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 相羽です。

 アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン(公式サイト)』第2話「戻ってこない」の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 第1話が壊れた橋(線路)など「空間的な断線」が印象的だったのに対して、今回第2話は「時間的な断線」が印象的でありました。

 中心的に一人描かれているのはエリカさんで、一回自動手記人形のお仕事を失敗しちゃったりする中で、(時間的に)過去に受け取ったはずのモリー夫人の小説の言葉をこぼれ落してしまったような状態にしばしなってるのですね。

 現実でも、(仕事とか)厳しい中で、昔受け取った大事なものと断線してしまってるというのはよくあったりなことです。

 そんなエリカさんが、ヴァイオレットとの交流を通して、第2話ラストではもう一度モリー夫人の小説を読んだ時の原初の気持ちを受け取り直す……というところまでが描かれています。時間的に断線していた気持ちが、またかすかに繋がったのですね。

 この、時間的に断線してしまった気持ちが繋がることはできるのか? という物語が、そのまま主人公のヴァイオレットの、(時間的に)過去にギルベルトから受け取った「愛してる」を、今で受け取り直すことができるのか? という物語に連想として重なってゆく感じです。

 この時間的な断線をもう一度繋ぐことができるのか? という物語は、京都アニメーション作品全般でよく扱われていますが、前回の感想であげた、『たまこまーけっと』〜『たまこラブストーリー』、『響け!ユーフォニアム(2)』などでも描かれています。


・『たまこまーけっと』〜『たまこラブストーリー』

 →たまこのお父さんがたまこのお母さんにあてたラブソングが、時間を超えてたまこに届く。


・『響け!ユーフォニアム(2)』

 →「楽譜(=想い)」が、時間を超えて最終話であすか先輩から久美子に継承される(届く)。

 →故人である滝先生の奥さんの気持ちに、時間を超えて麗奈が近づく。などなど。


参考:響け!ユーフォニアム2最終回の感想〜全てに終わりがあるとしてもゆかりにまつわる音楽を響かせること(ネタバレ注意)

参考:響け!ユーフォニアム2感想/第十一回「はつこいトランペット」(ネタバレ注意)

 ◇◇◇

 今話の「言葉には裏と表がある」、という話は、言語学などをやってる人からすると、いわゆる「シニフィアン」と「シニフィエ」の話であったりします。

 言語学の父と言われてたりするフェルディナン・ド・ソシュールという人が提唱した概念で、表面的な「愛してる」という言葉、言葉というより、厳密には「ア・イ・シ・テ・ル」という「音」の方が「シニフィアン」。

 その「シニフィアン」の奥にある温かい気持ちのような「意味」の方が「シニフィエ」です。

 この「シニフィアン」と「シニフィエ」の関係は恣意的である(テキトーである)と指摘したのがソシュールの功績と言われています。


 参考文献↓

新訳 ソシュール 一般言語学講義
フェルディナン・ド・ソシュール
研究社
2016-08-20



 恣意的、テキトーなので、「シニフィアン」で表面的に「ア・イ・シ・テ・ル」と言っても「シニフィエ」では「愛してない」場合もありますし、逆に「シニフィアン」は「バ・カ!」とかでも、その表現の奥では「愛してる」という意味=「シニフィエ」だったりします。

 その恣意的な感じ、テキトーな感じ、機微がまだ分からないので、ヴァイオレットが依頼者の表面的な「シニフィアン」をそのまま手紙にしてしまって、失敗する(奥にあった「シニフィエ」に気づけない)というのが、今話の段階で描かれたエピソードだったのでした。

 この要素はそのままヴァイオレットのメインストーリーにもかかってきて、ヴァイオレットは言い換えるなら、ギルベルトの「ア・イ・シ・テ・ル」という「シニフィアン」の奥にあった「愛してる」という「シニフィエ」を受け取ることができるのか? という物語が本作では描かれているということです。

 ◇◇◇

 「シニフィアン」と「シニフィエ」の話が、最初の時間的な断線をもう一度繋ぐことはできるのか? という話に精緻に関係していきます。

 つまり、過去、ずっと昔に受け取った「シニフィアン」の意味=「シニフィエ」に、ずいぶん時間が経ってから気づく……ということがこの世界にはままあるのですね。

 ある程度歳を重ねてる視聴者だと、あの時のあの人(たいていその人にとって何らかの意味で大事な人ですが)の言葉(シニフィアン)って、こういうこと(意味=シニフィエ)だったのか! と、すごい時間が経ってから感得したという経験があるのではないかと思います。

 ブローチは「シニフィアン」の象徴です。そのブローチが戻ってきても、ヴァイオレットはまだ過去に受け取ったギルベルトからのそのブローチに込められた「シニフィエ」(まあ「愛してる」ってことだと思うのですが)までは受け取ることができない。美しく描かれる戻って来たブローチと戯れるヴァイオレットのシーンが、「シニフィアン」はあるのに「シニフィエ」がまだ受け取れないもどかしさ(児童性)みたいなのを表現していて、カッコいいですね。

 ブローチを買ってくれた時のギルベルトの気持ち、「愛してる」を口にした時のギルベルトの気持ち、ヴァイオレットが時間を超えてそれを受け取り直すことができるのか? そういう物語なのだと思います。

 現実の方でも、極端な話、昔は親の言葉に反発ばかりしていたのだけど、何年も経って、場合によっては死別してから、裏に込められていた親の愛情(シニフィエ)に気づく……なんていうことはよくあります。

 世界というのは過去から断線した「イマ」だけで出来ている断片ではなく、「過去」も込みで出来ている。過去から届けられるシニフィアンのシニフィエに気付くことができたなら……というのは、本作もまたやはり近年の京都アニメーション作品という感じです。

 メタに京都アニメーション自体が今が過去になった時、百年とか先の誰かのために作品を作ってるふしがありますし、原作者の暁佳奈さんも、最初の想いが世界に現れてからは、かなり時間が経ってから、2018年になってようやくこの作品が広く世界に届いているはずです。

 断線しがちな時間を、つなぐということ。

 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は『響け!ユーフォニアム2』第11話の墓地のシーンのような雰囲気が、始終作品の進行に併走しているような作品ですね。

→Blu-ray



→エンディング曲



→前回:『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』第1話:「愛してる」と自動手記人形……の感想へ
→次回:『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』第3話:「あなたが、良き自動手記人形になりますように」…の感想へ
当ブログの『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』感想の目次へ

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