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 相羽です。

 アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン(公式サイト)』第4話:「君は道具ではなく、その名が似合う人になるんだ」…の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 カザリ村=「共同体」。

 外の世界=「競争原理」、です。

 京都アニメーション作品には、作品をまたいで続いているテーマみたいなものがあるのですが「共同体」もその一つです。

 ほぼ全ての京都アニメーション作品にこの「共同体」要素は入っているのですが、近年、特におそらく東日本大震災以降の文脈で作られている「共同体」要素が強い代表作を二つあげてみるなら、


●小林さんちのメイドラゴン(当ブログの感想

 と

●たまこまーけっと〜たまこラブストーリー


 です。

 で、武本康弘さんが『小林さんちのメイドラゴン』の監督で、吉田玲子さんが『たまこまーけっと』〜『たまこラブストーリー』のシリーズ構成・脚本です。

 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の今回第4話「「君は道具ではなく、その名が似合う人になるんだ」」は、武本康弘さんが絵コンテで吉田玲子さんが脚本という、まさに京都アニメーション作品における「共同体」物語のエッセンスが凝縮された一話になっている感じなのでした。

 アイリス(とそれに付きそうヴァイオレット)の帰郷、という物語。

 これがもう、『小林さんちのメイドラゴン』最終回のラストが小林さん(とそれに付きそうトール)の帰郷シーンですので、今話はもろに『小林さんちのメイドラゴン』アフター的な位置づけなのですね(笑)。

 異質者=トール=ヴァイオレット……を迎え入れる、一時の休息所としての「共同体」という構図も同じです。

 では、『たまこまーけっと』〜『たまこラブストーリー』との関連の方は?

 これは、もろに(ある意味)旧来的な「共同体」から一度出ていった娘が帰ってくるということで、アイリス=(『たまこまーけっと』の)さゆりさん(「うさ湯」の娘さん)でしょう。

 「うさぎ山商店街」=「カザリ村」、ですね。

 『たまこまーけっと』〜『たまこラブストーリー』はたまこ視点なので、たまこが一度「共同体」から出て行っても、さらっと戻ってきたりしてイイんだ! と気づきを得る……という方に物語の力点がありましたが。

 なるほど、逆の一度外に出た方のさゆりさん視点からすると、「うさぎ山商店街」は外の世界で疲れた時に時々は帰ってこられる休息所としての「共同体」だったんだな……というのは今話であぶり出される視点です。

 温かい休息所としての「共同体」が描かれる一方で、それと対照される二つの「競争原理」も描かれます。

 「競争原理」の一つ目、戦争。

 一応、リアルの方の世界史の解釈ですと(これも西欧史観という限定がつくのですが)、競争原理、資本主義、合理主義のトリプルコンボが帝国主義に発展して争いに争って辿り着いたのが(めっちゃざっくりとは)第二次世界大戦という感じです。

 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の物語は「戦後」なのですが、やはり戦争のきっかけは資源獲得競争(=競争原理)だったのがさらっと説明されます。

 カザフ村は、そんな外の世界が「競争原理」の果てに行きついた戦争から、距離をとることができていた「共同体」というポジションです。

 「競争原理」の二つ目、恋愛。

 いちおう、一人の異性を競争で奪い合う類の事柄ですので、けっこうな数の創作作品で「競争原理」側の事項として扱われます。

 京都アニメーション作品でも恋愛は「競争原理」要素として描かれていて、それこそ「共同体」と「競争原理」を主題の一つに描いた『響け!ユーフォニアム』では、葉月の秀一への恋愛要素は「競争原理」側の要素として描かれるのでした。↓


参考:響け!ユーフォニアム番外編「かけだすモナカ」の感想〜椅子に座れなかった存在への抱擁(ネタバレ注意)


 今話も、アイリスのエイモンへの恋愛要素は「競争原理」要素として描かれています。

 アイリス、恋愛=「競争原理」に敗北して、その代償行為として「共同体(=カザフ村)」から出て、外の世界で更なる「競争原理」にさらされていた……というポジションの子なのですね。

 さて、「共同体」の要素と、「競争原理」の要素を見てきましたが、基本的にこの二つは相反して、相克します。

 「競争原理」で勝ち抜くために弱い人間を置いて進歩だけを追求していくと、弱い人間も込みで成り立っていた「共同体」は崩壊してしまうからです。

 「共同体」と「競争原理」って、基本的に矛盾するものだったの? という方向けには、この話の基本を分かりやすく書いてくれている仙台在住の「ねざめ堂」さんというおじさんがおるんじゃ。↓


参考:『3月のライオン』(アニメ版)感想 А峩チ茵廚函峩ζ餌痢廚離丱薀鵐好押璽燹燭佑兇疇


 この記事中には京都アニメーション作品における「共同体」と「競争原理」の話も触れられてるので、読んでおくと良いんじゃ。

 で、このそのままだと相反する「共同体」と「競争原理」を、何とか「両義」に成立させられないか? この二つをお互いに否定し合うものではなくて、同時に存在できるものとしてその存在を捉えなおしていけないだろうか? というのが、もうここ最近の京都アニメーション作品でずっと描いていることです。

 これ、論理学的には「排中律の排除」ということで、まあ仏教とかそういう方面の話になるのですが。『境界の彼方』とか、かなりの程度ブディズム(仏教)チックな作品だったりしましたからね。

 今話でも、案の上「共同体」志向(=主にカザリ村のアイリスのお母さんの志向=結婚して「共同体」維持……とか)と、アイリスの「競争原理」志向(=外の世界=ライデンで優れた自動手記人形を目指す……)とがバッティングして、この両者が「分断」される様が一旦描かれます。

 その「分断」を縫合するものとして描かれるのが「手紙」。

 ヴァイオレットが代筆した「手紙」を媒介にして、アイリスのお母さんとアイリスの「分断」がちょっとだけ解消される、「共同体」と「競争原理」はもしかしたら同時に存在できるのかもしれない……というところで物語は終劇しています。

 で、第3話と同じパターンなのですが、ゲストキャラ(第3話だとルクリア、今話だとアイリス)の物語はちょっとだけ良い感じになったのですが、じゃあヴァイオレットは? という所を意識させる引きになってます。

 「競争原理」っていうか、戦争でもうボロボロになってるのがヴァイオレットなのですね。


 「この景色が"大したもの"という言葉にふさわしい気がします」


 第1話のホッジンズいわく自分が炎に焼かれていることに気づいていないヴァイオレットが、一時「共同体」=カザフ村の景色に癒されるという場面ですが、ヴァイオレットはどうして自分が傷つき切ってるのか自分では今一つピンときていないという悲しい感じの場面でもあります。

 そこで、今話のサブタイトル回収。


 「君は道具ではなく、その名が似合う人になるんだ」


 「道具」の方が、「競争原理」と相性がよい言葉です。

 人間を消耗品の「道具」と捉えた方が、基本「競争」では勝ち抜きやすいんで。

 一方で、アイリス=花の名前は今話では、アイリスの両親(家族)がアイリスに付けてくれたという流れなのですから「名」は「共同体」側の要素です。

 だから、このサブタイトル、翻訳するなら「競争原理」に埋没せずに「共同体」を大事に、ということになるのですが。

 アイリスが一面の花畑から名づけられたのに対して、ヴァイオレットは一輪だけ咲いてる儚いヴァイオレットから名づけられたのです。

 この危うさと儚さ。

 「共同体」の最小構成要素は、一般的には「家族」で、さらに「家族」の基本条件は男女の愛(まあ、お父さんとお母さんですね)です。

 「共同体」も大事にねって言うけど、ヴァイオレットを愛するギルベルトはもう戻ってこない。

 それでも、「競争原理」(=から行きついた戦争)に焼かれたその身で、この「世界」で生きていくとしたら。

 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』はそういう物語です。

 そして、「世界」を(情景描写として)淡々と美しいものとして描いているのです。

→Blu-ray



→主題歌



→前回:擬似ヴァイオレットとしてのルクリア〜『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』第3話の感想へ
→次回:『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』第5話:…の感想へ
当ブログの『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』感想の目次へ

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