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 アニメ『響け!ユーフォニアム(公式サイトニコニコチャンネル)』第四回「うたうよソルフェージュ」の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 物語の背後にある、悔いを残して壊れてしまった「過去の共同体」という要素。ざっとだけでも、


・大吉山北中学校吹奏楽部
・久美子と姉の麻美子
・去年の北宇治高校吹奏楽部


 の三つが、「繋がりが分断されてしまった」という意味でバッドエンドで壊れてしまっています。

 そして、どの共同体崩壊にも、「上昇志向で競争を勝ち抜いて上を目指すか」「それだけじゃなく『けいおん!(!!)(感想)』的に言うなら勝ち抜かずとも「今、ここ」に一回性の輝きはあるという「この講堂が私達の武道館です」の精神で良いか」。この、このままだと相反する二つの志向性の元で、バラバラになっていってしまっています。今話でも、久美子の姉の麻美子が吹奏楽を辞めたのは受験がきっかけということが明らかになったりします。受験=競争……を優先されて、姉妹の繋がりの象徴だった吹奏楽も棄却され、やがて姉は家を出ていき……という所に、久美子は何らかの思う所があるのですね。

 その心情が、久美子の麗奈への気持ちにも反映されているという描き方だと思います。本気で全国を目指していた(競争を勝ち抜いて上を目指す)麗奈との縁が切れてしまう……というのは、久美子からすると「またか」なわけなのですね。だけど、姉の時のバッドエンドは繰り返されず、何故だか麗奈と久美子の縁は切れず、麗奈も久美子も吹奏楽を続けている……というのがこの作品の出だし。

 その流れの中で、今話では、もう一つの「過去の共同体崩壊のバッドエンド」である、「去年の北宇治高校吹奏楽部」の崩壊劇が、やはり今年も繰り返されてしまうのか? という物語のけん引力で引っ張って、いや、今年はバッドエンドは繰り返されない。共同体は少し違うカタチで、次に進む……という萌芽が描かれていた回でした。

 描き方が丁寧で、まず、久美子が悔いを残していた中学時代ラストの久美子と麗奈の会話。これが、一歩踏み出して本心を伝えるか? 謝ることができるか? という点で、リフレインされそうになるんだけど、まずずっと謝れなかった久美子と違って、麗奈はちゃんとすぐに謝ったという点。そんなルートブレイクする麗奈から伝播して、久美子もこのままじゃまた後悔すると、思いのたけを麗奈に伝える。そういうシーンが描かれます。久美子が麗奈に伝えたことは、ざっと簡略すると「好きだ!」ということなので、ここは何か熱いですね(笑)。人と人との関係、人と楽器との関係が、一種のエンゲージ(婚約)に比喩されてると感じる作品なので、このシーンは、「告白」の段階ですね。

 ここで、中学時代ラストとは違って、久美子が「一歩勇気を出して伝える」ということを獲得するので、そこから、久美子が中川先輩に「一緒に合わせませんか?」と伝えるシーンに繋がっていきます。麗奈が「上を目指す派」よりだとすると、中川先輩は「このままで良い派」よりで、久美子はちょうど仲介者、架け橋みたいなポジションです。

 去年の北宇治高校吹奏楽部は、ここの架け橋、リンクが繋がらずに、上昇志向派とこのままで良い派に分裂して共同体崩壊を起こしたわけなのですが、今年は、そのバッドエンドを繰り返さない。そのために、麗奈―久美子ラインの縁が意味を持っている、という描き方なのですね。

 この、麗奈―久美子ラインの縁の「継続性」みたいなものが、共同体崩壊というバッドエンドが繰り返されるのをブレイクしていくという物語構造の中、もう一つ「継続性」みたいなものは描かれていて、それが後藤先輩とチューバの縁ですね。中学一年から「好き」だから続けているという、麗奈―久美子ラインの中学時代からの継続性の縁、久美子と吹奏楽、ユーフォニアムという楽器との「継続性」の縁を、それはやっぱり大事なものなんじゃないかって、後藤先輩がそこはかとなく間接的に応援してくれてるシーンです。久美子の嬉しそうな表情が良いですね。この「好き」だから続ける、延々続行という要素。出だしとしては『けいおん!(!!)』だけではダメだという要素から入ってる感じの作品なのですが、奥の方ではやっぱり、それでも『けいおん!(!!)』イズムはまだ意義を持っていて、バッドエンドを繰り返すのを回避するのに、一役買ってくれるよと仕込んでる作品だとも思うのですね。

 今話のラストシーンは、このまま派よりだった中川先輩と、久美子が目を合わせるシーンで、去年の崩壊したバッドエンド北宇治高校吹奏楽部とは違って、今年の北宇治高校吹奏楽部は上昇志向派とそのままで良い派が「分断」されずに「縫合」されていくよ……という示唆を描きつつ、一方で葵の表情を映すことで、まだまだ根強い「競争と上昇志向の元、共同体はバラバラになっていく」問題が沈殿し続けていることを描いてもいると。

 葵も、塾通いしている伏線が入っていて、受験勉強っていう「競争」の力学の元に共同体崩壊を起こすフラグだと思うのですね。で、それは過去の久美子の姉の麻美子が受験をきっかけで吹奏楽とも久美子とも離れていったプレストーリーと重なる展開なので、果たして、今回は久美子は葵との分断(麻美子との分断と重なる。葵も麻美子も、そこまで吹奏楽や自分の楽器に縁や継続性を見出していなかった描写が重なるように入っている)という展開を乗り越えられるのか? やはり繰り返されるのか? 何か別解があるのか? というストーリーになっていくと。

 出だしは『けいおん!(!!)』のカウンターっぽく入りつつ、逆に「輝いた」共同体や縁っていう『けいおん!(!!)』で大切なものだと描いたものを、この厳しい競争世界でどう守っていくか? って感じの物語という印象です。

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響け!ユーフォニアム 1 [Blu-ray]
黒沢ともよ
ポニーキャニオン
2015-06-17


→原作小説



→前回:『響け!ユーフォニアム』第三回「はじめてアンサンブル」の感想へ
→次回:『響け!ユーフォニアム』第五回「ただいまフェスティバル」の感想へ
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【関連リンク:これまでの当ブログの京都アニメーション作品感想】

『涼宮ハルヒの憂鬱』最終回の感想はこちら
『けいおん!!』最終回の感想はこちら
『氷果』最終回の感想はこちら
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