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 アニメ『無彩限のファントム・ワールド(公式サイトニコニコチャンネル)』第8話「猿温泉を突破せよ!」の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 いつもおバカ要素を忘れない愛しい『無彩限のファントム・ワールド』ですが、そんな中でも『境界の彼方』でいう第6話「ショッキングピンク」みたいな、あんまり本筋のテーマとかストーリーとは関係ない息抜きおバカ回をやってみると、こんな惨状(え)になるという徳の高い一話。国内最高峰の作画リソースで、えろく、たのしく! 小糸さんが可愛かった。

 なのだけど、お猿ファントムさんの奥さんの、いわば「代わり」として女性キャラが誘惑していく展開で、ラストはギャグっぽくも、晴彦が逃げた奥さんの「代わり」にお猿ファントムさんの伴侶になると、一応「代役でもいいんじゃ?」ネタの一話にはなっていたりも。

 結婚って、ダイレクトに「他に代わりはいないあなた」ネタだと思うのですよ。普通は。

 なのだけど、『無彩限のファントム・ワールド』は、舞の記憶をコピーして舞の代役になる晴彦(第3話「記憶コピペ作戦」)、現実の辛い家族の代わりに玲奈の拠り所になる模造家族(第4話「模造家族」)、そして晴彦が小糸さんの元に行っている間、久留美が晴彦の代役になる展開(第5話「特異能力が使えない!」)。そういう「代わり」をこれまでわりとポジティブに描いてきました。

 そういう、「代役」にも意義がある。ある意味「代役」がいるからいいじゃん的世界観なので、今話ラストも、奥さんじゃないし、女じゃないし、ファントムじゃないし、でも、晴彦が「代役」でイイかー的な終わり方なのかなと。

 なのだけどなのだけど、そっちの「代わりでイイ」にテーマの軸が揺れるほど、もう一度、「他でもない、代わりのいないあなた」が浮き彫りになってくる構造になってる作品でもある。玲奈(晴彦よりも優れた封印能力がある)が加入した時の舞の(冗談めかしたシーンだとしても)もう晴彦はいらないんじゃないかという発言。今話の、お尻にアートするの、晴彦じゃなくてもよかったんじゃないの発言。これが積み重なれば積み重なるほど、逆説的に、舞にとっては晴彦が「他でもない、代わりのいないあなた」だという布石なのだろうと。

 今話で、舞をお猿ファントムの奥さんの代役にあてがうような作戦を立てる晴彦に対して舞がちょっとだけ見せるスネたような表情は、「私がお猿ファントムの奥さんの代役になってもイイのね?」的なスネ方。物語の大まかな流れが、「代わりでイイ」に進むほど、もう一度舞と晴彦の「代わりのいないあなた」の関係が浮かび上がる仕組みになっている。という何たるdeconstructionアニメ。

 そこまで揺さぶった上で、もう一度『ハルヒ』ラストの、キョンにとってのハルヒ、ただのクラスメイト(他に代わりがいる)じゃない、「他でもない、代わりのいないあなた」という関係。『甘城ブリリアントパーク』ラストの、(ハルヒ以外の)残り49999人にもあったはずのかけがえのない「代替不可能性」、そういうものの意義と再契約するような物語なのだと思うのでした。

参考:甘城ブリリアントパーク/感想/第11話「これでもう心配ない!」(ネタバレ注意)

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→前回:『無彩限のファントム・ワールド』第7話「シュレーディンガーの猫屋敷」の感想へ
→次回:『無彩限のファントム・ワールド』第9話「幕末ファントム異聞」の感想へ
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