「"アイツ"のこと、けっこう好きだったんだ。私はもう会うことはないかもしれないから、『たましい』があなたの中にいるのなら伝えておいて」

 同じで湯で温まった数奇な逢瀬に、静かな祝福を。

「この巡る世界の中で、私は塔で、アンタは船で。もしまた何かの縁で逢うことがあったなら、一緒にお酒でも飲みましょうってね!」

 七夕の日、エッフェル塔が短冊に書いた言葉は「余裕」であった。

(そーゆうこと。世界から零れ落ちたあなたが渇いていたなら、潤沢な水を携えて駆けつける。それが私――フランスという国の理想さ)

 広瀬川の水面にオントロジカの光が立ち昇る。

 蒼穹。どこまでも、蒼い、蒼い、光がカナタから運ばれてくる。

 立ち昇るアオの蛍火の中で、真実の王はエッフェル塔と向かいあった。

「先日より光の量が多い。本気という訳か。懸命に撤退したものだと思っていたがな。世界四大オントロジカ集積地たるフランスはパリ。焦らずとも順に収奪に向かったものを」
「あなたも『自由』で私も『自由』。だけど、フランスの『自由』はあなたとはちょっと違う。譲れない一線も、あるのさ」

 アオの光は昭光となった。地球上でもっとも多くのオントロジカを獲得したヴァルケニオンという男をして、その光量、瞠目に値する。

「貴様、実体か」


――この日、数時間だけフランスのパリからエッフェル塔が消えた。


 最終話「大楼閣と古の戦艦」

 最新・第262節(第259節)「広瀬川灯明邀撃戦線1〜蝦夷(エミシ)の女」/「カクヨム」および「小説家になろう」にて11月17日(金)に公開。(小説『非幸福者同盟』)


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 ティザー的に。

 郷里的「歴史建造物擬人化×能力バトル」なオリジナル小説『非幸福者同盟』。

 最近は月一節ずつの連載ペースでしたが、11月17日(金)更新分よりついに「最終話」がスタートします。

 長めの作品となりましたが、完結まで残り十七節となります。

 最終話では全ての伏線を回収し、同時にバトルもの作品としての高揚も届けていきたいと思っております。

 物語の結末、見届けてやって頂けたら喜びます〜。

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(最終話のヒロインはムっちゃん/絵:馬の助さん

 読めるところをまとめておきますね。↓


小説『非幸福者同盟』/カクヨム

小説『非幸福者同盟』/小説家になろう

小説『非幸福者同盟』イントロダクション&登場人物紹介


 累計48000PV達成も感謝です。
 是非ぜひ。

 ションさん(Twitter)が作ってくれたイメージ曲(short ver.)なども引き続きよろしくです。↓

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