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 アニメ『無彩限のファントム・ワールド(公式サイトニコニコチャンネル)』第10話「小さいルルの大きな夢」の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 魔法使いさん(何者!?)が「願い事」を叶えてくれるお話なのですが、ずっとこの感想ではこの作品はハルヒ文脈だハルヒ文脈だと言ってますが、「願い事」もハルヒワードです。今回は比較的小さい「願い事」ですが、世界がどうこうという大きい「願い事」が、『ハルヒ』にてハルヒが「三年前の七夕」に何を願ったのか?(『ハルヒ』の核心)もかけながら、この作品でも今後展開されていきそう。

 ファントム(非日常的存在)であるルルが願ったのは、「ラムネを飲むこと」で、ここには、非日常的存在(ファントム)が、「日常」を願った、という構図があります。↓


参考:『けいおん!(!!)』シリーズ構成の吉田玲子さん脚本による「バッドエンドけいおん!」を浄化する物語〜無彩限のファントム・ワールド第7話の感想(ネタバレ注意)


 の話なんかも踏まえると、そのままでは『けいおん!(!!)』に入れないルルが、『けいおん!(!!)』を願った、的な展開でしょうか。


 「晴彦と並んで歩くって、こんな感じなんだ」(ルル)


 は、「日常」の中でルルも晴彦と同格になれたっていうシーンでしみじみしますね。仮に『けいおん!(!!)』で、五人組の中で一人だけ非日常的存在で悩んでたりしたら、その子も「日常」に並びたいって願いますよね。それが、一応は成就した展開。

 「花火」もキーに使われてる一話で、つまりは『けいおん!』第4話「合宿!」で澪が花火をバックにエアギターする唯(「日常」の中の一幕)に「輝き」を見つける瞬間が連想されるわけで、「みんなで『花火』=日常」という文脈が京都アニメーション作品にはあります(何気ない今、近しい人たちの大事さに気づく=「花火」というのは、『境界の彼方』第5話「萌黄の灯」でも使われていたりします。)。

 そういう、『けいおん!(!!)』的な時間にルルは一度は辿り着くのですけど、その時間(日常)が、花火ファントムのせいで壊されそうになる。ゆえに、ルルはその「日常」を守るため、自分が「日常」に所属することを捨てて、再び「非日常」の存在に戻る、という物語です。「日常」の維持には、何らかの頑張りとかコストとかかかってるという、近年の京都アニメーションで描いてるストーリーど真ん中ですね。

 そして、己の本懐・願い事に関するエピソードでもあります。今話だと、ルルは「ラムネをお腹いっぱい飲みたい」、花火玉ファントムは「一花咲かせたい」という己の本懐を抱いてしまうのですが、これは、第1話の電柱付喪神の「リンボーダンスしてほしい」とか、第9話の亜弓先輩の「演劇部でみんなでがんばって地区予選突破の栄光を」とか、そういうのと同種の「世間的には評価されないんだけど、自分自身は本当にやりたいという、自分という存在の本懐」です。

 で、そういう本懐に晴彦たちが寄り添う……という物語を本作ではずっと描いてきたのですが、今回は、花火玉付喪神のその本懐に、ルルが、


 「あんたの気持ち、分かるよ」(ルル)


 と寄り添うのですね。それによって、花火玉付喪神の気持ちを浄化している。

 このパートがないと、花火に象徴される「日常」の中で、花火玉付喪神だけは、自分の本懐を抑圧しなくてはならない、ということになってしまいます。

 「日常」の維持のために、誰かが自分の本心を抑圧している、という構図は、丁稚さんの『たまこまーけっと』感想とか読んでる人は、↓


『たまこまーけっと』を振り返る/ねざめ堂


 商店街の「日常」を維持するために、自分自身のメインストーリー(亡くなったお母さんへの気持ちなど)は引っ込めている、『たまこまーけっと』のたまこを連想するかもしれません。

 本当は、お母さんのこと叫びたい。でも、たまこがそれを口にしないことで、商店街の「日常」は成立している。

 ゆえに、本当は自分の本懐主張したいんだけど、花火玉ファントムさんがソレを抑えてることで花火的(に象徴される)「日常」が成立していた今話。ルルが、そのままでは一人犠牲になるような花火玉ファントムに寄り添ってあげるという展開は、『たまこまーけっと』において、誰かがたまこの気持ちにも寄り添ってくれていて、かつ『けいおん!(!!)』的「日常」も守った、という一話と捉えられるかもしれません。

 「日常」を守るため、同時に、「日常」を成立させるために犠牲になる存在(花火玉ファントムさん)を守るため、ルルが飛んでいく所はカッコよかったですよ。

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→前回:『無彩限のファントム・ワールド』第9話「幕末ファントム異聞」の感想へ
→次回:『無彩限のファントム・ワールド』第11話「ちびっ子晴彦くん」の感想へ
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