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 アニメ『無彩限のファントム・ワールド(公式サイトニコニコチャンネル)』第1話「ファントムの世界」の感想です。

 ネタバレ注意です。
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 ゼロ年代アニメーション、というか(特に海外からの認知などで)日本アニメーションの金字塔となっている『ハルヒ』を本歌にして、「その次」を描くというような作品が多く、文脈・コンテクスト込みで楽しめるようになってきている最近の京都アニメーション作品。

 一見本作と似た異能バトルものに見える『境界の彼方』が既にハルヒ文脈、特に『涼宮ハルヒの消失』の「次」という要素が強かったのですが。↓


参考記事:『涼宮ハルヒの消失』と『境界の彼方』との関係について(『境界の彼方』第8話〜第11話感想)


 その『境界の彼方』と、「現実と虚構の境界」ネタを扱ってるのは同じ。されどさらに、そこに同じく『ハルヒ』文脈を土台にもう一歩先へという気概をフライングで感じたりもした第1話でありました。こちらのプレ記事で書いた通り、スタッフから何気ない所まで、『ハルヒ』文脈を意識してるのはやっぱり感じる所だったりで。↓


参考記事:『無彩限のファントム・ワールド』はハルヒの系譜?


 も、もう、オープニングの最初でモノクロのモザイクで進展していく→英語のタイトルコールと共にモザイクが色とりどりに……の所で、アニメ『ハルヒ』(時系列上)第一話のキョンがハルヒと出会った所でモノクロの世界に色が付く演出のリフレイン(というか本歌にした演出というか)きたーっ! って、既に涙しそうでしたよ。

 ファントム。というかつての我々の虚構。幽霊や妖怪、魔物が認識されるようになり、異能力者が目覚め始めている本作の世界は、ちょうど『ハルヒ』でハルヒが序盤で望んだ非日常的世界であり、『ハルヒ』冒頭ではキョンが「現実ではそんなものはない」と諦観していた世界です。ここまでで既に、本作での「十数年前」の出来事が、『ハルヒ』における「七年前」の出来事と重ねて描かれており(「十数年前」がリアルの『ハルヒ』という作品発表時期とシンクロするのも偶然ではなさそう。京都アニメーションはそれくらいやる……。)、となると、本作では十数年前に阿頼耶識社を爆破したテロの犯人こそが、=ifハルヒのキャラクターとして配置されているのだろうなと。これは、『境界の彼方』もそういう構図があるのだけど、本作が『ハルヒ』に立ち向かう的な展開、来るのだろうか。

 その上で、『境界の彼方』でも様々な「色」が「様々な存在が世界には存在してよい」というテーマにかかっていましたけれど(エンディング・作中要所での演出や、サブタイトルがマイナーな色の名称になってるなど)、そういった「色」=それぞれに多様な存在……という比喩は『境界の彼方』から継いでいる模様。何しろ作品タイトルに「無彩限」がついてますしね。

 その上で、各「色」、各々の存在が各々の本懐(自分が本当に望んでいること、他の誰のものでもない自分自身の生まれてきた意味みたいなもの)を持っている。もう、『甘城ブリリアントパーク』とか、そういった各存在の本懐が何らかの形で発揮できなくて、それを何とか遂げられるようにするには……というストーリーも最近の京都アニメーション作品では多いのですが、既に第1話で、「食べる」という玲奈の本懐に晴彦が付き合う、電柱付喪神の、「リンボーダンスで祭ってほしい」という本懐に、舞、晴彦、玲奈の三人が付き合う……という、相手の本懐を尊重する。力押しするんじゃなくて、相手の本懐に付き合う……というのが二か所描かれていると思います。「玲奈の勧誘」と「電柱付喪神の供養」という第1話の二つのミッション、どちらも力押しでいこうとした一回目は失敗してるんですね。食事に付き合う、リンボーダンスに付き合う、という相手の本懐に付き合う方を選んだ二回目でミッションに成功している。

 この、今話冒頭の「錯覚」に関する衒学とか、公式サイトで公開されてるこちらの記事とか。↓


錯覚の研究をされている明治大学の杉原厚吉教授(工学博士)と石原立也監督が、放送開始記念スペシャル対談を実施(公式サイト)


 そういう(元?)虚構存在の本懐とか、主観側が誤認知している錯覚でしかないかもしれなくて、別に電柱付喪神、本当にリンボーダンスしてほしいのかよく分からないっていうのが、けっこうエッセンスにして、笑いの方面でも面白かったです。よく分からないけど付き合ってリンボーダンスしてあげるの優しいよ。一応、キリスト教でリンボーはこの世と天国の狭間のことだって解説入ってるし、「ロープを超える」という比喩も「境界を気にしない」という意味で作品テーマに繋がってるし、真面目なパートともとれるんだけど、リンボーダンスは、なんでそれをリンボーダンスで、おっぱいがひっかかりそうになるのがラストの課題という絵で表現しようと思ったんだよ! というところが面白い。

 境界気にしない、各々の本懐を尊重するネタの作品で、メインヒロインのキャストが上坂すみれさんなのはもう完璧ですね。まさに、『革命的ブロードウェイ主義者同盟(Twitter)』のメッセージと方向性が合致する感じです。

 他、ヒロインの名前が「舞」なのは(しかも先輩)、京都アニメ―ションつながり的には、『Kanon』の川澄舞からでは? とか(舞ルートも、主観側からの虚構認識ネタ。本作オープニングの幼舞(と思われる)カットも、KanonOPの舞っぽくなってない?)、相変わらず凝縮されてる情報量も多い第1話でした。

 主観からの錯覚ネタはなー。ハルヒ文脈的には、いやいや真実に目覚めろよの方にはいかなそうな気が既にしますかね。『中二病でも恋がしたい!』で、主観の中二世界を否定しなかったように、あの頃ハルヒが抱いた非日常的世界は錯覚だったのかもしれないけれど、それを尊重するよ、という方にまずは歩み始めた物語と感じます。

 己の色、本懐、願ったイメージ。そんなのは錯覚だよ、とマジレスするよりも、錯覚かもしれないけど、尊重するよ。リンボーダンス付き合うよ。そんなのがカッコ良かった気がする第1話。

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→主題歌



→前回:『無彩限のファントム・ワールド』はハルヒの系譜?へ
→次回:『無彩限のファントム・ワールド』第2話「迷惑UFOをやっつけろ!」の感想へ
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