『仮面ライダー鎧武(公式サイト)』第1話「変身!空からオレンジ」の感想です。

 ネタバレ注意です。
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 「世界を己の色に染める」という自己の世界への波及願望みたいなのと、禁断の果実モチーフ的に主人公が謎の園で果実を「食べたい」と思ってしまった欲求とを重ねて描いていたのかな、と思いました。事前インタビューで、「フルーツ」と「錠前」は文芸要素的にストーリーに絡むけど、武将要素は形式でそこまで絡まないみたいなことを脚本の虚淵玄氏が語っておられたと思うのですが、「信長とかの戦国武将=世界を己の色に染めたい自己波及願望が強かった人」のように考えると、ある程度文芸要素として本筋に絡んでいるようにも解釈できるのかな、と。

 そういう願望の正義性の有無、みたいな話もある物語なのかなと。公式サイトに主人公の葛葉鉱太は「「戦う理由」を自ら問い続ける」とありますしね。「世界を己の色に染める」みたいな自己波及願望は、世界や他人と関わる願望でもあると思う。まずは大人として仕事して自分のことをしっかりやる。それは大事だけど、同時にそれでいっぱいいっぱいで他人を助けたりできないことに不満があるシーンが描かれます。だから「変身」したいと。大人として我を抑制して働くことが大事なように思う一方、「世界を己の色に染める」的、禁断の果実を食べる的欲求も、必要なもののようにも思われ。そしてもちろん逆に、かといって自己波及願望が強い強者、勝ち抜いた戦国武将みたいになることが正義の味方なのか、ヒーローなのか? と言われると、それも違う気もする。本当、2011年以降の正義のヒーロー像は難しい。


 チームを抜け自分と姉のためにミニマムに身の回りのことをやる俺→他人を助けたり、自己波及願望かもしれないけれど世界に向かって訴えかけていく俺


 この移動が「変身」に象徴されていたと思うのですが、印象的に「境界」を演出する要素がちらほらと。オープニングの「金網」、インベスが出入りしたり主人公と舞が不思議の園に入ったり、オレンジが出てきたりした「ファスナー(のようなもの)」、そして、それを開け閉めする「錠前」などですか。

 変身シーンが、主人公「金網」を超える→「錠前」を開く(異界、新たな自分への扉を開いた、的な?)→「ファスナー」の向こうからオレンジ(果実)が降りてきて「変身」。なのは、何重にも象徴性があった感じで面白かったです。

 そして、そういう一つの「境界」を超えちゃう決断を迫られてる場面なんだよ、みたいなことを、ファンタジーモードの舞(仮)に言われる、と。踏み出したら、戦国武将のごとく勝ち抜くまで、「世界を己の色に染める」まで戦うことになるよ、みたいなニュアンス。で、結局「変身」しちゃう(境界を一歩踏み出してしまう)までだった第1話、という印象でした。

 事前インタビューで平成仮面ライダー初期の雰囲気に回帰したいというような話があったように、日常のすぐ裏に異界がある感じ、ヒロインが急にファンタジー存在みたいになったりな感じは『龍騎』っぽいし、殺伐とカオスな雰囲気は『555(ファイズ)』っぽいなと思ったりしました。つまり、非常に僕好みだったということです!(『龍騎』と『555』超好きな人)

 公式サイトみると、仮面ライダー斬月に変身する中の人がたいへんカッコよく、その辺りも楽しみ(笑)。個人的に『龍騎』とか『555』にハマってた頃の自分から何かしら糧を抽出したいと思ってた時期なので、ハマれるといい感じなのです。



仮面ライダー555(ファイズ) Blu-ray BOX1
半田健人
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
2014-01-10


→前回:仮面ライダーウィザード第52話「終わらない物語」の感想へ
→次回:仮面ライダー鎧武第2話「必殺!パインキック!」の感想へ
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