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 アニメ『SHIROBAKO(公式サイトニコニコチャンネル)』第22話「ノアは下着です。」の感想です。仙台にて地方遅れ視聴中。

 ネタバレ注意です。
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 「まだ夢や理想や輝きがあった若い頃」を、アニメ業界を目指したいと言い始めている堂本さんのお子さん、しずかが観ていたTVに映っている女子高生新人声優アイドル、若き日の平岡さんの描写などで重ねて描いていた一話。当然、全員が高校生時代に「ドーナツの誓い」を信じたあおい、絵麻、しずか、美沙、みどりの五人組のif。

 そんな理想を語れた昔の自分から、厳しい現実で大人になって摩耗した今の自分、というパート。平岡さんも切ないですが、声優志望だけどそろそろ年齢も重なってきたしずかの一人飲みのシーンも重い。ジャンクフードに缶ビール。しかもけっこうな本数を空けています。お酒を売って(居酒屋のバイトなので)お酒を買う、タコが自分の足を売ってタコ刺を買ってる的な、消費世界のサイクルに巻き込まれ、そこに創造性とかあるかというと厳しく、ただ自分の夢とか理想だけがすり減っていく。それこそ、現実に摩耗した平岡の言う「つじつまがあって出来さえすればイイ」というような、クオリティとか私にしかできない仕事とかそういうのではない、ただの歯車であるような感覚。人間個人の実存のためにシステムがあったはずなのに、いつの間にかシステムのつじつまを合わせるために人間が歯車になった社会さふぁっきん。絵麻やみどりがチャンスを掴んでる分、しずかのチャンスさえない苦しさが際立つ。以前平岡さんがみどりを糾弾する時に「チャンスすら貰えない人間の気持ち」に言及していたけど、ここで平岡さんとしずかを重ねてくるか。しずかが面と向かって絵麻やみどりには言わないであろうことを、平岡さんが言ってくれていた。

 そんな若き日の理想に燃えていた平岡さん(=五人組のif)を伏線通りタローが表彰して肯定するという展開。泣いたよ。承認欲求カッコ悪いとは言っても、誰かに認めてほしいことがある。そして、しずかにはそんな人がまだ現れない。

 あおい回、みどり回、美沙回に続いて、五人組のまとめ回、絵麻回でもありました。

 絵麻の課題は第1話冒頭や前日譚のコミックス版で描かれていたように、引っ込み思案で自分から積極的に自分の意志を示せない点と、絵の道に進みたいという夢を認めてくれない両親の問題だったのですね。そういう絵麻の物語も、様々な人たちとの関わりの中、最終回の作監の一部を一旦は躊躇するものの引き受けると自分の意志で掴みとる、両親との関係も結婚記念日に贈り物をできるまでになったと、今回で一区切り。絵麻から影響を受けている久乃木さんも、やはり自分の意志を見せる&親ポジションの絵麻から旅立ち始めると、絵麻と重なる課題を克服する様が描かれ、それは久乃木さん描写でありつつも重層的・間接的に絵麻の物語についても描いているというのもこの作品らしい感じ。

 さあ、残るはしずか回だという所で、ラスト二話かな。しかし、今話のずかちゃん一人飲みはアニメ史に残る名シーンの勢いじゃないだろうか。謎の癖になる感じといい、今の社会に生きてる多くの人達のやるせなさを、すごい染み入る感じで切り取っていたと思います。

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→前日譚コミックス、大変良かったです。ネタバレ感想はこちら。

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→前回:『SHIROBAKO』第21話「クオリティを人質にすんな」の感想へ
→次回:『SHIROBAKO』第23話「続・ちゃぶだい返し」の感想へ
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