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 アニメ『無彩限のファントム・ワールド(公式サイトニコニコチャンネル)』第6話「久留美とぬいぐるみ王国」の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 赤ちゃんの毛布、久留美におけるアルブレヒト。

 マジレスするとただの「物質」でしかないのですが、そこに各々の主観が見出してる錯覚的なもの、虚構的なもの、本作的にはファントム的なもの、そういうものにも意義はあるんじゃないか。……という本作のこれまでの流れを汲みつつ改めてエッセンスとして描いていたと感じる一話でありました。

 舞の手伝いをするにあたってのプレッシャーを、久留美が精神的にどうするか。その課題にあたって、アルブレヒト的なもの、ぬいぐるみ王国的なもの、つまり虚構的・ファントム的なものが力になってくれるという流れなのですね。昔ずっと一緒にいてくれたアルブレヒト(虚構)を、今度は私が守ろうと思えるから、一歩踏み出せる。

 作中で久留美がプレッシャーに感じていたのは、幼少期に同年代のお友達に話しかけること&現在の舞の手伝いをすること……ですが、総じて対人関係です。加えて、学校にも行きたくないなぁみたいな心情も入っていて、このプレッシャーは「現実の厳しさ・煩わしさ」だよなと。リアル視聴者向けには、面倒だけど向き合わないといけないと分かってる人と向き合うこととか、仕事行くとか(笑)、そういうリアル課題に対して、虚構、もう直接的には幼少時から寄り添ってくれていたアルブレヒト的存在、アニメーションってことだと思うのですが、そういうのが立ち向かうきっかけになってくれるみたいな話なのかなと。アルブレヒト的な存在が傷つけられてしまうというのは、我々としては譲れない一線なのです。

 幼少期に信じた虚構(非日常的・アルブレヒト的事柄)が現実の前で敗れ去りかけ、だけど現実の日常と虚構も込みで再契約するのが『ハルヒ』の大まかなお話なので、ちゃんとハルヒになっている(参考:『無彩限のファントム・ワールド』はハルヒの系譜?)。『ハルヒ』、最後に「日常」に戻ってくるんだけど、長門的なもの(非日常的存在)を排したわけではないのですよね。ラストの戻りたいと願った場所というのは。

 第1話の感想で、阿頼耶識社のテロの犯人こそがハルヒ的なポジションだと書きましたが、これまでも厳しい現実の侵攻の前に、虚構的な存在に救われる話が多いので、やっぱり犯人=そのままだと無機的な現実に飲み込まれる世界が許せなかった存在=ハルヒなのだろうと。

 厳しい現実。上手くいってない家族関係(玲奈)、学校とか対人関係とか(久留美)、そういう場所から救ってくれたのが模造家族であったりアルブレヒトだったりの虚構的存在なので、現実に虚構を開放したハルヒの意義を問う作品なのですよね。ちょうどリアルでも『ハルヒ』から十年とか経ってるわけですし(当時幼少期だった視聴者が大人になって現実に遭遇する頃)。

 『ハルヒ』で戻りたいと願った場所に含めた非日常的存在。そういう、虚構、作中ならファントム、リアルならアニメーションのようなもの。そういうのに守られてきたし、今度は守るよ(だからアルブレヒトだけに戦わせてるだけじゃなくて、久留美自身も戦うという展開になる。好きな物は好き。嫌いなもの(本懐とは異なる結婚)は嫌いと言うために。)、という文脈を見てしまいます。

 本当、舞のキャストが上坂すみれさんなのはキャスティング最高ですね。『中二病でも恋がしたい!(感想)』で凸森(中二病という虚構的主観世界の信奉者)を演じ、リアルでは中野ブロードウェイ的なもの(これも虚構的なもの、と便宜的に言ってしまうけど)を大事にしようと「革命的ブロードウェイ主義者同盟(Twitter)」やってる上坂さんは本当ふさわしい。生産! 団結! 反抑圧!

 今話とか、対人関係も学校や会社行くのもぶっちゃけしんどいけど、幼少期に力をくれた中野ブロードウェイ的なものは守りたいから、上坂さんから力は貰いつつ、現実も頑張るよ、むしろ上坂さんを守れる自分になるよみたいな話でしょ(え)。大人になる過程で遭遇する現実は、アルブレヒト的なものは捨てなさい、それただの物質だからと突きつけてくる。そういう連中に言ってやりたい。俺にとっては、私にとっては大事な存在なんだと。ゴールデンベアハンドで殴ってやりたい。ラストシーンは、舞(上坂さん)と並んで戦線に参戦する久留美&アルブレヒト。憧れてるだけじゃない。守られてるだけじゃない。カッコいい。

 ……と、そんな何重奏にもなってる流れが、おそらく劇中縦軸のストーリーでも、虚構的なあの人を守るよという方にカチっと終盤ハマっていきそうなので楽しみです。

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→前回:『無彩限のファントム・ワールド』第5話「特異能力が使えない!」の感想へ
→次回:『無彩限のファントム・ワールド』第7話「シュレーディンガーの猫屋敷」の感想へ
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