七月から放映開始のTVアニメ『アクションヒロイン チアフルーツ(公式サイト)』。
本日発売の雑誌「ヤングチャンピオン烈」2017年No.7より、あずせさん(Twitter)によるコミカライズの連載が始まっております。
初回は巻頭カラーで一挙二話掲載。
今回のブログは、第1話&第2話の感想です。【宣伝】本日発売のヤングチャンピオン烈No.7(告知でNo.6と間違えてました!)にて、夏アニメ「チアフルーツ」のコミカライズを描かせて貰えることになりました〜!巻頭カラー、1、2話同時掲載です!どうぞよろしくお願いいたします! pic.twitter.com/zmAb4mZM2c
— あずせ@チアフル連載中 (@_azuse) 2017年6月20日
記事中には雑誌掲載分のネタバレが含まれますことをご注意頂けたら幸いです。
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TVアニメの放映は7月からですが、事前に公式サイトやPVをチェックしてみると、どうも広いくくりで言ってよいなら「ご当地もの」作品っぽい。
「ご当地ヒーロー」……つまり現実世界の僕の地元宮城県だとダッチャーさん(Twitter)とかですね。ならぬ「ご当地ヒロイン(アクションヒロイン)」が日本中に広まっているという世界観の作品ということで、どういう物語になるのだろうと思っていたのですが。
冒頭にて、これから主人公たちが作り上げる陽菜野市(ひなのし)の「ご当地ヒロイン(アクションヒロイン)」「チアフルーツ」に対置される存在として、全てのご当地ヒロインの源流にして頂点の「カミダイオー」の存在が描かれることで、いきなり物語にギアが入ってきました。
印象的に、作中世界にはご当地ヒロインの「ランキング」があることも大事な情報として出てきます。
一方では、頂点の頂点、「ランキング」で言ったら一位をぶっち切ってるくらいの「全国的スター」の「カミダイオー」がいる。
一方では、「ランキング」で言ったらまだ掲載すらされていない、作中の言葉で言ったら「乗り遅れちゃって」いる、これから始まる「地方」の「チアフルーツ」がある。
この二つの「ご当地ヒロイン像」が物語冒頭では対置されてる感じなのですが。
「カミダイオー」の方は姿がストレートには日本史上の大和の国の「大王(おおきみ)」が連想される感じになっていて、比喩、方向性としては頂点にして国、「中央集権」って感じがします。
一方で、これから始まる「陽菜野市」の「チアフルーツ」はその流れでいくと「地方豪族」くらいの位置づけでしょうか。
国と地方。
中央集権か地方重視(再建)か。
現実世界の近年でもタイムリーに意味を持つ話題なので、時代性がある話題をうまく噛み砕きながら(エンターテイメント漫画用の)設定に反映させてるな〜と思いました。
「カミダイオー」自体が元は一地方都市の「ご当地ヒロイン」だったところから登りつめたということで、日本史上の国が「大王(おおきみ)」に統一されていく黎明期の頃が、一つはモチーフなのかもなと思いました。
となると、頂点の「カミダイオー」は、一地方豪族から(本人の意図はともかく位置づけとしては)「競争」を勝ち抜いて「全国的スター」(=「大王」的ポジション)にまで登りつめたポジションです。
いわば、「競争」「ランキング」を勝ち抜いて「頂点」に至るという「競争原理」的世界観が「カミダイオー」の背後には見え隠れします。あるいは、「地方都市」の「ご当地ヒロイン」からステップアップして最終的に頂点の「全国的スター」に至るという、いわば「単線的」な進化像ですね。
そこで、第一話で描かれているのは、そんな「カミダイオー」的「単線的」な進化像とは異なる、「チアフルーツ」側の最初の動機です。
「チアフルーツ」を代表して第一話&第二話では黄瀬美甘(きせみかん)さんに焦点があたっていますが、彼女の事の発端、原初の「想い」は、「ランキング」を勝ち抜きたいではなく、「全国的スター」になりたいでもなく、あるいは自己実現したいとか「輝きたい!」でもなく、「妹のゆずに喜んで貰いたい」から始まっているというのが描かれているのですね。これは、上記の「単線的」な進化像とは明らかに異なる初期衝動です。
劇中の最初のショーの最中に美甘は困難に遭遇しますが、それでも立ち直れたのは、「ランキング」で一位になりたいからではなく、妹に喜んでほしいから、です。
ゆずが応援してくれてるんだ。倒れてる場合じゃない…!
もう大丈夫 杏ちゃん…!
このままで終われない!(『アクションヒロイン チアフルーツ』コミカライズ版第一話より)
ここで、「競争原理」と対置されている美甘の初期衝動は、明らかに「家族」、「共同体」です。
やはり、この作品もここに繋がってきたと感じました。
最近の当ブログだと、『響け!ユーフォニアム(2)』の感想でずっと書いていた、「競争原理」と「共同体」を対置させて、その縫合・包摂を希求する物語、というやつです。
参考:響け!ユーフォニアム感想
あまりに「共同体」が壊れ過ぎて個人がアトム化し、「無縁社会」なんてキーワードもHOTな現実社会を反映してか、近年、多くの創作作品がこの主題を扱っていると思います。
そもそも、「競争原理志向」(ランキングとかを勝ち抜いていく意志)と「共同体志向」(家族とかを大事にする意志)が、どうして現代社会だとバッティングしやすいのか? という点に関しては、基本的な理解の補助になるテキストを、アニメ『3月のライオン』を例に「ねざめ堂」さんが書いてくださっていますので、こちらの記事なんかも合わせて読んで頂けたら喜びます。↓
参考:『3月のライオン』(アニメ版)感想:「競争」と「共同体」のバランスゲーム/ねざめ堂
ここで、「家族」、美甘の妹(ゆず)への「想い」を「守る」ポジションとして描かれるのが、おそらくはこの作品の「ヒーロー(ヒロイン)」、赤来杏(あかぎあん)さんです。
ここで、このテラカッコイイアニメ版のPVにもリンクを張っておきましょう。↓
2017年7月新番「アクションヒロイン チアフルーツ」PV https://t.co/wO5KxPCwAC @YouTubeさんから …本日のブログ更新用です。
— 寂しいシロクマ(相羽裕司)/仙台市太白区 (@sabishirokuma) 2017年6月20日
PVでも印象的だったこの杏の櫓(やぐら)からの跳躍シーンですが。
わかったよ そういうことだね(『アクションヒロイン チアフルーツ』コミカライズ版第一話より)
ここからの、美甘の妹(ゆず)への「想い」を「守る」ため、杏が櫓から跳躍するシーンがひたすらカッコいい。
やはり本作は「ヒーローもの」モチーフの作品で、各メインキャラクターに「色」がわり当てられていたりするので、日本では「東映」さんの「戦隊ヒーローシリーズ」「仮面ライダーシリーズ」「プリキュアシリーズ」などなどが描いてきた「ヒーロー像」(その源流には地元宮城県は石巻出身の石ノ森章太郎の「ヒーロー像」が関係していたりもします)とも関係してくる作品と捉えられると思いますが、そんな中で、やはり杏は「赤(レッド)」です。
「(他人の)想い=心=夢」を「守る」というのは、上記のシリーズで近年「東映」さんが打ち出している「ヒーロー像」とも重なりますからね。やはり杏は「ヒーロー」だと思ったのでした。
参考:プリキュアシリーズの感想/別ブログ
西洋流の表現だと、ゴシック建築における「尖塔」が「進歩史観」の象徴として描かれることがよくあったりしますが。ラストの「櫓(やぐら)」は、そんな「尖塔」の意味合いと少し重なるような「(シンプルな)進歩の意志」(=単純にランキングを勝ち抜く的な方向で、より強く、より速く、より大きくだけを目指す方向性の「単線的」な進化像)の象徴として捉えるのは、深読みが過ぎるでしょうか。
ラストは、そんな櫓が大倒壊する背景作画をバックに、杏が「神激ー!!(かんげきー!)」の決めポーズ。
最初は「カミダイオー」の模造から始まってはいるものの、「カミダイオー」的「単線的」な進化像だけじゃないでしょ! として始まってる第一話ラストだと感じます。
「単線的」な進化像だけでは取り零されてしまうような、「家族」への想い、「共同体」、「地方」、などなど、そういうものを汲み取って「単線」を「複線」にしていくために。
参考:京都アニメーション作品における「境界領域者」とゲンロン0における「観光客」と漫画をめくる冒険における「身体離脱ショット」と
存外に面白かったです。
主題上、かといって伝統的な「家族」「共同体」「地方」などなどへ回帰するのを掲げるだけでも終わらず、「競争原理」的なもの「ランキング」的なもの「全国的スター」的なものとそれらとの、バランスの回復、縫合、包摂まで射程に入っていきそうな物語の出だしで、ことの他に熱いと思ったコミカライズ版の初回(第一話&第二話)だったのでした。
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分かる人にだけ分かればイイ、第二話の一場面。
(画像はコミカライズ版『アクションヒロイン チアフルーツ』第二話より引用)
うんうん。「よちよち」は妖怪みたいなもの(え)で、基本的に「ご当地」側的な存在なので、ここに入っててもテーマ的にもOKだね!
→「ヤングチャンピオン烈」2017年No.7・Kindle電子書籍版
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あずせさんの漫画はえろく可愛く面白いので、みんな読んでみて!
●サークル:知恵の原石/とらのあな通販(R-18注意)
参考:あずせさんの『ヴァルキリードライヴセイレーン-ブレイクアウト-』の単行本が発売
参考:ヴァルキリードライヴ セイレーンコミカライズ第一話を読もう、第0話相当劇場版『Wake Up, Girls! 七人のアイドル』が期間限定フリー公開開始なのでこちらも観よう、創作活動進捗
→次回:『アクションヒロイン チアフルーツ』第3話「ご当地ヒロイン戦隊、集結せよ!」(コミカライズ版/「ヤングチャンピオン烈」2017年No.8掲載分)の感想へ