本日発売の、赤松健先生の『UQ HOLDER!』(ユーキューホルダー)、コミックス第2巻の感想です。

 収録話数に関して、「週刊少年マガジン」の雑誌連載時にタイムリーに書いていた感想の再掲載をしつつ、最後に少し追記です。単行本派の方はこの記事から読んで頂けたらと思います。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

Stage.7「UQホルダー」

 深読みしてるとも思いつつ、やっぱりメタフィクショナルな要素をかなり意図して取り込んでると感じる今作『UQ HOLDER!』。UQホルダーのアジトが温泉旅館を模しているのも、『ラブひな』をメタに意識させられるようにしてるんじゃないかと。見通せる、行ける範囲に「競争」とか「進歩」の象徴である塔(軌道エレベータ)、そこから少し離れた所に、のちに「(最終回近くの山手線のシーンに象徴されるように)永遠のループ」と語られる『ラブひな』的温泉旅館に模したアジト。ドキドキする絵です。

 最初のイベントが「温泉旅館(ひなた荘/仙境館)の住人に認められること」というのも『ラブひな』と『UQ HOLDER!』で重ねられてると思うのですよ。だけど、やっぱり『ラブひな』と最新作『UQ HOLDER!』では違う要素がある……っていう風な表現なんじゃなかろうかと。

 全体的に楽園状態だった『ラブひな』に対して、『UQ HOLDER!』の方はハード。オーナー的な要素で重なりつつはるかさんより真壁源五郎の方が一癖ありそうな感じだし、当初は懐かない日本刀女子で重ねてみても、素子よりも夏凛の方が厳しそう。

 夏凛は雪姫を除いて初めて出てきた同年代(に見える)悠久の異性ですが、この作品恋愛要素はどうなるのだろう。赤松健先生自体がかなりファンタジーの文脈も継いでいてこの作品も「近未来ファンタジー」がコピーな訳ですが、悠久存在と普通の存在との恋愛は、わりとファンタジーの王道要素(たぶん源流はJ.R.R.トールキンの『指輪物語』のアルウェンとアラゴルン。『ロードス島戦記』のパーンとディードリットも有名だけど、ロードスは世界観は『指輪物語』の影響がある)で、だから第2話に忍と刀太の話を描いてると思うのですが、夏凛を想定した場合、悠久同士の恋愛っていうのは何なんだろう。悠久の共同体とは何か(どうあり得るのか)という話と合わせて、悠久のパートナーとは何なんだろうという話も面白い。


 以下、個人的な、「『ラブひな』と『UQ HOLDER!』で重ねられて描かれていると思われつつ、少しだけ違う要素」を気付いた範囲でメモ。


・しのぶ(忍)と出会い、彼女(彼?)は自分に自信が持てない存在である。ただ、『UQ HOLDER!』の忍の方は当初からどデカい夢を抱いている。

・神鳴流が健在。だけど、『UQ HOLDER!』では物語冒頭時点で主人公にいなされるくらいの位置づけになっている。

・神鳴流剣士の裸をどっきり! 要素が共通。でも、『UQ HOLDER!』では神鳴流剣士が男。

・活動拠点が温泉旅館なのが共通。でも『ラブひな』の終わらないハーレム的楽園とは違い、『UQ HOLDER!』の方の近くには「競争」や「進歩」の象徴の塔(軌道エレベータ)が建っている。


 などなど。


Stage.8「リーダーの力」

 UQホルダーのアジト仙境館が温泉旅館を模しているということで、何かと『ラブひな』と『UQ HOLDER!』でメタフィクショナルに重なる所と違う所が意識させられるようにしているのではという話を書いている最近。

 今回の温泉旅館の地下での冒険というのも、『ラブひな』的終わらない悠久、に関する批評性の話な気がするのですね。8年にしろ30年にしろ、長く時間がかかるよ、温泉旅館の地下にずっといていいよ、という方に何もしないと行ってしまう。だけど刀太は一週間で出るよ、と宣言するお話。メタな例を出せば、終わらない悠久のループ的『ラブひな』、13巻分とどまらないよ、数話で終わらせて「次」の物語に進むよ、みたいな象徴展開というか。

 で、どうして刀太が「終わらない悠久」に無条件では浸らない、何らかの有限性を胸に進むよって言えるかって言ったら、設定面でUQホルダーにも弱点がある話が出てきてる点などもあるけれど、一番は「仲間の存在」だよ、と描かれていたと思うのですね。例えば悠久の楽園にいていいよ、と言われる。ある課題に関して、もの凄く長い時間かけていいよ、と言われる。それでも、そこであえて頑張ってスピード上げて先に進む意志がどこから生まれるか。田舎の仲間が歳をとっちゃって、その中に自分が同格の存在としていられないのが嫌だからなんですよね。だから、動機は「他者」だ、という描き方をしてると思うのです。『ラブひな』の受験要素と今回のダンジョンクリア要素を無理くり重ねても象徴的にはいけそう。例えば何浪してもイイ、という、受験における何かしらの悠久的特権を得てしまったとする(そういう意味で刀太が少し悠久能力に油断してしまってるフシが描かれる今話は少し危うかったんですね。)。でも、そこでいや、俺は現役で受かってやるよって言える動機は何か? そういうのを描いていると思う。で、安定した人生を過ごしたいからとかじゃなくて、動機は「仲間」だ、と。しかも同じ側の存在であるUQホルダー同士の仲間だけでなく、外部の、自分とは違う立場の存在の他者たちとのリンクとしての「仲間」だ、と。

 主人公たちの能力の悠久性に、ある種のネガティブさが批評的にともなっているのは、力としてはネガティブさがあってもそれを正しく使ってヒーローになっていく的な方向で、「仮面ライダー」方面のカッコ良さ、ヒーロー求道っぽさがあって好き。

 「悠久を得てしまっても埋没しないで頑張れる意義」っていう話はなんかカッコよくてイイな。


Stage.9「修行開始」

 『UQ HOLDER!』を読んでる視点の一つである「悠久VS最新」という構図。例えば前者が作中ではエヴァの本物の魔法で、後者が魔法アプリ。あるいはメタフィクション的には、前者が旧作にして悠久の楽園を扱っていた『ラブひな』で後者がこの最新作『UQ HOLDER!』などと考えながら読んでいたわけですが。

 今回はターンとしては「悠久」側押しだったと思うのですね。1400年の積み重ねがある宍戸甚兵衛はやはり強いし、最後には長い時間存在していた重力剣、なんてものも出てくる。そして、物語序盤では最新の思想の前では刀太はそんなに興味を示してなかった瞬動術(長い時間受け継がれて研鑚されてきた技術)を、結局刀太は使ってみる、と。

 重力剣が抜ける展開になるのかどうか分かりませんが、『ネギま!』でやっていた相反するものをハイブリッドで飲み込んで進んでいく(ネギの属性の「闇」という言葉で描かれていたもの)赤松先生の作風的に、刀太の象徴的能力は「悠久」と「最新」のハイブリッドになりそうな予感はちょっとするのでした。

 そして、魔法アプリだ、軌道エレベータだ、と「最新」の凄さが描かれてきた中で、今話の「悠久」押しのターンもまた嬉しい。劇外に目を向ければ、赤松先生の「Jコミ」の活動とかは、旧作の力を現在の力に変換する活動なわけで、多分に長い時間積み重なってきたものの力を尊重してる活動でもあるわけで。

 そのままの勢いで、メタフィクション的に、『ラブひな』よりさらに遡って歴史的な漫画文化の力の「悠久」化と、そこから「最新」へみたいな話になっていったら熱いですね。


Stage.10「重力剣」

 「2年間」という時間にそれぞれの解釈が加えられる。雪姫から見た宍戸甚兵衛を突き落として放置していた2年間は軽く(ジンベエ本人も軽く感じてるように思う)、夏凛から見た雪姫が刀太と二人で暮らしていた2年間は重い。たかが二年になるのか、されど二年になるのか。修業期間が悠久にも出来得るという点について『ラブひな』も絡めて浪人時間が永遠でもいいか、一時で終わらせるかの対照だという話を書いたけど、そういう視点もあって面白い。漫然と過ぎていく二年と運命の二年になる分岐は何なのかとか、そういう話。

 非常に物語論的に作られている作品だとも感じるので、例えば刀太と夏凛が人類が滅亡した時に残る最後の2人かもしれないというような話は、『旧劇場版エヴァンゲリオン』だよな(解釈の評論などは多々あるけど、やはり最後がシンジとアスカだけで閉じている)。

 その閉じたセカイは乗り越えようと進めてきたのが2000年代の物語なわけで。

 それでも、『魔法先生ネギま!』では閉じたセカイを抜ける物語が描かれたけれど(「完全世界」を抜けるあたりね)、「白き翼 ALA ALBA」という共同体は崩壊した所から『UQ HOLDER!』は始まっている。推測される通り何名かは本作の時間軸で生き残ってるとしても、バラバラになって、忘れ去られていく時間は訪れた。

 で、前も書いたけど「UQホルダー」は「その次」の共同体の話だと思うのですね。地下に閉じ込められた状態ながら、刀太がしきりと村のダチ4人のことを語るのが印象的。物理的に隔たれているし、今では生きる時間も違ってしまった友人たちなんだけど、彼らも含めた「次」の共同体のようなものを求道していくと。

 フライングの解釈かもしれないけれど、運命の二人要素が匂わされたり、「愛が重い」と語られる夏凛は90年代的要素なのかもしれない。90年代セカイ系も、ゼロ年代も、その次も、全部連れて行くよみたいなコンセプトなのだとしたら面白い。


Stage.11「魔獣退治」

 共同体「UQホルダー」は"人の世外れた者達"の互助組織。夏凛の前にやってきた三人の女の子たちが疑似『ネギま!』における刹那で、刹那のように人間と物の怪的存在との境界線上で困ってる者々がこの世界にもまだいるということなのですね。

 で、『ネギま!』の物語において刹那の精神的な救済を担うのは明日菜とエヴァと木乃香の役割が大きいのですが、刀太は木乃香との縁が匂わされている近衛姓ということで、繋がってる感が良いですね。時間を超えている感。第1話冒頭のシーンより、悠久の時間の流れの中で木乃香も刹那も今はもういないのだけど、エヴァはUQホルダーを作り、近衛姓の刀太は何やら木乃香めいたポジション(人間と物の怪的存在の互助)の場に辿り着いた点で、『ネギま!』時の物語は生きている、と。

 軌道エレベータや太陽系オリンピックに象徴される上昇志向、進歩主義が底の方に漂ってる作中で、「互助」の言葉が出てきたのも重要な感じ。頂点を目指せるトップや強者はまずは良いし、その意志自体を否定しない作品(刀太の意識は軌道エレベータの上を目指すなので)。それはそれとして、あぶれた者達の互助も、世界には必要だ。

 なんかもう、売上ランキングトップ圏に入るような漫画は凄いし、そこを目指す意志も尊い、でも世界にはJコミも必要だ、みたいなね。さっそく「同人マーク」に便乗(というかたぶん応援)したのか直球で『UQ HOLDER!』パロってる久米田先生の新連載『せっかち伯爵と時間どろぼう』第2話がこの話と同時にマガジンに掲載されていたりね。良い感じ。トップを走りつつ互助を忘れない精神というのはカッコいい。

 というか、悠久の生が主軸の赤松先生の新連載に、1年限定の生が主軸の久米田先生の新連載。何このコンセプチュアルに補い合ってる感(今話の久米田先生のも軌道エレベータ=上昇志向一辺倒への風刺になってるととれる)。


Stage.12「初任務」

 軌道エレベータや太陽系オリンピックに象徴される進歩や上昇志向の是から物語が始まったように一旦は見えながら、作品題の新時代型(と言ってしまうけど)共同体「UQホルダー」はむしろそういう思想の果てに排除される側に付く互助組織だった、という展開はカッコいい。「徒党」という表現が熱い。

 今話の夏凛の語りはリアルでもけっこう重要で、よく語られている「グローバル化」と「ネット社会」の一つの帰結は、「平均化」です。今まで世界規模から見ると格差を前提に下から上に吸い上げられていた構造だったのが、平均化していってしまう。

 で、平均の方向は(イメージとしての)アフリカの貧困層が日本的中流層に近づくかというと逆で、日本的中流層がアフリカの貧困層方向に下がっていく感じで平均化されていくのです。

 だから、「かつて豊だったこの国ももう無縁ではいられない話よ」なんですね。これから、かろうじて残ってた昭和的中流層が、どんどん下層、もっといって貧困層に日本でも移動していく未来を、見てる人は見てる。ブラック企業の話題とか、正社員でも労働時間が明らかに過酷で賃金も安いとか、そういう話題の本質はこういう世界潮流とリンクしてるのです。徐々に中流が、かつて搾取される側だった下層に移動し始めているのですね。さすがに赤松先生は時代性を捉えて作品に反映させていると感じます。「21世紀 人類は「貧困」を世界に平等に配分した…良いも悪いもなく歴史の必然なの」の夏凛の台詞の背景はそんな感じだと思います。

 そして、本当震災があった2011年以降のヒーロー像の求道と各種共同体再考の流れの帰結として、今話は感銘を受けた。


「けれど我らUQホルダー 人の理外れた人間以外の徒党 我らは常に――人の世からはじき出され蹂躙され忘れ去られる者達の側に付く」(夏凛)


 カッコいいね。これからの激動の厳しい時代、こういう風に生きたいものですね。

 まんまJコミじゃないかというカッコ良さですね(笑)。21世紀的平均化された世界では、例えばコンテンツ業界も一部の圧倒的な勝ち組と大多数の貧困層、コンテンツ的には忘れ去られていくコンテンツたちに別れていくので(よく言われる「二極化」の一側面)、うん、軌道エレベータの最上、太陽系オリンピックで戦える的な勝者的コンテンツはそれは尊いだろう、でも、忘れ去られていく側を互助する、という「徒党」の者達に、日本的ヒーロー観があるんじゃないの、というような話です。この比喩・連想だと、漫画家って人の理外れた人間以外だったのか!? という感じですが、たぶんそんなに間違ってない(え)。下層、貧困層、あるいは価値観的マイノリティー層(人の世からはじき出された者)の精神的救済として、漫画がある。そしてその漫画を描く人たちの互助組織(サービス)としてJコミがある、みたいなね。だから例えば作中で九郎丸は一族から排斥された者でありつつ、どうやら性的マイノリティでもあるっぽいという二重マイノリティなのかな、と。以前例の漫画規制の話題の頃に書いたけれど、実際漫画がマイノリティの人達の精神的な拠り所になってる側面って、きっとある。だから、太陽系オリンピックで競争の上層を勝ち抜いていく人達とは異相を異にする、謎の互助思想で動く徒党集団が必要だ。以前メルマガでJコミは独立機動部隊みたいな方向を志向するというようなことも書かれてましたしね。

 予想を数段超えてきてくれて魅了されております。今話で提示された「UQホルダー」の現時代的通りすがりのヒーローの徒党であり、互助集団だ、というあり方は本当カッコいい……。


Stage.13「負けられない」

 今話も、進歩とか、競争の末先に進んでいく意志みたいなものの象徴としての軌道エレベータの回りにだーっとスラムが広がってるシーンの絵とか、凄いですね。

 赤松先生があまりに世の最先端の部分を写像しながら物語を作っておられるので、ついついリアルの世相の話とかも絡めた話になってしまっている『UQ HOLDER!』の感想なのですが、今、貧困が問題としてクローズアップされてきてるのは実はアメリカです。

 アメリカこそ、少し前までは進歩とか新自由主義とか、そういうものの象徴の国みたいな感じだったのに、今では貧困層の拡大が社会問題になってる。貧困層は例えばフードスタンプっていう制度で飢えをしのいでたりしてたんですが、最近フードスタンプの資金の減額が決まって、凄い社会問題になってる。本当、「アプリ」みたいな最新の知が集約されている物、事柄に富が集まる一方で、周辺には無数の貧困が広がっていってる世界なのです。で、疲弊したアメリカの人達が、競争全開の頃には忘れ去られかけてた「街の教会」に回帰しはじめてる、なんて話が、たとえばリーマンショックの頃からクローズアップされるようになってきている。そう、「教会」も重要な要素ですね。「ネギま!」の頃は内面の告白(主に恋愛沙汰)とかの場だった教会も、今では本当貧困支援の場という世の中。そういうフェーズに突入しているのです。そして、前話での夏凛の「かつて豊だったこの国ももう無縁ではいられない話よ」の台詞のように、この流れはもう日本にもやってきてるのですね。都内の居酒屋とか、店員さんが本当外国の人になってますよね。「21世紀 人類は「貧困」を世界に平等に配分した…良いも悪いもなく歴史の必然なの」ですよ。かなり大きく流れが変わる展開にならない限り、日本も本当一部のアプリ的軌道エレベータ的富の集約者と、貧困層が別れるような未来が始まっている。これ、まだ実感ない人も多いかもなのですが、そういう流れの中に我々はいます(一つの大きい要因は、前回もあげた「平均化」、「ネット化」、「グローバル化」など)。

 そんな世界さポイズン、という中を、謎の互助的思想を掲げた徒党が駆ける。「UQホルダー」は本当カッコいいですね。前話の夏凛の台詞だけど、あまりにカッコいいので今回も引用。


「けれど我らUQホルダー 人の理外れた人間以外の徒党 我らは常に――人の世からはじき出され蹂躙され忘れ去られる者達の側に付く」(夏凛)


 また、UQホルダーとしての最初のミッションとして描かれてるのが「地上げの阻止」というのも象徴性と時代性がばっちりで、『ネギま!』は、有限のリソースを奪い合うしかなかった現実世界と魔法世界の問題を、宇宙開発(技術革新)という方法で「リソースを追加して」解決する物語だったわけじゃないですか。で、「土地」も分かりやすい「有限のリソース」なんです。それを奪いに来る存在と戦う。良いですね。「ネギま!」から繋がってる感じがしますね。

 また、美空の縁者と思われるシスターの春日美柑なるキャラクターが出てくるとかね。悠久の時間の中で「ネギま!」の3-Aという共同体は壊れていったのだけど、近衛姓の刀太をはじめ、縁者がこうして生きている、というのが「悠久」の可能性を感じさせてくれて良いですね。スラム街、ある意味ネギの理想の負の側面なわけじゃないですか。軌道エレベータに宇宙開発、素晴らしい、進歩だ、ノリノリだ。でも、周囲には貧困街が広がっていった。そこを美空の縁者が守ってるとか、ね。一食の恩義で、木乃香の縁者っぽい刀太がそこに参戦するとかね。グっとくるわー。

 そしてそういう物語面の凄さの他に、ついにこの時が来た! というバトルヒロイン夏凛の無双シーンが。この夏凛のバトルシーンのネーム凄い……。本当凄いとしか言いようがない。やばいわー、本当凄い漫画を目撃してると思うのでした。


Stage.14「魔法アプリ」

 バトルの対立としては、雪姫などを絡めて物語序盤から描かれていた「悠久VS最新」という一話。雪姫、というか「エヴァンジェリンのガチの古の魔法VS最新の知が生み出した魔法アプリ」、みたいな構図ですね。それが今話の夏凛VS「瓦礫」にもかかっていて、「ガチの不死身の悠久の身体を持つ夏凛VSここ最近の知識・技術の産物である全身義体化の「瓦礫」」という構図になってる。夏凛全裸化はまあサービスシーンなんですが、一応「ホンモノの悠久の身体」と「技術や金で買える仮初の永遠の身体」の対比を際立たせる演出にもなってるわな……。そう、軌道エレベータ的、魔法アプリ的、上昇志向とか競争とかが意識される「最新」サイドに、「金で買える」要素も加わってきましたね。第1話、第2話から「軌道エレベータ的なもの=(象徴としての)競争」というのは何度も出てきていたわけですが、資本主義世界がどうやらまだ続いているらしい世界ということは、何といっても競争は貨幣価値の拡大競争になりますので、最新を目指す、そこに富が集まる、金で買える……は現時点で同じ側だと。その代償、負の側面的に、軌道エレベータの回りにだーっと貧民街が広がっている。そこを「理から外れた」UQホルダーが守っていると。「地上げ」は『ネギま!』から続く象徴的な敵キャラなんだという話を前回書きましたが、金・富の集約者側の連中が最新技術を生かしてリソースの搾取にやってくる。それを、世界のルール不問の謎の徒党の一人、夏凛がブチのめすというのは今話段階では溜飲が下がる展開。

 これまで『ラブひな』的「永遠(例の山手線のシーンの終わらないループの象徴性とかの話ね)」はちょっと否定的に捉えてそれを乗り越えていく作品なのかもしれないと思っていたのですが、今話を読んで必ずしもあの手の「永遠」を否定もしないのかな、とも思ったのでした。夏凛、傷つかず、死ねない悠久の身体(まさに『ラブひな』的傷つかなさに終わらなさ)に対して涙を流してるんだよね。それは悲しいと。でもそんな夏凛が競争の是の前に忘れ去られ、淘汰される側に回った貧民街の人たちを守ったのはホントウなわけで。『ラブひな』で稼いだ金でコンテンツ業界の土壌になる多様性を守る的な(え)。「永遠」の概念のアップデートみたいな感じですかね。『ラブひな』的時間とか孤独を伴っていたし虚構的だったのかもしれないけれど、もうそんなこと言ってる場合じゃなくなった厳しい現実に突入した昨今、その時の力をホンモノに変えて謎の互助的思想を掲げて駆けてやるよ、みたいなのだったらカッコいい。さあ、いよいよサービスシーンも出てきたし、同人誌とか描いて輸出しよう。


Stage.15「修行の成果」

 「気」の扱い方に関して、刀太には夏凛が認めるほどの才がある、ということが描かれる。「瞬動術」を始め、体術にも才あり。

 はい、もうこの説を打ち出してこの記事書いたの7年ほど前ということに流れゆく日々を感じつつ、うちのブログ的にはこの話ですね。↓


クーネギ推奨!ネギと結婚するのは古菲説・まとめ


 気の扱いと体術に関して才能があるとか、これ、もうどこかで古老師の血が入ってるとしか!

 もともと、超に未来人という属性の他に何故か中華系の属性が入ってる点を、ネギと古菲の子孫としないと説明つかない(赤松先生はあんまり意味のない要素は入れない)点などがこの説の根拠になってるのですが、こう、様々な側面から『ネギま!』とのリンクを見せられると、「気」の才能、もしかしたら古老師要素もリンク? という話から想起されるのは、いよいよ『ネギま!』では明確には伏せられたまま終わった、超の未来で起こった悲しい出来事についても『UQ HOLDER!』では明かされたりするのかと期待が高まります。劇中2086年なのですよね、火星開発がどれくらい進んでる時点なのかまだ不明ですが、麻帆良祭ラスト時点で、どうして超が目的は既に達せられたと言ったのか、そして、帰る間際に何故にネギと古菲に声をかけたのか、明かされる時が来るのかもしれない……。というかこれ、超も何らかの形で出てきそうだよね……。刀太くんの街の友人関係スキルに「機械」が入ってるのも気になる。カシオペアが作られるのが描かれる展開も、あり得る、やもしれない。

 そして、食をせっせと作る刀太くん。軌道エレベータ(競争や進歩の象徴)がそびえる脇の貧民街で、夏凛先輩と九郎丸、そしてスラムの子供らと一時互酬共同体的な生活をしている……という絵はなんかイイな。刀太の料理スキルは競争の果てに一番を目指せる類のものではないかもしれない。でも、こういう時、こういう場で「食」を作れるのが一つの正義の形なのもまた確かで。

 刀太の自身の能力、自身の夢についても物語も見どころだと思ってます。才能があるからと体術! というのは現実的に考えれば有意義な道だけれど、今一つ自身の本然について掘り下げまくった『ネギま!』(ネギの本質は闇という話や、自身の特性は開発力、という話の辺りね)の後だと、若干今更感。この辺りは、「魔法は使えない」(ネギの子孫のはずなのに!?)という部分と重なって、今後のキーになっていきそう。


Stage.16「盲目の不死狩り」

 格闘技が好き過ぎて色々面白い領域に達してる灰斗と、剣の技術は素晴らしいが剣を好きではないだろうと指摘される九郎丸、という対照になっている。刀太が師匠的にその人から吸収しようと思えるのは、夏凛いわく「芯」がある灰斗や刀太の田舎の友人たちの方。

 これは、


 「お前は おまえ自身になりな」(ナギ@『魔法先生ネギま!』)


 のネクストステージみたいな感じの話に思えますね。

 『ネギま!』は自分自身がどういう存在になるかをある意味呪縛されていた(ナギのようにならないといけない)ネギが、自分自身の本質(「闇」とか「開発力」とか)に目覚めるまで、というストーリーラインがあった作品です。

 本作の刀太は武術の才能があったり出生に何かありそうだったりと、ある程度どういう自分になるかの呪縛はあるのだけど、本人はわりと自由奔放に自分はこういうものだと今の所規定しないで、色んなジャンルから吸収しまくってる。まだこれ一本という夢もないけど、特に悲壮な雰囲気は今の所感じない。

 一方で、九郎丸は剣、自身の種族(特に性的に特殊な点について)について、本人の意志でどうこうという以前の、呪縛のようなものの延長線上にまだいる段階、と。本当に自身のやりたいことというほどまだ剣術にもコミットしてなかったし、どちらの性別を選ぶかに関しても表面的な言動とは裏腹に揺れている、と。


 「あなたには女の子をオススメするわ」(夏凛)


 という夏凛先輩の台詞は、ナギの台詞と対の意味合いなのですね、自分自身の存在をどうするか、ナギの台詞は自分の内部の本質に求めよという話だし、夏凛先輩の台詞は外部の人からこういうあなたが相応でしょうという話をしている。使い古された言葉で言えば「アイデンティティ」の問題だけど、普遍的な題材かと思います。『ネギま!』だと刹那もかなりの期間これに悩んでたのだけど、同じ神鳴流使いの九郎丸も悩んでるというのは前作とのリンクを感じる部分(そして、刹那の正体も今話の言葉を使うなら「亜人」に分類される存在だったということなのかと)。

 性別にしろ人種にしろ、こういう境界領域にある存在は一度はアイデンティティの問題を通るものかと思いますが、これ、同じく人型と獣型の境界を使い分けてる灰斗がヒントになったりするのかな。

 不死者の徒党、「UQホルダー」自体がマイノリティたちの集団というのは良い。夏凛先輩からして好きなのは同性(雪姫)っぽいしね。『ネギま!』の刹那と木乃香の話もだいぶ踏み込んでたと思いますが、今作はまた一歩踏み込んでる感じ。そういうマイノリティ、亜人的存在は段階的に世間に公表され(認められ)ていくというのも、リアル世相を感じさせる話。軌道エレベータ的、太陽系オリンピック的、上昇志向、進歩志向というのは、それ一辺倒だと、マイノリティは排除して力あるものだけで進めという風に力学が働くものなので、そういう理から逃れたマイノリティ達による謎の互助集団というのは、やはりカッコいいのでした。

 とりあえず3VS3の構図になりそうな展開で引き。九郎丸にも物語が出てきたので楽しみ。


Stage.17「刺客襲来」

 軌道エレベータの周囲に貧民街が広がっているものの、水、電気の基礎インフラに格安お掃除アプリによって衛生状態も改善している……という辺りがじわじわくる辺り。軌道エレベータ的、太陽系オリンピックを目指す的な進歩志向、競争志向の負の側面として、格差が拡大して周囲に貧民街が生まれる。でもそういう格差の下の層の生活水準を改善しているのも、そういった進歩志向で進んだ人たちの残滓なわけで。これはもうリアル世相な感じです。

 「進歩・競争」−「取り残された人たちの互助」の対立に見えつつ、UQホルダー側(今の所一見互助側)にも利潤を追う意志がある点も描かれたりと、全体的には「進歩・(利潤を追ったりの)競争」にもやっぱり意義があるんじゃってターンの一話だったようにみえます。ただ、忘れてならないと思うのでは、上述の貧民街のインフラが改善されてる描写って、裏を返すと貧民街は消費地としてまだ機能してるって描写だと思うのですね。消費地。商品とかが売れる場所ですね。世界史とかに出てくる帝国主義時代の説明もそうですが、ざっくりと説明すると歴史上の大きな戦争は消費地獲得競争だった側面がどうしてもあります。だから、なんで貧民街を地上げなんてと思うのだけど、今話で大陸系のマフィアが潰しあってたという言及があるように、いくつかの勢力で、消費地としての貧民街のリソース(土地と人)の奪い合いをやってるって状況なんですよたぶん。リアルだと、そうした貧民街消費地を獲得した後に消費させる商品はぶっちゃけドラッグとかなんですが、UQホルダーの世界観だとドラッグ的魔法アプリ、とかになるのかなと。消費地としての貧民街を押さえてドラッグ的魔法アプリを消費させるとかになれば、一気に搾取貧困ビジネスが成立です。

 第1話からして、田舎の土地(まだ消費地としてのリソースと人がいる)に例の眼鏡の大人がやってきて、魔法アプリを田舎の少年たちに供給して(賞金稼ぎとしての)利潤を求める、という『最新』の力を持った側の「搾取」に対して、『悠久』の力を手にした刀太が拳の一撃で対抗する、という構図だったと思います。最近の貧民街の話も、大きくは同じ様に『最新VS悠久』で、「搾取」にマイノリティー側の互助徒党であるUQホルダーが立ち向かう構図になっている。『最新』側が「搾取」っぽいっていうのは、敵側は民間軍事会社(PMSCS)ですからね。リアル世相では、ネーションテイストとしての「国家」の役割が相対的に減衰して何でも資本側へ、ざっくりとは民間側へというのがマジな流れとしてはあるのですが、近未来が舞台の『UQ HOLDER!』、「軍事」まで国よりも民間が幅を利かせてる世界観に既になってるのですね。これはかなりヤバい話なのですよ。民間は利潤(金)の追求が第一命題ですから、ざっくり言うと儲かれば人を殺したり戦争やったりになります。

 そういう「最新」「民間」「搾取」「軍事」という、ヤバいキーワード満載の勢力が幅を利かせてる世界で、「悠久」の徒党たるUQホルダーがいるって感じなんですね。そして、ここまで背景の色々も綿密に描いている以上、UQホルダーの資金源も今後ちゃんと描かれそうな気がする。現在の敵側の「資本の追求」「消費地獲得」とかよりは、「縁」みたいなアナログなもので動いてる感じがするのですね。今話でも、夏凛が(『ネギま!』の)美空と縁があるみたいなシーンがありますし。一般的に、こういう新自由主義的な資本追及競争の世界が押し進められていく中で「共同体」は解体されていくのですが(刀太も、軌道エレベータを目指すために田舎の「共同体」とは一旦別れを告げたのが描かれている。)、最後までその流れに抵抗する「共同体」は「家族」だろうと言われています(柄谷行人の本とかね)。それでもその「家族」共同体すら劣勢な世情で、これはリアルでもそうですし、劇中でも九郎丸とか、自分が生まれ育った場所からは排斥されてしまっている訳で。そんな連中が、初登場時にあえて「一家(ファミリー)」という言葉を使った徒党の共同体として存在してる感じなんですね。『ネギま!』キャラクター達との縁を感じさせる描写が随所にあるのもそうですし。そんな「共同体としてのみんな」はバラバラになっていく世情さポイズン。でも、それを超える何か「次」の共同体もあるんじゃないか、消えない縁もあるんじゃないか、みたいな話で。UQホルダーはやっぱりカッコいい。

 裸で戦った第14話が評判良かったのか、夏凛先輩の裸戦闘で引き。全裸戦闘キャラという新しい? 地平を開拓していってほしい(サービスシーンだけど、一応最新の色々な道具を使って戦う敵側に対して、悠久の身体一つで戦う的な比喩にもなっている。)。


第2巻単行本感想追記

 第2巻、マガジンのタイムリー連載分を追っていたわけですが、改めてまとめて読んでみて、「マイノリティーの徒党」の話なんだなと感じました。

 やっぱりStage12の夏凛の台詞がすごい良いと思うのだけど、徒党「UQホルダー」が助ける対象は、資本の原理や競争原理といったマジョリティーの論理からあぶれたマイノリティー側の人達。であると同時に、共同体「UQホルダー」自体が、マイノリティたちの集団。これが、すごくカッコいい。

 リアル世相を見ても、引き続き強者が形成するマジョリティ層、というのは強力な自己波及衝動で世界を覆おうと今日も突き進んでいる。そして、あるパラダイムにおいては彼・彼女らは本当に「正しい」。なのだけど、Stage12で夏凛が言ってるように、そういう潮流からあぶれてしまう人たちっていうのはいつの世もいる訳で。作中でも扱われている性的マイノリティ、自身の魂の本質として、破滅的なものを持ってしまっている人、病気の人、大事な人が社会の富が集積してる場所の恩恵は受けられない立場の人、色々、リアルにだっている世界です。ヒーローなら、やっぱりそっち側についてほしいよなと。

 Stage11ラストの、「UQホルダー」の百鬼夜行な姿が明らかになって、刀太がそれを受容するシーンがとても好き。世界の中ではともすれば排斥されるような弱い立場の存在たちなのかもしれないけれど、裏返せばそれは「多様」な人たちだということ。それが、とても愉快な様子で描かれている。

 去年から今年にかけて、現在の僕の感覚にマッチしたヒーロー像、ヒーロー達の徒党像を出してくれた作品。マガジンでタイムリーに追っておりますが、続きも楽しみです。





●応援:Jコミ

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