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ネタバレ注意です。
またもや「錯覚」ネタ。本物も偽物も主観側からの見え方次第ネタ。第一話冒頭の「ルビンの壺」がどちらに見えるか? のごとく。
小糸さんが能力に目覚めるきっかけになったファントム(本物)と、今話のファントム(偽物)は似てるけど違う存在でした。なのだけど、小糸さん側、主観側で本物だと思っちゃって色々背負ってしまったというようなお話。
これまでのエピソードだと、第3話「記憶コピペ作戦」(感想)の舞のコピー(偽物)になる晴彦、第4話「模造家族」(感想)の玲奈の模造家族(偽物)になるファントムの家族と、どちらかというと「偽物」でも「本物」と錯覚することで浮かび上がる良い面側にスポットがあたってきてた印象なのですが、今話は小糸さんが実質負担を感じてしまっているので、逆の側面もあるというお話だった印象です。錯覚、「偽物が真実性を持ってしまう」というこれまでの流れでしたが、真実性がある、つまり実際に主観側に影響をもたらしてしまうので、ネガティブに影響してしまったらネガティブに立ち振る舞ってしまうことにもなるというような。偽物に振り回されてしまった小糸さんと、ファントムという偽物的なものに振り回されている作中世界がシンクロしていると。アニメーションという虚構的(偽物的)なものに一喜一憂してる視聴者ともシンクロすると(笑)。
それはそうと、どうにも京都アニメーション作品群の『ハルヒ』文脈があると思われる本作。第二話で小糸さんを「特別」と形容する箇所がありましたし、周囲と距離を取ってるのは初期(「憂鬱」が色濃い頃)のハルヒと同じです。小糸さん=擬似ハルヒ的な表現も含まれていた一話だったんじゃないかなと。教室での席の位置もハルヒと同じですしね。
ハルヒの場合、非日常を望んでも叶わなくて孤立を選んでいる、小糸さんの場合、本当に非日常的能力に目覚めちゃって孤立を選んでいると、逆なのですが、総じて孤立・孤独をどうするのかという物語なのは同じです。
ここで、『ハルヒ』だとラストでキョンからの白雪姫のキスでハルヒは救われるのですが、その後積み重なる京都アニメーション文脈では、この特定の王子様ポジション(キョン)からの承認で自己重要感を回復する……というシンプルな話からは、色々と物語を進めていたりします。
今話だと、今話でも、小糸さん(初期ハルヒ的孤立者)の救済には晴彦(キョン的なポジション)が走り出す必要があるわけですが(「特異能力を失う」展開と「『ハルヒ』的な『特別』を失う」意味合いがたぶんかかってる)、ここで、「キョンは一人しか選べない問題」が生じます。『涼宮ハルヒの消失』で、消失長門を選ぶか、ハルヒを選ぶかみたいな話で、救えるのは一人だけ。
なのだけど、ここから、選ばれなかった『消失』長門だって存在してイイんだという『境界の彼方』や↓
●参考:『涼宮ハルヒの消失』と『境界の彼方』との関係について(『境界の彼方』第8話〜第11話感想)
ハルヒ的な「特別」に至れない、野球場の残り四万九千九百九十九人だって大切な存在だったんだ! という『甘城ブリリアントパーク』や↓
●参考:甘城ブリリアントパーク/感想/第12話「未来は誰にも分からない!」(ネタバレ注意)
ハルヒ的な「特別」に至れなかった人間なりの、選ばれなかった人間なりの「特別」もある、という『響け!ユーフォニアム』など↓
●参考:響け!ユーフォニアム最終回の感想〜ポニーテールと三人のハルヒ(ネタバレ注意)
を経て、今話。
晴彦が小糸さんのもとへ走って行っている間、小糸さんを「選んで」いる間、舞のチームには久留美ちゃんが晴彦のバックアップとしてすぐに入ってるのですね。第3話「記憶コピペ作戦」(感想)でも、舞がピンチになったらすぐにコピー(代役)である晴彦が入れるというのがおそらくポジティブなニュアンスで描かれていたと思いましたが、その流れで、ここでもバックアップ、代役のポジティブさが描かれていると思いました。
物語後半のキーの予感もしますが、舞をアイデンティファイしてるのは何らかの意味で晴彦的な流れなので、晴彦が小糸さんを選んで走って行ってしまうと、舞さんが危うくなるわけです。だけど、そこには代役、バックアップがポジティブな意味ですぐに入れる。そういう方向性を模索してる印象です。『甘城ブリリアントパーク』なら、西也のバックアップ(代替)ポジションとしてのいすず、『響け!ユーフォニアム』なら選ばれなかったけれど、いざとなったら久美子のバックアップとして入れるとも捉えられる夏紀先輩。そのポジションが、久留美ちゃんです。
で、私、ちゃんとバックアップ(代役)やれるのかなぁ、みたいな引きで久留美ちゃんメインらしい次回へ。
もう、久留美ちゃんにはいすずさんや夏紀先輩の意義をかけて、そういう存在、ポジションの人も大事なんだっていう物語を見せて欲しいなぁなどと思っております。
→『境界の彼方』もBlu-rayBOXでそろそろ発売
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→前回:『無彩限のファントム・ワールド』第4話「模造家族」の感想へ
→次回:『無彩限のファントム・ワールド』第6話「久留美とぬいぐるみ王国」の感想へ
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【関連リンク1:当ブログの2015年アニメーション作品ベスト10記事】
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