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 相羽です。

 アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン(公式サイト)』第3話:「あなたが、良き自動手記人形になりますように」…の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 ルクリアとお兄さんが、それぞれ擬似ヴァイオレットとして描かれているようです。


・ルクリア
 →代筆業を志しながら、自分の本当の気持ち(=大事な兄への気持ち)を自分では紡げない
 →現在代筆業を志しながら、自分の本当の気持ち(=大事なギルベルトへの気持ち)を自分では紡げないヴァイオレットと同じ


・ルクリアのお兄さん
 →戦争をきっかけに両親を失って、現在世界との整合性が保てない
 →戦争をきっかけに(親的なポジションでもあった)ギルベルトを失って、現在世界との整合性が保てないヴァイオレットと同じ


 お兄さんの方から。

 妹さん(ルクリア)の帽子が風に舞って「世界」に消えてしまう描写が、第一話冒頭の、ヴァイオレットのギルベルトへの手紙(報告書)が風に舞って「世界」に消えてしまう描写と似ています。

 この感想記事で使ってきた言葉だと「断線」の表現だと思いました。いくつかの意味で、戦争をきっかけにそれまでの日常は終わってしまった。

 とまどい、まだ上手く自分と「世界」の整合性が取れない状態を「断線」と呼んでみます。

 「世界」と「断線」してしまった鬱屈を埋めるように、ルクリアのお兄さんは「世界」に、「他者」に拒絶の意志を示しているのが描かれます。お酒に逃げてるのも、他人に暴力を振るう(他者の拒絶)のもそれです。

 ヴァイオレットがルクリアの本当の気持ちを綴った手紙をお兄さんのところに持ってきたところで、ヴァイオレットがそのお兄さんの拒絶(他者への暴力)を受け止めるという描写が入ります。

 ラストシーンですが、この後にヴァイオレットがもたらしたルクリアの本当の気持ちを綴った手紙、言葉を受け取って、ルクリアのお兄さんの「世界」との「断線」がちょっとだけ縫合されたところで物語は終劇しています。

 遠景にもう疎通できない故人の物語が描かれているからこそ、まだ生きている生者との疎通が大切なものとして描かれる……というのは、同京都アニメーション作品だと『響け!ユーフォニアム2』の第12話を連想させられます。↓


参考:まだ生きている大事な人にちゃんと想いを伝えておくこと〜響け!ユーフォニアム2第十二回「さいごのコンクール」の感想(ネタバレ注意)


 「世界」について。

 ルクリアのお兄さん、ヴァイオレット……と「世界」と「断線」してしまった実存(=登場人物)を描くにあたって、だからこそ「世界」を美しく描くということをやっている作品であるようです。

 今話では、塔の上から見たライデンシャフトリヒの街の美しさという描写と、ついにリリースされたオープニングが淡々と「世界」を描いているという表現が、重なりながら視聴者にせまってきます。

 あの、『AIR』以来ゼロ年代ギャルゲーフォーマットのOPの呪縛から逃れられなくて、『響け!ユーフォニアム』でさえ美少女キャラクター連続カットインみたいなOPを作っていた(え)京都アニメーションが、ついに実存(ヴァイオレット)と「世界」だけを淡々と描くなんてオープニング映像を作ってくるなんて!

 そんな感じで「世界」を美しく描いておりますが、やはり、「世界」の描写には故人、死、といったものが連想されるようにも演出されていると感じます。

 前回の感想でもリンクを張りましたが、『響け!ユーフォニアム2』第11話の、墓地でのシーンと同系のニュアンスですね。(故人である滝先生の奥さん。今では亡くなった遠い歴史の中を生きてきた人たちのことが連想される感じに演出されている)↓


参考:響け!ユーフォニアム2感想/第十一回「はつこいトランペット」(ネタバレ注意)


 今作ですと、滝先生の奥さんのポジションはギルベルトが担っています。塔の上からのライデンの景色も、もともとはギルベルトがいつかヴァイオレットに見せたかったものでした。

 失った人が見せたかった景色が美しいとはどういうことなのか。大事な人を失っても、「世界」はそこにあるということだと思います。

 もう一歩踏み込んで、失った大事な人も、あるいは「世界」の中にいる……くらいまで表現しちゃっているでしょう。うん。しちゃってる……よね。

 文芸評論家の三浦雅士さんが、「死」の世界とは「風景」のことであり、生者は「死」をむかえると(自然、風景といった)「世界」の方にいってるという世界観・死生観があり、それは小林秀雄から澁澤達彦に繋がる、日本文学の大事な系統の一つだといった趣旨のこと(かなりざっくりとですが)を述べられております。

 昔、仙台文学館の澁澤達彦展にこられた時の、わりとクローズドな三浦雅士さんの講演で仰ってた話なので、明示的に書籍には掲載されてなかったりしたらゴメンなさい。

 僕はこういった死生観に、アニメ―ションの語源とも言われる日本のアニミズムの考えも関係してるんじゃないかなんて考えたこともあります。何気ない石に、木に、ものに魂的なものを見る世界観と、そこに「死」の世界とのパスを感じる捉え方は近い気もするのです。

 ここまで話を大きく広げてみたところで、先ほどの疑似ヴァイオレットであるルクリアのお兄さんの「世界」との整合性が縫合される物語に戻ってみると、より、淡々とすごい領域を描いているな〜という感覚が味わえると思います。

 実存(登場人物)が「世界」との整合性を回復する瞬間が、故人とのパスが縫合される瞬間と、同義で描かれる。そのきっかけが、生者との「想い」の疎通(今話ならルクリアの本当の「気持ち」を汲み取った手紙)であるということ。

 ヴァイオレットは、その瞬間を手助けする代筆者、「代役」のポジションです。

 本人ではないけれど、ルクリアは疑似ヴァイオレットなので、大事な人への本当の気持ちを自分では紡げないのがヴァイオレットと同じなので、そのエンパシー(潜在的な共感)を媒介に「代役」として、ヴァイオレットがルクリアの本当の気持ちを言葉にできたのです。

 そうなると。

 今話で、ルクリアはお兄さんに本当の気持ちを伝えられた。

 お兄さんは「世界」との整合性をちょっとだけ回復できた。

 二人はある程度報われているのですが、果たして、ヴァイオレットは?

 ヴァイオレットはギルベルトに本当の気持ちを伝えられる時がくるのでしょうか。「世界」との整合性を回復できる日がくるのでしょうか。

 長い、心の復興の物語です。「破綻的な出来事」のあと、戦後という世界設定が効いています。

 本作のシリーズ構成の吉田玲子さんは、同京都アニメーション作品の『たまこまーけっと』をはじめ、東日本大震災後の作品には、何らかの形で心の復興や縫合の物語を織り交ぜているフシがあります。エライ人からのディレクションというよりは、ある程度吉田玲子さん本人がそういう要素を意図して入れているのかもしれないと個人的には思ってるのですが。

 『ハイスクール・フリート』(シリーズ構成は吉田玲子さん)にすら、そういう要素がある……というのは、意外と他のブログとかでは書いてない話だったりするんじゃ。↓


参考:あの日欠けてしまった人の日常(=マヨネーズ)に私がなるということ〜『ハイスクール・フリート』第11話「大艦巨砲でピンチ!」の感想(ネタバレ注意)


 現実の方も、心の復興は途上で、特に故人との、「世界」との関係にまだ一区切りがつかない……という人たちがたくさんいます。

 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、本人も気づかないような「世界」との「断線」をいつか縫合できるのか。たよりなく、助けられながら、細い糸をたどるように進んで行く、心の復興との併走の物語でもあると思うのです。

→Blu-ray



→主題歌



→前回:『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』第2話:戻ってこない……の感想へ
→次回:『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』第4話:「君は道具ではなく、その名が似合う人になるんだ」の感想へ
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