townslightshyoushi

 相羽です。

 昨年夏に(ほぼ)毎日更新でWEB連載していた小説『こちら街アカリの復興部!』の「改稿版」を、改めてWEB連載中です。

 今回から新しく読んでくださる方はもちろん、昨年のヴァージョンから今回の改稿版はだいぶ変わってるので、もう一度読んでやるかという方も各々のタイミングで読んでやって頂けたら喜びます。「ノベラボ」様は(スマホからも)縦書きで読む仕様で、けっこう雰囲気がありますよ。

 本日は第23節/告解 (3,182文字)……をアップです。本日は「青春・友情」10位、総合(すべて)55位ありがとうございます!)

 この後も、毎週、月、水、金に一節ずつ更新の予定となります。

 小説『非幸福者同盟』ともども、こちらの方もよろしくお願いします。

 「ノベラボ」様で読むページはこちらをクリックでお願いします。↓


こちら街アカリの復興部!/ノベラボ


 以下、軽く去年公開していたヴァージョンと今回の「改稿版」の違いなどについてライナーノート。
・第23節/告解

 →昨年のヴァージョンから今回の「改稿版」で一番変わった部分として、真雪が小説を書く人だったという設定をつけ加えました。

 これにて、全体的に震災を機に途切れかけた虚構(イメージ)的なものを取り戻す物語として、一つ芯が入れ直せたんじゃないかと思います。


---

「その作品の影響もあって、お恥ずかしながら、私自身も昔は小説を書いていました」

 当の目の前にいる、焔に影響を与えた作品(きょこう)と現実のうち、現実側の真雪は。儚く消え入りそうな声だ。

「焔は私の小説をいつか漫画にしてくれる、なんてことをよく言っていました。ありがちですよね。でも、そのありがちな夢が、私には大事なものだった。夜。本に囲まれて想像の翼で飛んで。CRTディスプレイのデスクトップパソコンに向かって、遠い場所に漂っていたそのままでは儚いものに骨を通し、肉づけしてゆくように言葉を紡ぎ。隣には大切な弟がいて。やがて、夜明け前の窓から、朝焼けに照らされる街の輝きが見えてきたら、ちょっと外の現実にでかけてこの社会(セカイ)を漂流する。そんな特別でないただの一日が、優しくリピートされてゆく。でもそれは単調ということではなくて、ラヴェルの『ボレロ』みたいに、同じリズムを繰り返しながら、わずかずつ、わずかずつ変形していて、いつしか大きな全体につながってゆく。波打つように、少しずつ右肩上がりに、この宇宙(セカイ)の彩(いろどり)を深くしてゆく。そんなことを、信じていました」

 思わぬほど、艶(あで)やかに言葉を舞わせる真雪であった。祈はやはり焔と真雪には重なるものがあると感得(かんとく)した。生きるのに不器用だけれど、繊細な美しさを秘めている人。そんな本当は秀麗な人の話は、やがて焔の頭の中にあるようには、綺麗ではいられなかった自分(マユキ)について、という部分に向かっていく。

「でも、そんな漫画の中のような穏やかさは、続きませんでした。現実は厳しかったです」


---


 この辺り、僕は好きなんですけどねw。

 加えて、真雪のキャラクター造形もけっこう変えて、震災を機とした苦境がなければ元々はけっこう文芸的な人だったという感じにしました。これで、祈となんか通じるところがあるという描写にも説得力が増したと思っております。


---

「かといって僕は、いや、僕達は。あなたの問題も『しょうがない』で済ませられるほどには、まだ大人になりきれていないのです。この厳しい世界で『自由』になろうと思ったら、それなりのテクニック、そして準備が必要になります」

 彼なりの人生の負荷の中で逃避的に身につける事になった、文学的な素養を使った言い回しでこう伝えた。

「もう少し、時間をください。相応のプロセスを踏んで、ちょっとだけ天運が味方してくれれば。解けない『呪い』はない。僕は、そう信じていますので」

---


 祈の台詞に投影された僕が考える「カッコ良さ」が滲み出ている箇所。

 「日常」レベルの大変なことを前にこれをやるのが『復興部!』で、「世界」レベルの大変なことを前にこれをやる(ラスト二話)のが『非幸福者同盟』って感じですかね。

 どこかで、知力を駆使してリソースを追加し、入念な準備をした上であとは臨機応変にやっていく(天運が味方してくれたらさらにありがたい)しかないと思ってるので。

 「改稿版」、よろしくです!↓


こちら街アカリの復興部!/ノベラボ