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 アニメ『響け!ユーフォニアム(公式サイトニコニコチャンネル)』第三回「はじめてアンサンブル」の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 物語の背後に、「壊れてしまった過去の共同体」が何重層にも重ねられて描かれております。

 中学時代の大吉山北中学校吹奏楽部、久美子と姉の麻美子との姉妹共同体の二つは既に出ていましたが、今話にて高校時代編の北宇治高校吹奏楽部も二年生が少ないという事情があり、昨年共同体崩壊を起こしていたという事実が明らかとなります。


・大吉山北中学校吹奏楽部
・久美子と姉の麻美子
・去年の北宇治高校吹奏楽部


 何れも共同体崩壊を経験済み。

 中学の時の吹奏楽部は、冒頭の全国を本気で目指してた麗奈とダメ金でも十分だった久美子という断絶、去年の北宇治高校吹奏楽部は上昇志向で上を目指していた部員たちとそうではない部員たちとの断絶……と来てるので、久美子の姉の麻美子が家を出た理由も、何かしら上昇志向にのっとってという風に予想されます。

 このパートは、『けいおん!(!!)(感想)』アフター的な要素がある作品だろうとずっと書いておりますが、あの輝いていたはずの軽音部が本物の武道館目指す派と「この講堂が私達の武道館です」の精神で良い派に別れて分断され、共同体崩壊を起こしてしまったみたいで切ないです。『けいおん!!』最終回(感想)で描いた「ずっと一緒」っていうのは、やっぱりこの世界では無理だったんじゃないかみたいなパートで。

 なのだけど、その悲しい共同体崩壊のあり様が背後に描かれる中、それでも途切れない「縁」のようなものが描かれます。それが、久美子とユーフォニアムという楽器との縁だったり、久美子と麗奈という人と人との縁だったり、緑輝を通して繰り返される、「中々お目当ての楽器マスコットキャラ(コントラバス君と思われるけど)が引けない」(人と楽器との縁の成就について描いている)というパートだったりします。

 そして、「共同体崩壊」というバッドエンドはリフレインするのか? と思わされるように、今年の北宇治高校吹奏楽部も「上昇志向派」と「このままで良い派」に分断され共同体崩壊が起きそうになった所で、それを繋ぐように麗奈が藤棚でトランペットでドヴォルザーグの「新世界より」を吹き、それが「場」に響き渡る……というシーンが描かれる。

 麗奈の演奏だとすぐに分かる久美子というのは、久美子と麗奈の「途切れない縁」というシーンだし、ドヴォルザーグが新世界アメリカで故郷を想って作曲した曲……というくだりは、麗奈が上昇志向(それこそ新世界を目指すという志向性と重なる)のみじゃなくて、過去の大吉山北中学校吹奏楽部という共同体に望郷の念に通じる何か大事なものを感じているというのがそこはかとなく分かるシーンでもある。それは、家庭でも部活でも、「上昇志向のみだと共同体はバラバラになっていく」という力学に翻弄され、まだ自分のポジションが揺れている久美子にとっては、それでも確かな「縁」のようなものもあるのかもしれないという救いになってるシーンで。

 この描写だと、麗奈が吹奏楽の新進高じゃなくて北宇治高校に来たのにも、物語冒頭では印象的に全国大会に行けなかったことに涙するというシーンが描かれながらも、そういう上昇志向のみには振り切りきれないという彼女のキャラクター性を反映する何かがあるのかもしれないですね。

 緑輝の何度引いても中々お目当てのマスコットは出ないパートといい、「縁」を続行するのは根気が必要で、基本めんどうくさいことだってことも描いてる作品なのだと思うのですね。古い楽器は捨てて楽し気な新商品に手を出す。家族なんてめんどうだから捨てて上京して一人暮らしする。昔の人間関係なんてやっかいだから、もう関わらない。故郷なんて古びたと感じたら捨てて、新世界で、富が集まる場所とかで暮らそう。そういう風に生きていった方が、楽です。

 だけど、この作品では、それだけじゃない何かがあるはずだと描いている。麗奈が藤棚でトランペットを演奏するシーンは凄い領域を表現していましたね。そんな、『けいおん!(!!)』で信じたいと思った共同体なんて、壊れていってしまう世界で、それでも進歩を求めて前進していくだけよりは、「新世界より」の望郷の念に、めんどうかもしれないけれど途切れなかった久美子と麗奈の縁に、久美子と麻美子との縁に、そちらの方に、今の時代にあえて焦点を当ててみる。

 かくして、上昇志向派も、このまま派も両方いる世界で、我々は何とか調和を模索して生きていく。それは音楽を通した「分断」の「縫合」の過程でもあって……。『京都アニメーション』作品は毎作品テーマ性の部分も更新してくるのが凄いのです。

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響け!ユーフォニアム 1 [Blu-ray]
黒沢ともよ
ポニーキャニオン
2015-06-17


→原作小説



→前回:『響け!ユーフォニアム』第二回「よろしくユーフォニアム」の感想へ
→次回:『響け!ユーフォニアム』第四回「うたうよソルフェージュ」の感想へ
『響け!ユーフォニアム』感想の目次へ

【関連リンク:これまでの当ブログの京都アニメーション作品感想】

『涼宮ハルヒの憂鬱』最終回の感想はこちら
『けいおん!!』最終回の感想はこちら
『氷果』最終回の感想はこちら
『Free!』(第一期)最終回の感想はこちら

『中二病でも恋がしたい!』(第一期)最終回の感想はこちら
『境界の彼方』最終回の感想はこちら
『甘城ブリリアントパーク』第12話の感想はこちら

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