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 アニメ『無彩限のファントム・ワールド(公式サイトニコニコチャンネル)』第4話「模造家族」の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 作中で描かれる衒学要素、第2話がソシュール(言語)、第3話がユング(記憶@というか集合的無意識)ときて、第4話がレヴィ・ストロース(家族@構造主義)。

 こういう要素は、送り手も何となくカッコいい要素として視聴者に伝われば十分くらいに使ってるとは思うのですが、ちゃんとガチで解釈しても各話のテーマと繋がる辺りが良いところ。これは、作品の方向性として、どこかでハイデガーはくるんじゃないだろうか。「世界とは何か?」的なネタの作品なので、『存在と時間』がくる可能性は十分あり得る気がします。

 今話に関しては、京都アニメーション文脈的に、『涼宮ハルヒの消失』をショートバージョンとしてこの一話でやってみたという印象です。

 自分の願望を反映した都合の良い世界を生成して(『消失』では生成主は長門、今話では生成主は玲奈)、そこから決断、特に仲間との縁を頼りに今の世界に戻ってくるまでのエピソード。

 なのだけど、『消失』が「決断で切り捨てられる側の切なさ」にスポットが当たっていたのに対して、今話は、玲奈は世界を選択はするんだけど、ファントムが作っていた世界の方も、別に消滅しない(切り捨ててない)でどこかで存在してるみたいなまとめになってるのが、少しテーマが進んでいる箇所と感じます。

 前回(第3話)の「オリジナルとコピーの合体技」も象徴だと思うのですが、総じて、ここまで「本物も偽物も両義だ」ということを扱っている作品と感じます。今回も、玲奈は本当の家族に回帰したというよりは、本物の家族と模造家族が、「両方アリ」だよ、という方向でまとまってるエピソードと感じました。「姉」に関しても、本当の姉ではなく、模造姉に位置する舞がいる場所が、玲奈にとっての現在の(真実性がある意味での)「居場所」になるというまとめ方です。

 というわけで、第一話冒頭の「ルビンの壺」のごとく、ファントム世界と現実世界は同じ場所に存在していて、両義の見え方の違い……的なネタに進んでいくのではなかろーか。その上で、そういう「構造」に還元され切らない(上記の学者、構造主義が多めです。ユングをカウントするかは分かれると思いますが)、「実存」をあぶりだして、本物とか偽物とか関係ない自分自身の光に回帰、最近の京都アニメーション作品的には、各々の本懐とか、その人の本質、そういうものの大事さのテーマに関してアップデートしてくれたら嬉しいなぁなんて思ったりなのでした。

 ちなみに、実存主義と構造主義に関しては、イントロダクションとしては、この辺りの本がお勧めです〜@電子書籍版。↓

実存と構造 (集英社新書)
三田誠広
集英社
2015-07-03


→Blu-ray

無彩限のファントム・ワールド 1 [Blu-ray]
下野紘
ポニーキャニオン
2016-04-06


→前回:『無彩限のファントム・ワールド』第3話「記憶コピペ作戦」の感想へ
→次回:『無彩限のファントム・ワールド』第5話「特異能力が使えない!」の感想へ
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