毎年恒例、その年に触れた作品などで良かったものを、僕の主観でベスト形式で記載しておこうのコーナー。今年も「漫画部門」と「アニメ部門」を行います。

 ではでは、まずは「漫画部門」からやってしまいます。

 以下、雑誌の最新連載分までは基本ネタバレを含みますので、注意です。
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第10位:ヒロユキ『アホガール』

 週一回の安定ギャグ漫画ポジション。「週刊少年マガジン」掲載ですが、昔なら川口憲吾『脳みそプルン!』とか西本英雄『へなちょこ大作戦Z』とか、この辺りのポジションが何作かあると人生強い。「笑い」とか、脳とか身体全体に良い感じなの科学的にも言われて久しいので、ある意味健康促進漫画です。

 また、例えば旺文社系四コマのギャグに萌えをミックスしたような作風が一ブーム作った中で、一瞬そっち方面かなと思うのだけど、ガチギャグよりなのも好感。よし子には別に萌えないんですが、面白いので全てOK。面白いは正義。毎週声出して笑っちゃう級で面白いですからね。

 なお、この系統の漫画のポジションに、僕の中では浜岡賢次『毎度!浦安鉄筋家族』も入っていて、今年も笑わせて貰っていました。水曜日と木曜日は『アホガール』と『浦安鉄筋家族』があるんで強いよ。

 ギャグ漫画は大事だ……。

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アホガール(1)
ヒロユキ
講談社
2013-07-19


→毎度!浦安鉄筋家族





第9位:高橋陽一『キャプテン翼 ライジングサン』

 『グランドジャンプ(公式サイト)』系の、三十代・四十代辺りをターゲットにしてるであろう作品の、狙い撃たれました第一弾。

 ストレートに面白いな、時代の最前線だなと感じるのは未だ「週刊少年ジャンプ」なんですが、「馴染む」って感覚からすると、『グランドジャンプ』『グランドジャンプPREMIUM』に「ホっと」する感覚を感じるようになった自分に、歳をとったなぁと感じますね。

 しかし、もう翼くんと岬くんのコンビプレーとかが未だに見られるだけで、テンション上がってしまうのだった。

 物語が再び南葛市を訪れる翼くんから始まり、変わったことと原点の気持ちとを確認するのであった……とか、はい、もろ僕ら三十代・四十代向けです。ありがとうございました。

 また、現在連載分は「VSオランダ戦」をやってるんですが、「ワールドユース編」の時って、序盤からオランダには伏線とか張ってたのにも関わらず、準決勝のオランダ戦は描写が省略されちゃったじゃないですか。(おそらく掲載中の人気とか諸々の関係で)いきなり決勝のブラジル戦でナトゥレーザが出てきて……って感じだったのですが、あの時取りこぼした、描かれていなかったオランダ&クライフォードとの戦いがついに読めてるということで。この、何か昔取りこぼしてしまっていたものを、大人になった時勢に取り戻そう感。もろ僕ら三十代・四十代向けです。ありがとうございました。

 ついでにこの際『キャプテン翼』について語り出すと、僕ら三十代辺りだと、ファミコンのゲーム版をプレイしていた人も多いと思います。必殺技を撃とうとすると、「ガッツがたりない」って表示されるやつですね。いいからガッツ出せよと思いながらやっていたものですが、この年齢になると分かります。ガッツ、出ない時もある。

 また、ゲームオリジナルの必殺技である「サイクロン」などもありました。前転して踵でシュートするやつですね。リアルでも真似しましたよね? どう考えても普通に蹴った方が精度が高いって現実を認識したりしましたよね。「雷獣シュート」を真似しようとして、足グキってやっちまったのと、二大「あるある」ですよね。ね。

 この年齢になると当時は見えてなかった視点も見えるようにもなってきて、もちろんスーパーヒーローとしての翼くんとか若林くんがカッコいい作品なんですが、そういう天才たちとは違う、普通の人なりに努力する人の大事さもちゃんと描かれていたっていうことですね。だから、石崎くんとか森崎くんにも大事にスポットあてて描いていたんだろうと。この「優しさ」は大人になって分かりましたね。ある意味、若林くんのようなSGGK(スーパーグレートゴールキーパー)にはなれないのだけど、与えられた条件・才能なりに頑張って生きていくしかない、SGGK(スーパーがんばりゴールキーパー)の森崎くんの方にも焦点があたってる作品だと。

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第8位:真倉翔・岡野剛『地獄先生ぬ〜べ〜NEO』

 三十代・四十代狙い撃ち枠第二弾。

 子供の頃は児童キャラクター達の視点から見ていたのが、この年齢になると教師視点から見るようになるし、送り手もそれを意識していて、郷子が大人になって教師になり、ぬ〜べ〜の同僚になっているという設定。昔児童キャラだった面々が大人になって登場してくるという、これまた僕らの年代狙い撃ってる感じの作品です。

 あの頃と今とで「変わってしまったこと、そして変わらないこと」要素で魅せるという、近年の復活続編再連載作品の王道を行ってるのですが、上手いなと思ったのが、ぬ〜べ〜がもう昔の「鬼の手」は使えないという設定。もう、バブル期の余剰が残ってた頃の「謎の外部リソースで超常の力を発現」とか、ないんですよ。

 それでも、困窮しきった現在で現在なりに現在の子供達は守って行かないといけないわけで(それが大人の責任ってやつだともこの年齢になって分かる)、じゃあぬ〜べ〜どうするのかっていうのが見どころの一つ。

 ジャンプ感想とかやっていた頃は謎の『未確認少年ゲドー』推しだったりもした本ブログですが、岡野先生の漫画はシンプルに漫画として読みやすくエンタメしていて面白いです。

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→未確認少年ゲドー





第7位:森川ジョージ『はじめの一歩』

 一歩の伊達戦以来の敗北が描かれた今年でありました。

 凄いイイなと思ったのが、世相が「世界に通用する俺達の凄い日本」プロモーションに酔ってた今年において、容赦なく一歩は世界に通用しなかったというのを描いた点。

 間違いなく、このままノリノリで一歩が世界で勝ち進んでリカルド・マルチネスまで一直線というのを描いた方が、表層的な世相の支持(そしておそらくそういう人たちの方が母数は多い)は得られたと思います。でも、ちまたの無敵主人公が活躍する作品群と距離を置くように、そうじゃないんだっていうことを描く。

 敗因も伊達戦とほぼ同じで、残念ながら一歩は成長もできてなかったんですよ。ノリノリで世界に向かう局面じゃなくて、まだ、どうしようもなく天才とかそれこそイノベーターにはなれない人間が(劇中でも鷹村と一歩の違いが強調されている)、挫折や破綻の中を、耐えながら生きるという段階。森川ジョージ先生、『会いにいくよ』も多大な労力をかけて描いていたし、一線の作家がそっち側に寄り添ってくれるのって凄いありがたいことだなと思って読んでおりました。

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はじめの一歩(1)
森川ジョージ
講談社
2012-09-28


→『会いにいくよ』





第6位:藤巻忠俊『黒子のバスケ』

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 つい数日前に「ジャンプNEXT!!」で(おそらく限定的な)続編「黒子のバスケ EXTRA GAME」が始まってしまってますが(感想書いてないですが、そっちも面白かったです。)、今年最終回を迎えた「週刊少年ジャンプ」のロングランヒット作品。

 「帝光中学のキセキの世代」という「過去」の共同体の破綻を、「現在」で乗り越えていく物語。基本的には人間関係の破綻なのですが、「過去の破綻」っていうのは色々と読者なりに、それぞれの立場で置き換えて想像できます。

 これも、過去は忘れましょう、今にフォーカスするんです(キリッ)みたいな世相の中、自分なりに過去と向き合って一区切りつけないと、前に進めないという部分が、叙情的にと湿っぽいのと半々くらいで描かれていて好きでした。特に黒子の赤司君への気持ちはなぁ。もう一度魂から赤司くんにぶつかるために、これだけの時間、誠凛のメンバーたちと共にこれだけの「構築」を必要としたというのが、黒子くんハートはけっこう無骨で好き。LINEで気軽にコミュニケーション! な世界で、一年とか使って自分と周囲の人間関係をコツコツと再構築して向き合い直すという。

 また、「キセキの世代」がわりと湿っぽい中、カラっとして熱い火神が好きだった。ラストの洛山の赤司くんワンフォーオールに対して、誠凛の全リソース火神に託す、オールフォーワン! みたいな展開は燃えましたよ。

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第5位:しろ『ヤマノススメ』

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 今年、アニメセカンドシーズンが放映されていた点でタイムリーだった作品。『東京自転車少女』とか、最近のトレンドとして一つあるであろう「趣味系」と僕が読んでる作品の中から代表して。

 「趣味系」の王道のごとく、何だか色褪せてしまっていた人生に、心から没入できる趣味を通して"輝き"を取り戻していく、その営みが仲間や周囲の人達とのリンクに広がっていく……というのを描いているのがまず一点。

 そして、これ絶対に三巻まではひとまとまりで読んで欲しいのだけど、挫折が描かれていること。

 あおいとひなたの関係が三巻までで三か所キーで描かれていて、一つ目は幼少時の記憶。そして二つ目は、もう一度二人で最初の山に登った時。

 そして、三つ目が、挫折・破綻の後に、もう一度最初の山で二人で同じ風景を見る箇所なんですね。その挫折・破綻っていうのが、色々な意味であおいとひなたを分断してしまう類のものだっただけに、それでも、そういう状況でも横にいてくれる人がいるってイイなと。

 その三巻ラストのエピソードのサブタイトルが「二十三合目:ともだち」で、この作品、意外とボロ泣き指数高いから気をつけるんだ!

→紙の書籍

ヤマノススメ 7 (アース・スターコミックス)
しろ
アース・スター エンターテイメント
2014-12-03


→Kindle電子書籍

ヤマノススメ 1 (アース・スターコミックス)
しろ
アース・スター エンターテイメント
2013-04-26




第4位:筒井大志『IDOROLL(アイドロール)』

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 今年一推しのアイドル漫画。

 何か、今回の漫画ベスト記事はそういう作品ばっかり選んでる気もしますが、やっぱり世相とかあると思うのですね。これも、主人公の一乃の破綻から始まる作品です。

 主人公というか、ヒロインの琴弾、アイドルファン代表のヨシくんの、今巻でのメイン三人が何らかの破綻を経験していて、そういう人たちの再生とリンクの「場」として、地下アイドルの現場が描かれるという作品です。

 アイドルは無意味かもしれないが、それしか道がなかったり、どうしても譲れない、途切れない気持ちと繋がってるならしょうがないじゃないか、という、大袈裟に言えば背後の虚無を前提とした実存劇です。だからこそ、三人の気持ちがリンクして何か「再生」が始まっていくラストエピソードはボロ泣きですよ。

 続きが描かれるかは第1巻の売り上げ次第ということだったのですが(作者さんのブログより)、続報は今の所なし。とても続きが読みたい作品なので、今からでもバズって売れてセカンドシーズンの企画始まらないかなぁ。

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第3位:赤松健『UQ HOLDER!』

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 今年描かれていた部分、三太と小夜子のエピソードは良かったですね。

 劇中は2086年ですが、こういう風に、栄えていく場・人々の影で本当に淘汰されちゃう人々が出るっていう話、リアル世相ではもう数年先から本格的に意識される段階に入ってると思います。昨年の劇中の、


「21世紀 人類は「貧困」を世界に平等に配分した…良いも悪いもなく歴史の必然なの」

「かつて豊だったこの国ももう無縁ではいられない話よ」


 の続きですね。「貧困」くらいの言葉だと現在も意識されますが、本当にセーフティネットでも受け取れ切れなくてばんばん淘汰される人々が増えるのまで、リアルももうすぐ。

 そんな世界を、世の理を外れた不死者の徒党が、謎の互助的思想を掲げて駆ける。

 Stage.60ラストの一コマ。全部失った三太の横に刀太が立っていて、一言、


 「ウチ来るか?」


 って声かける所がボロ泣き。

 戦闘に強くて、勝利できることだけがヒーローの条件じゃない。このエピソードでは刀太もUQホルダーの面々もほとんど役に立ってないんだけど、そういう世界から排斥された人の受け皿として、一言一緒に来るか? って声かけられるのが、今の世の中では最高にヒーロー。

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第2位:川原正敏『修羅の門 第弐門』

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 第壱門から十数年の休載を経て再開された第弐門。リアルでの時間の経過も意識させらて、何もかも変わってしまった……という無常観な雰囲気で始まっていました。昔僕らが熱狂した陸奥圓明流不敗伝説も、もしかしたらもう九十九は敗北した後なのかもしれない。

 という所からの、時間的、出来事的(個人的にはやはりリアルでの東日本大震災が大きい)大きな「分断」があっても、「途切れないもの」はあった、というのが今年連載部分。


 「陸奥圓明流千年の歴史に、敗北の二字はない」


 の決め台詞が、万感のシチェーションで(リアル時間で)十数年ぶりに九十九の口から出る。そこからの、個人的に中学生の頃に休載に入って以来、もう描かれることがないと諦めかけていた四神の「青龍」登場。生き続けていると良いこともあるのだな感。

 「途切れないもの」は舞子の気持ちでも描かれておりました。十数年で二次元嫁とか代替可能に何度も入れ替わってきたであろう超消費世界の中で描かれる、変わらない一途な乙女の一念。暗器の存在をレフェリーに伝えない決断を下す舞子と、舞子を狙った姜子牙の暗器を九十九が受け止める所感動したよ。

→紙の書籍



→Kindle電子書籍

修羅の門 第弐門(1)
川原正敏
講談社
2013-06-28




第1位:浜弓場双『ハナヤマタ』

 今年一番何度も読み返し、隅々まで行き届いていてこれ凄い作品だな……と感嘆していた作品。

 アニメ版のこちらの感想記事に作品のエッセンスについては書いておりますが↓


『けいおん!』と『ハナヤマタ』で重ねられている演出とその意図について


 アニメ版で印象的だった「階段」「窓」などの「境界領域」の表現は、漫画原作の方でも意味がある形で描かれております(ただ「踏切」推しはアニメ版の演出。)。

 で、そういう背景も含めた画面作りに象徴性を持たせてテーマを表現したりしている技巧的な匠さとイイ、単純に絵が繊細で可愛すぎるだろという点とイイ、そういう世界観・物語を描きこんだ上でキャラクターが魅力的なのとイイ、僕的に一つの理想像的な漫画作品でありました。

 アニメ版の核心は「共同体」にまつわる部分だと感じていましたが、楽し気な雰囲気の中で「孤独」について扱ってる作品でもあります。第1巻第5話の、ついつい親しくなり始めた新しいお友達に実存的な内面を打ち明けてしまった……というシチェーションで描かれるハナの台詞が好き。


 コミックの中のヒーローもかっこいいしすごいって思うんデスけど
 みんなどこか孤独と戦っていて……
 私はそんなに強い人間じゃないから
 誰かと繋がっていたい…
 私の気持ちを分かってほしいって思っちゃうんデス…



 こういう、他人を求めるある種の人の弱さを否定しない作品。

 刊行時期からして企画は2011年以降と思われ、去年のプリキュア感想とかで書いていたけど、今は単体の孤高のヒーローが頑張るフェーズではない……という意識を感じます。

 そうして、それぞれに問題を抱えていた五人が集まっていって、唯一無二の「ハナヤマタ」の共同体になっていく。その時出現した"輝き"が世界を変える。

 今年出会ったベストオブベストの作品です。

→紙の書籍



→Kindle電子書籍(2014年12月28日現在第1巻半額セール中)



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 と、とりあえず2014年の漫画部門はこんな感じで。

2014年ランゲージダイアリー的ベスト、「アニメ部門」へ

●参考リンク:去年のベスト記事など↓

2013年ランゲージダイアリー的ベスト、「漫画部門」へ
2013年ランゲージダイアリー的ベスト、「アニメ部門」へ
2013年ランゲージダイアリー的ベスト、「小説部門」へ
ランゲージダイアリー的「2012年にふれた作品ベスト10」(この年はまとめの記事でした)
ランゲージダイアリー的2011年ベスト/アニメ編
ランゲージダイアリー的2011年ベスト/小説編