしまった過去、あの時シカトして合わせてくれなかった拳を、黒子と青峰は合わせる、あの時壊れてしまったけれど、何か新しい形での再生が始まっている、という感じのラストシーンなんですよ。何これ、萌ゆる。

 そういうわけでウィンターカップVS桐皇戦で僕は物語としてはもう満足したのですが、まあ、まだ赤司君がいるからな……。赤司君、初登場時の台詞が「すべてに勝つ僕は、すべて正しい」ですよ(要するに、独力による勝利至上主義を押し進めて破綻した過去の、最右翼みたいな台詞)。最近の連載分の過去赤司君を見てると、どうしてこうなった感が満載ですが、そう、上記「破綻した過去」で一番こじらせてるのは赤司君なんですよ。

 そして、これまでの黄瀬、緑間、青峰でも描かれている通り、黒子は道を別ち、「キセキの世代」と戦う道を選んだけれど、彼らのことを信頼してない訳じゃないのです。むしろ、今でもめっちゃ信頼して大切に想っている。だからこそ、少し妄想想像も入るけれど、恩人である赤司君を何とかしたい、彼とこそ、破綻した過去を乗り越えて新しい何かを再生していきたい、それが黒子の動機の一つなんじゃないかな。

 そんな感じでめちゃめちゃ面白かった。あとは紫原君戦の前半さえ補完すれば、「『黒子のバスケ』? 全部読んでるけど?」と言える状態なので、今後はノリノリでタイムリー連載分を追っていきたい。「約束された悲劇」に向かってる感じの現在連載分の「帝光編」もすごい好き。

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