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記事本編はネタバレ注意です。
「代役」の「ヒーロー」像の2017年最前線。
ご当地もの作品、美少女もの作品と見せつつ、けっこうガチで「ヒーローもの」作品でもある本作。
ざっくりとは、
●従来のヒーロー像を「解体」し
●最新の2010年代型ヒーロー像を「再構築」していこうとしている
ということをやっていると思います。
本作のシリーズ構成が日本の「ヒーロー」像の中核の一つに位置する「スーパー戦隊シリーズ」の脚本・シリーズ構成も多数手掛けている荒川稔久氏ですし、近年の「ウルトラマンシリーズ」に関わっている林壮太郎氏(Twitter)も脚本に入っておられるということで、本作はわりとガチな感じです。
まず解体の方、
1.「巨悪を倒す」だけが「ヒーロー」じゃない。
カミダイオーVSロッチ王に見られる構図ですが、いわゆる「勧善懲悪」、「二項対立」の世界観ですね。正義の味方が悪を倒してめでたしめでたし、的な。
カミダイオーショーはフィクション(虚構)ですので、こういう分かりやすい「ヒーロー」のあり方は、2010年代ではもうフィクション(虚構)の中だけだ、ということを表現していると感じたのでした。
現実の我々の課題は「巨悪を倒す」ことではなく、本作と関係する辺りでは「地方の財政赤字」や「共同体の機能不全」などなどです。
作中でも御前さんたちが取り組まなくてはならないのはこっちの方で、こっちの方には分かりやすい「巨悪」はいません。「インターの誘致失敗」に分かりやすい黒幕でもいたのかと言ったらそうじゃない感じです。
また、事象も「二項対立」のような単純なものではなく、解法も一律的ではありません。派手に必殺技を敵に向かって大出力で放つよりも、法人契約の60から50に電気を変えるのを検討して節約することが大事であることもあるかもしれません。
そういう複雑な現実社会のもろもろの課題の中、じゃあ「ヒーロー」って? ということを描いている作品なのだと思うのでした。
解体の方、二つ目、
2. 「競争(ランキング)」を勝ち抜いた者だけが「ヒーロー」じゃない
競争原理に覆われる現実世界の中、やっぱり「競争」、「ランキング」を勝ち抜いた人は賞賛され、富も手に入れ、「ヒーロー」って感じがする……というのがまだまだある世の中です。
スポーツの世界でしたら、やっぱり優勝した(「ランキング」を勝ち抜いた)人が「ヒーロー」だし、芸能の世界でもAKB48の総選挙にコミットして、一位、ランキングの上位者を称える、そういう人が「ヒーロー」だという雰囲気はやはり世の中にあります。
本作は、それだけじゃない。「競争(ランキング)」を勝ち抜く人だけが「ヒーロー」じゃない……っていうこともまた、同時に描いてる作品なのですね。
劇中に印象的に存在する「ランキング」の第一位はカミダイオーですが、カミダイオーだけが「ヒーロー」か? というとそうじゃないでしょうという。
と、ここまでそういう従来の「ヒーロー」像に、それだけではどうなの? と疑問をていしてちょっと解体したところで、じゃあ本作ではどういった「ヒーロー」像をより現代的なものとして再構築していっているのかを、次で見てみましょう。
ざっくりとは、
1A.「保線作業員」的な本当の「ヒーロー」像。
これは、2011年以降、本当に「ヒーロー」像が変わった部分です。本作のシリーズ構成の荒川さん脚本の「ヒーロー」像にも出ていますし、「東映」さんの「ヒーロー」像(戦隊シリーズ、平成仮面ライダーシリーズ、プリキュアシリーズなど)にも色濃く反映されていますし、会社は違いますが2011年以降リリースのウルトラマンシリーズにも反映されていると思います。
2011年の東日本大震災の時、「巨悪を倒す」ようなだけの「ヒーロー」はほとんど役に立たなかったのです。じゃあ、あの時どういう人が本当の「ヒーロー」だったのかというと、道路を復旧する工事のおじさんたち、医療に従事する人たち、物資を運ぶ人たち、食事を作る人たち、普通のことをちゃんと普通にやる「日常」を積み重ねている人たちこそが「ヒーロー」だったのです。
「私は保線作業員を目指す。人知れず、みんなのために働く、あの人たちのように」(黒酒路子)
この話、個人的に何回もしていますが、僕個人の感覚からしても、震災の本震の次の日に破壊された道路の復旧作業にもう取り掛かってる工事のおじさんを見かけて、この人たちこそ本当の「ヒーロー」だと思いましたよ。あと、次の日からお店を開けて材料尽きるまで作り続けてたたこ焼き屋さん始め食べ物関係のお店の人たちとか。あの善性を身近で見たのでまだ人を信じようと思う自分がいたりもします。
より、「日常」の「ヒーロー」。
だから『平成仮面ライダーシリーズ』なら例えば『仮面ライダーフォーゼ』はフォーゼ一人の力ではなく、一般人のメンバーの力も借りて戦うし、例えば『プリキュアシリーズ』なら『Go!プリンセスプリキュア!』では別にプリキュアじゃない一般人の七瀬ゆいさんが絶望の檻をぶち壊すのが物語の最終クライマックスなのです。
参考:Go!プリンセスプリキュア/感想/第48話「迫る絶望・・・!絶体絶命のプリンセス!」(ネタバレ注意)/別ブログ
上述の「保線作業員」さんは、「日常」の意味でも「交通」「流通」の意味でも、「本当のヒーロー」ですね。あの時線路が壊れて「物流」が途絶えた中、早期復旧に尽力してくれた「ヒーロー」がいました。本作の路子さんは、そういう「ヒーロー」像を知ってる子だっていうことですね。
2A. 「代役」の「ヒーロー」像。
今話では、「2」の「競争(ランキング)」を勝ち抜いた者が「ヒーロー」という固定観念のもと、本来なら「競争(ランキング)」を勝ち抜けるはずだった御前さんの「代役」として(テニスで)勝利を手にしてしまった路子さんの負い目が、身体にダメージがたまっていた蜜甘さんの「代役」として路子さんが本懐を遂げることで昇華されるまでの物語が描かれておりました。
いや、「代役」が大事なんだよ。「代役」っていう「ヒーロー」像もあるんだよ! っていう一話でもあったのですね。
「代役」として準備してる自分なんてカッコ悪いんじゃ? みたいなともすれば視聴者と重なる路子さんの自意識が、ラストに御前さんから全肯定されて、「代役」の「ヒーロー」性が承認されるくだりは良かったですね。百合ですね。(え)
「代役」の「ヒーロー」像に関しては、ここ数年のアニメーション作品では何といっても一連の京都アニメーション作品が大事で、詳しくは当ブログの「代役」の「ヒーロー」像に関するブログ記事を読んで頂けたら喜びます。↓
参考:『ハルヒ』放映開始から十年、京都アニメーションがここまで進めた「日常」と「非日常」にまつわる物語〜『無彩限のファントム・ワールド』最終回の感想(ネタバレ注意)
参考:響け!ユーフォニアム2感想/第四回「めざめるオーボエ」(ネタバレ注意)
参考:小林さんちのメイドラゴン/感想/第10話「劇団ドラゴン、オンステージ! (劇団名あったんですね)」(ネタバレ注意)
かくして、「日常」「代役」などなどと再構築に向かう「ヒーロー」像を提示してる本作ですが、それで何を守るのかと言ったら、第一話の感想で書いた言葉だとやはり「共同体」関係かと思います。第一話は「家族」の話(蜜甘と柚香)で、第二話は「友だち」の話(路子と御前)ですよね。
同系の物語として、元気さんと勇気さんの物語が待機してる感じです。アイドルなので「競争(ランキング)」の文脈では勝ち抜いている勇気さんと、足を壊して車椅子なので「競争」の文脈では敗北者である元気さんの関係性の中に成立する「共同体」的なものは? 的な物語ですね。楽しみです。
自分から見て凄い人だった人が、「競争」の文脈から離れて「共同体」的なことをしている。そして、そこに自分が関われない……という関係が、
路子さん―御前さん
果音さん―杏さん
とが重なる構図になってたりもします。
これも、「共同体」的な方向に振れはじめた御前さんと杏さんに対して、路子さんは今話でまだ「競争」の文脈に囚われていた、果音さんもまだ囚われている(新体操=競争・ランキング的競技)って感じですかね。
そんな感じで。
本物と偽物とが、競争と共同体とが、当人と代役とが、相補的に相互貫入し合ってる感じで、単線的な「ヒーロー」像を複線的・立体的にしていってくれてるようで、とても好みの作品なのでした。
こういうの観て、色々と柔らかく、余裕がある感じになっていきたいですね。
◇◇◇
プリキュアシリーズのファンアートなどでお馴染みの春日るりとさんのチアフルーツ絵にTwitterの引用リンク張らせて頂きますね。↓
なんか、プリキュアシリーズ好きな人にチアフルーツ観てる人多い気がしておりますよ!杏&美甘 #アクションヒロインチアフルーツ pic.twitter.com/FrZpdEyzcD
— 春日るりと@さやか派 (@rurito0725) 2017年7月11日
本作の豊富な特撮作品のパロディについては、TJさんのTwitterとかチェックしてると良いですよ。↓
#チアフルーツ 2話
— TJ-type1 (@tjtype1) 2017年7月14日
荒川稔久セルフパロディネタ
「超変身」「本能覚醒」「大魔神カノン」
検索したら大魔神カノンに荒川さんが参加してるのあまり知られてないっぽいな。まぁ作品自体があまりげふんげふん
— TJ-type1 (@tjtype1) 2017年7月14日
そしてそして、先月発売の雑誌「ヤングチャンピオン烈」2017年No.7より、あずせさん(Twitter)による『アクションヒロイン チアフルーツ』のコミカライズの連載が始まっております。チアフルーツ、9人いるし、荒川さんだし、野球回があるとしか思えない…。
— TJ-type1 (@tjtype1) 2017年7月14日
初回は巻頭カラーで一挙二話掲載。漫画版も、めちゃめちゃ良いですよ。
(画像はコミカライズ版『アクションヒロイン チアフルーツ』第1話より引用)
「ヤングチャンピオン烈」様の公式サイトのこちらから、第1話は試し読みすることができます。↓
●『アクションヒロイン チアフルーツ』第1話(試し読み)
僕も買って読んだ感想はこちら。↓
●チアフルーツ/感想/第1話&第2話(コミカライズ版/「ヤングチャンピオン烈」2017年No.7掲載分)
コミカライズ版第1話がよかったら、第1話&第2話が掲載されてる「ヤングチャンピオン烈」2017年No.7は現在、電子書籍版が配信中です。↓
→「ヤングチャンピオン烈」2017年No.7・Kindle電子書籍版
第3話掲載の8号も、明日7月18日(火)に(紙の雑誌版)発売予定です。みんな、明日は書店とかコンビニに行くんだ!
あずせさん(もともと、地方とか大事にする感じで活動してた感がある方なのですよ)の漫画はえろく可愛く面白いので、みんな読んでみて!
●サークル:知恵の原石/とらのあな通販(R-18注意)
参考:あずせさんの『ヴァルキリードライヴセイレーン-ブレイクアウト-』の単行本が発売
参考:ヴァルキリードライヴ セイレーンコミカライズ第一話を読もう、第0話相当劇場版『Wake Up, Girls! 七人のアイドル』が期間限定フリー公開開始なのでこちらも観よう、創作活動進捗
→『チアフルーツ』はAmazonビデオでも観られるんじゃ
→Blu-ray
→主題歌
→前回:『アクションヒロイン チアフルーツ』第1話「いきなり超天界!」の感想へ
→次回:『アクションヒロイン チアフルーツ』第3話「大暇人カノン」の感想へ
→当ブログの『アクションヒロイン チアフルーツ』感想の目次へ
【関連リンク0:昨年2016年の「アニメーション」作品ベスト10記事】
→2016年「アニメ作品」ベスト10〜過去の悲しい出来事を受け取り直し始める震災から五年後の想像力(ネタバレ注意)
【関連リンク1:「共同体」を一つの主題に扱っている京都アニメーション作品がこの十年どういうテーマを繋いできたかに興味がある方向けの手引きとなる、当ブログの関連記事】
→『小林さんちのメイドラゴン』感想へ
→『響け!ユーフォニアム2』の感想へ
→映画『聲の形』の感想〜ポニーテールで気持ちを伝えられなかったハルヒ(=硝子)だとしても生きていくということ(ネタバレ注意)
→『ハルヒ』放映開始から十年、京都アニメーションがここまで進めた「日常」と「非日常」にまつわる物語〜『無彩限のファントム・ワールド』最終回の感想(ネタバレ注意)
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→『けいおん!!』最終回の感想はこちら
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→あの日欠けてしまった人の日常(=マヨネーズ)に私がなるということ〜『ハイスクール・フリート』第11話「大艦巨砲でピンチ!」の感想(ネタバレ注意)
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→仮面ライダー鎧武感想
→仮面ライダーディケイド感想
→侍戦隊シンケンジャー感想