アニメ『境界の彼方(公式サイト)』、Blu-ray&DVD第7巻収録のTV未放映エピソード第0話「東雲」の感想です。

 ネタバレ注意です。
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 『境界の彼方』については個人的に思い入れが深い作品で、また今でも定期的に読んで頂けてる最終回のラストシーンの解釈記事がありますので、まずはそちらをよろしくです。↓


境界の彼方/第12話(最終回)感想(少しラストシーンの解説含む)


 そして今回の第0話の感想。

●博臣視点

 TVシリーズ本編で過去にあった出来事として言及されていた、秋人と博臣が戦って、博臣が死にかけたというエピソードが本第0話。

 美月が使っているヤキイモへの気持ちの変遷、半妖である秋人への気持ちの変遷を通して、大まかには博臣が妖夢・即・殺ではなく、曖昧な境界領域もあるんだ(色々な妖夢がいるんだ。もっと進めれば、世界には様々な色があるんだ、という作中是)、という受容の方向へ心が向かっていく所までが描かれる。だけど、その「受容」というあり方は異界師最右翼の名瀬家の嫡子としてはアンビバレントなわけで……というような内容。

 重要なのは博臣にとって名瀬家と泉の存在は重いということと、博臣は変態だ(え)ということです。この第0話も、博臣(妹萌え)と秋人(眼鏡萌え)という変態二人が出会うというエピソード。

 博臣が美月と秋人、二人を同時に檻で守って、どちらかしか助けられない的なシーンも描かれたりする本第0話。こういうシーンで描かれている「タメ」を押さえておくと、第11話の泉が秋人か栗山さんかどちらかが死ぬしかなかったんだ、と突きつけてきて、秋人と博臣が変態パワーでその「二択・どちらか犠牲が出る世界観」をぶち壊して、「灰色、さらには『境界の彼方』」に至る、という所がより熱くなります。


 「悪いけど、今度は俺たちの番だ」(名瀬博臣@第11話より)


 博臣にとっては重くあり続けた名瀬家の文脈、泉の文脈、二択的、妖夢・即・殺的な文脈に対して、変態パワーで次のステージに駆けだして見せた辺りが第11話なんだろうなと。


●美月物語

 美月に関しては、秋人に向かってカプセルを投げ入れるシーンにて、守られてるだけじゃなくて、初めて能動的に動くシーンが印象的に描かれる本第0話。

 美月関係の話ということで、ここから先は『涼宮ハルヒの憂鬱』〜『涼宮ハルヒの消失』のネタバレも含みます。

 『境界の彼方』という作品は、『涼宮ハルヒの消失』を本歌、オマージュ元にして、「その次」を表現している作品だという僕の解釈は、まずこちらの記事を参照して頂けたら幸いです。↓


『涼宮ハルヒの消失』と『境界の彼方』との関係について(『境界の彼方』第8話〜第11話感想)


 上記と最終回感想で書いた通り、『境界の彼方』は(恋愛に関して)栗山さんが消失長門ハッピーエンド(半虚構存在も存在してイイ→誕生を祝福する眼鏡装着エンド)、美月が消失長門バッドエンド(やっぱり選ばれなかったという意味で)だと解釈しております。それは例えば、『ハルヒ』の長門有希と『境界の彼方』の名瀬美月のCVが同じ茅原実里さんな辺りからも、送り手もメタに表現していると思います。

 ただ、美月がシンプルに消失長門と同じで、選ばれなかった、切ないね……で終わりかというと、『境界の彼方』は「少し先」を描く素地を残していると思っていて、『涼宮ハルヒの消失』の消失長門(眼鏡の方)が受動的で自ら消失世界を残すように特に能動的には動かなかったのに対して、『境界の彼方』の美月(時々眼鏡)の方は、要所要所で秋人を救うために能動的に動いているのですね。この第0話もそうだし、TVシリーズ本編でも、例によって詳細な美月が取っていた行動は直接は描かれていない部分もあるのですが、何かしら秋人を生かそうと動いていたのが、要所要所の描写から見てとれます。

 そういう、「消失長門バッドエンドのifだけど、トゥルーエンドに持っていくために動いている美月」の物語はまだ描かれていないので、発表されている劇場版は、美月に何かしら焦点があたるのではと予想していたりします。

 この辺りは、上記にリンクした二つの記事でも書きましたが、かなり送り手もプロモーションにメタフィクションをかけるのを意識してそうなので、『長門有希ちゃんの消失』のアニメ化と、『境界の彼方劇場版』の公開が同時期であろうことから、何かしら表現してくるんじゃないかと予想しています。

 if消失長門の栗山さんも存在していて良い(『境界の彼方』最終回)→『涼宮ハルヒの消失』では選ばれずに消える側だった消失長門を主人公にした『長門有希ちゃんの消失』のアニメ化が発表→次は、if消失長門バッドエンドだった美月に『境界の彼方劇場版』で何かが……とかじゃないのかなぁ。


●世界観に関して

 TVシリーズ終盤の二つの虚構世界、二人の秋人、などなどから始まり、本歌にしてる思われる『涼宮ハルヒの消失』も「二つの世界」ネタの作品、と、キーワードは「二」。という所で、本第0話もラストシーンは、栗山さんの指輪が二重になりながら、最後に円になるという映像で終劇しています。

 ブディズム的(仏教的)世界観をかなりベースにしてる作品だとも書いてきましたが、一つは「輪廻」的なものを扱っている世界観だと思っております。半妖の秋人と呪われた血の栗山さんに何か運命的な関係があるのも、『AIR』で言えば『SUMMER編』のようなものが『境界の彼方』にも存在している感じで、その辺りの謎を知ってるのは、劇中では秋人の母の神原弥生のみ、という描き方。劇中に散りばめられている様々なピースを組み立てていくと、秋人の父親はどういう存在なのかとか、呪われた血が何なのかとかにはかなり迫れるようには作られているので、TVシリーズで終劇でも満足だったのですが、何かしら続くのだったら、その辺りも掘り下げてくれると面白いかもしれない。

 ちなみに、『涼宮ハルヒ』シリーズが本歌だと思われるので(たぶん制作陣もハルヒの核心的な話を念頭に置いてる)、僕は『境界の彼方』を観て、『涼宮ハルヒ』シリーズの方の「世界の謎」もかなり推測が立ったりしました。特に、


・三年前の七夕の日に何が起こったのか
・ジョン・スミスの役割
・「消失」や「驚愕」の「二つの世界」現象の説明


 辺りは、『境界の彼方』の情報からかなり迫れます。

 そして、それらの現象の原点が何だったのかは、実は第1巻の『涼宮ハルヒの憂鬱』に書いてあったりもします。(あくまで僕の解釈)

 ◇◇◇

 そんな感じで、理想的にはアニメ版の『長門有希ちゃんの消失』と『劇場版境界の彼方』でさらにこの手の物語を進めつつ、その後に満を持して谷川流先生のハルヒ続編発表、とかだったら至福でしょうか。

 『ハルヒ』、生きてる間に最後の一ピースを読めたら、イイなぁ。

境界の彼方 (7) [Blu-ray]
種田梨沙
ポニーキャニオン
2014-07-02




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