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ネタバレ注意です。
「非日常」側のラスボス(エニグマさん)に「日常」側が冒涜されるラスト2。
前回、晴彦と舞の「母親」に関するくだりは『たまこまーけっと』的な「日常」(たまこが、商店街の「日常」を守るために自分が亡くした母親のことは語らないという構造がある作品)を意識してるのだろうと書きましたが、まんま、「晴彦と母」という家族の「日常」の風景が描かれます。
そんな母がいる風景は、あるいは『たまこまーけっと』でたまこが叶うなら持続したかったかもしれない、理想的な「日常」の風景ですが、それが嘘だった!(母は偽物=エニグマ)と破綻させられてしまう展開。「日常」の土台は脆く、急に崩れるということを改めてやっていると思います。
また、正体としてはファントム側、「非日常的」存在なのですが、「いるのが当たり前で、普段はうざったいぐらいの存在」という意味で、京都アニメーション文脈的には「日常」的存在だったルルも失われてしまいます。いるのが当たり前だった存在は、急におかしくなってしまう。「日常」は脆い。
そして、晴彦は「非日常」的能力をエニグマに奪われ、ただの「日常」の人に。あらゆる意味で、京都アニメーションがそれでも意味があるはずだと描いてきた「日常」が絶体絶命になるという、京都アニメーション作品をずっと追ってる人としては盛り上がる展開です。今話で「夏休みの合宿」が繰り返し言及されているのも、何度もこの感想で書いてきた、京都アニメーション的、「日常の輝き」を切り取った回。『けいおん!』第4話「合宿!」 の澪が花火をバックにエアギターする唯に大事なものを見つける回を意識させるようにしているからでしょう。あの「日常」を願ってるし、信じたい。なのだけど、『けいおん!(!!)』的時間とか、『たまこまーけっと』的家族とか、ある日突然訪れる非日常的厄災に、奪われてしまう類のものだった。晴彦の拠り所となっていたであろう虚構(晴彦の能力と、ルル(今話のアバンからも伏線通り、晴彦が能力で生み出していた虚構的存在ってことだよね?)と、二重の意味で)も奪われてしまうという展開は、そしてアニメーションのような文化の産物、虚構の産物の意義も奪われたというリアルを意識してしまいます。前回の「ようやく失った母親のことを語れるようになった子供二人(晴彦と舞)」も含めて、僕的に、『たまこまーけっと』並みに、3.11以降を意識していると感じる作品となってきました。
ここから、逆襲するのか。
エニグマの能力を奪うモチーフがキスなのは「白雪姫のキス」を意識させられたりと最後までハルヒ文脈は感じられるので、最後の逆襲もハルヒ関係という気はします。大きな破綻は起きたし、これからも起きるだろうし、「日常」は壊れて虚構もアニメーションも意味はないって言われるだろう。だが、『ハルヒ』も『けいおん!(!!)』も『たまこまーけっと』&『たまこラブストーリー』も『境界の彼方』も『甘城ブリリアントパーク』も『響け!ユーフォニアム』もエトセトラも、全部意味はあったって信じてるんだよ、あばばばばばばばばばばばばばばばば!(え) っていう京都アニメーションの叫びみたいな最終回に期待したいです。晴彦の母親の代役だったんだけど、存在としては「非日常」で、でも晴彦にとっては「日常」をくれていたというルルちゃんを使ったりしてほしいですのう。
p.s. 第12話サブタイトルの「ぬ」。完了の助動詞「ぬ」の終止形(お母さんが帰ってきたという意味)と、打消しの助動詞「ず」の連体形(お母さんが帰ってこなかったの意味)と両方かけてたのかな。ここでも、「ルビンの壺」的な、元は同一存在(表記上は「ぬ」で同じ)だけど、主観側の受け取り方次第で別の見え方(完了になったり打消しになったり)になるネタ。
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