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 アニメ『SHIROBAKO(公式サイトニコニコチャンネル)』第4話「私ゃ失敗こいちまってさ」の感想です。仙台にて地方遅れ視聴中。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 「彼らの戦いは、まだ続く」(『神仏混淆七福陣』)


 脚本が『けいおん!(!!)』『ハナヤマタ』などのシリーズ構成の吉田玲子さん担当回。

 この前こういう記事を書きましたが、↓


『けいおん!』と『ハナヤマタ』で重ねられている演出とその意図について


 書き手の性質として、新作では過去の自作の諸々の「次」を描きたいという衝動は普通にあると感じています。やっぱり、オープニング映像も学生服姿の五人が屋上(『けいおん!!』や『ハナヤマタ』で印象的に使われてる場所)に、だけど学校の上じゃなくて武蔵野アニメーションの屋上……というラストだし、『SHIROBAKO』は『けいおん!(!!)』的女子五人組の学生時代の「輝いた時間」を描いた作品の、「社会人編」を描いてるというコンセプトが一つあるように感じます。

 社会人編なんで、何かと五人はもう「バラバラ」になってるんですね。職場も住んでる所も境遇も違うし、学生時代みたいに「ずっと一緒」にはいられない。そういう意味で『けいおん!!』最終回の「天使にふれたよ!」の「卒業は終わりじゃない。これからも仲間だから」の歌詞は、理想通りには実現していないように表面的には見える。

 「部室」共同体とかやってられた時間は終わって、社会人編なので「居酒屋」共同体ですよ。もうめっちゃたまにしか会えない。しかもある種無謬に輝いていたような『けいおん!(!!)』的な時間は終わっていて、社会の中で相応に傷ついている。しずかのオーディションで失敗してしまってとぼとぼと涙を流しながら都会のビル群の中を歩いてる描写は大変物悲しいです。あおいと絵麻が「名前が載った」ことを称えられる一方で、居酒屋のバイトと「でも誰も、私がやってるって気づかない仕事だし」という仕事をして暮らす日々。同じ歳のあおいと絵麻がある程度結果出してるだけに、これはつらい。

 なのだけど、これは厳しい社会人編なりに、五人が再合流する物語なのだと思う。ただ合流するというよりは、高校時代の「けいおん!(!!)」的共同体が、社会人世界編なりに、アップデートされてまた顕現するみたいな感じ。

 凄いなと思うのが、『けいおん!!』の頃、感想でよく、共同体がバラバラになる一番の要因は進歩志向とか競争志向で、それを第一に追ってしまうと、共同体は崩壊の方に向かうんだ。で、『けいおん!!』ってある意味そういう力学に反抗して、共同体の続行を模索するような作品なんだってことを書いておりました。で、『SHIROBAKO』、あおい、絵麻、しずか、美沙、みどりの五人は、それぞれに違った自分の志向(今話でも、みんな違うものを注文したり、作品の観てる箇所がバラバラなのが印象的に描かれている)に基づいて、それぞれに進歩を目指している。これだと、共同体はバラバラになっていってしまうハズなんだけど、アニメーションという題材はそのバラバラの特性の進歩の再合流が可能なのですよね。傷ついたしずかが学生時代に五人で作った『神仏混淆七福陣』を観るのが印象的で、これ学生時代の五人の紐帯の象徴なわけですよね。で、大人になった現実で、みんなはバラバラになってそれぞれに大変で傷ついたりしてるのだけど、それで切ないねで終わりじゃなくて、『神仏混淆七福陣』に象徴される気持ち、アニメーションが好きっていう変わることのない真実が、このバラバラになる力学が働く大人世界でも、五人をまだ繋いでいるっていう話なのだと思うのですね。

 だから、もちろん、学生時代は良かった的ノスタルジーへの回帰ではなくて、大人時代の厳しい現実でも、何かしらアップデートされた「輝いた仲間たち」みたいなの、やってやるよ、という作品なのかと。

 オープニングではしずか『えくそだすっ!』の台本持ってるのだけど、これ、しずかも『えくそだす』に合流したりするのかな(「あぁ〜ん、いぃ〜」の所だけはめっちゃ上手いというのは伏線?)。また、みどりは現時点ではダイレクトには合流できないので、二クール目突入辺りで時間軸が進む仕込みでしょうか。

 絵麻の目標が「日常芝居を得意とするなにわアニメーションの堀内さん」というのは、この『SHIROBAKO』という作品は劇外のメタネタを色々かけてることも鑑みると熱くて、堀内さんのモデルはようは「京都アニメーションの堀口悠紀子さん」と思われるのですが、『けいおん!(!!)』でもキャラクターデザイン・総作画監督をされていた方です。


参考:『SHIROBAKO』第1〜2話に登場する元ネタ解説/やまなしなひび


 だからもう、これ、絵麻が大人の厳しい現実世界でも理想としてそういう日常芝居を目指してるということが、疑似的に厳しい大人世界でも『けいおん!(!!)』的なこと、形を変えて実現してみせるって、コンテクストなんじゃないかと。

 そんな、今は大人世界編突入したばかりの五人からは天上人に位置するであろう、監督とかも、こっちはこっちで大変そうで。

 (たぶん最終回の)絵コンテがまだ序盤しか上がってないというのはハラハラする。これどうなるの。ついに天啓が降りてきた所で、監督がやっぱり天才的神コンテ描くのかな。劇中で作ってるアニメ『えくそだすっ!』の最終回が、上記の五人の関係ともリンクしそうな作劇。

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→前回:『SHIROBAKO』第3話「総集編はもういやだ」の感想へ
→次回:『SHIROBAKO』第5話「人のせいにしているようなヤツは辞めちまえ!」の感想へ
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