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 相羽です。

 公開初日に観てきました、映画『リズと青い鳥(公式サイト)』の感想です。

 本映画に加え、同京都アニメーション制作作品のうち、『響け!ユーフォニアム(2)』・『涼宮ハルヒの憂鬱』のネタバレが本記事中には含まれます点をご注意ください。

(以下、ネタバレありです。)
 TVシリーズから続いて、希美はもう(というか本当は最初から)「特別」じゃないよというのが描かれつつ、でもみぞれからするとそういう希美でも愛してるという部分も描かれつつ。

 希美がみぞれからの愛情をそのまま受け取れるかというと、特に二人の関係性が変わってしまってからは、そのままは受け取れないところもあり(希美が「特別」でないこと、自分の方がみぞれより才能がないことを突きつけられちゃうから)。

 それでも、希美の方も、何らかの意味でみぞれが大事なのは確かで、二人の関係性が変わってしまってからも、みぞれのことを「支える」という。

 ラストは、学校(おそらく「鳥かご」の比喩)から出ても二人で並んで歩いているけれど、分かりやすい意味で二人が伝わり合えているのかというと、それはイチかゼロか、白か黒かみたいな分かりやすい話じゃない。

 伝わり合えているのか分からないし、何らかの意味で成就する類のものなのかも分からないけれど、希美からみぞれへの気持ちにも、みぞれから希美への気持ちにも、何らかの真実性はあったんじゃないか。

 真実性という言葉を使ってみたけれど、そういう「何か」。何となく生きていると、特に大人になってせわしく生きていたりすると見落してしまいがちだけど、その「何か」は世界にある、あったものだし、それは美しいというのを「記録」してるような雰囲気の映画でありました。

 ◇◇◇

 希美とみぞれが本編の中心ですが、優子と夏紀も出てきて、全体的に旧南中学出身組の話になっています。

 『響け!ユーフォニアム』という作品における、旧南中学出身4人の「共同体」の物語がどういうものだったのかは、彼女たちの物語が一区切りする『響け!ユーフォニアム2』第4話の感想・考察記事を参考にして頂けたら幸いです。↓


参考:響け!ユーフォニアム2感想/第四回「めざめるオーボエ」(ネタバレ注意)


 より丁寧に『響け!ユーフォニアム』で描かれる人間関係の「共同体」を分析した記事としてはこちらもあります。↓


参考:まだ生きている大事な人にちゃんと想いを伝えておくこと〜響け!ユーフォニアム2第十二回「さいごのコンクール」の感想(ネタバレ注意)


 一度希美がいなくなって壊れてしまった旧南中学出身「共同体」が、劇中の時間で二年生時、話数では第2期第4話で再構築されるのですが、その時の人間関係は、


 希美→←みぞれ←優子←夏紀(サポート)


 といった感じでした。(より詳しい意味合いは上記参考記事を参照です)

 これの、


 希美→←みぞれ


 の部分ですね。

 ざっくりとは希美とみぞれがよりを戻して一区切りとなってしまっていたので、それでイイのかな? 感を感じていた部分でありました。

 京都アニメーション作品の流れ的には、『ハルヒ』的な「閉鎖空間に二人きり」みたいな人間関係は、その後否定的に描いているフシがあります。

 その流れからすると、希美とみぞれの二人の関係に戻ってしまって、それでイイのかな? というのは感じていた部分だったのです。

 なので、この二人の関係に改めて焦点をあててくれた今回の『リズと青い鳥』は、やり残していた部分にちょうどスポットライトを当て直してくれたなぁと感じた部分だったのでした。

 学校という「閉鎖空間」に二人きりの人間関係……ですからね。まさに『ハルヒ』の「閉鎖空間」にキョンとハルヒだけ……みたいな人間関係で、それが世界の全て! みたいなのは、閉じすぎていてやはり問題があるわけです。

 解決方法としては、『ハルヒ』以後のその後の作品でも描かれていたものですが、二人だけにとどまらない、第三の貫入者に開かれていく……というのがあって、それは『リズと青い鳥』でもある程度描かれていたと思います。

 みぞれにおける、後輩の剣崎梨々花の存在ですね。

 希美とみぞれの二人だけの関係、それが世界! 状態だったみぞれの世界に、新しい参加者として入って来てくれる存在として梨々花は描かれていたと思います。

 みぞれが梨々花も泳ぎに誘うのは、みぞれの人間関係が梨々花の貫入でちょっと開かれたという描写かと思います。そして、それに戸惑う、というかイイ顔をしない希美w

 逆に、希美の方に、希美とみぞれの関係が終わってもサポートに入ってくれるような主要キャラが、今回はいないのですよね。

 TVシリーズの第2期の方ですと、希美が北宇治高校吹奏楽部という「共同体」からドロップアウトしてる間に、何かと希美を気にかけていたのは主人公の久美子の役割でした。

 どの程度意図的かは分かりませんが、その久美子は今回はモブキャラ的なポジションにおさまっていて、特に希美を助けてくれるような立ち回りはしてくれません。

 なので、ラストはみぞれ以上に、希美はどうするの? 的な、ある意味オープンエンド(明示的な解決を示さない終わり方)になっています。

 ここで、TVシリーズで(みぞれが希美の方に戻っていってしまったので)零れ落ちた優子に夏紀が現れてくれたみたいな感じで、希美のサポートに入るみたいな人が現れてくれてラストだったらかなり分かりやすかったのですが、やっぱり、そういう分かりやすい物語にはしたくなかったのでしょうね。実際、その微妙に解決してない感じが、機微になっている映画かと思います。

 分かりやすくない表現としては同じく、物語の途中で、希美とみぞれそれぞれが童話『リズと青い鳥』では、リズと青い鳥のどちらにあたるのか? という役割が入れ替わるのですが、「相手(他人)の立場を想像する」という表現において、かなり文芸的だったなぁとも思いました。

 アニメーション映画つながりだと、近年のヒット作である『君の名は。』で、不思議な力で入れ替わりました!(ドヤァ)というギミックで表現していた、「自分が他者かもしれない」という表現を、童話『リズと青い鳥』というシンボルを使って、リズと青い鳥のどちらに自分を重ねるか? その部分で希美とみぞれでがシンボル(象徴)として入れ替わる……というギミックで表現していたので、この、分かりやすくないけどあえて詩情性を優先してみました! みたいな表現は京都の会社が作ってる映画っぽいなぁとか思いましたw

 ラストでみぞれに対して希美が口にした「支える」という言葉は、『響け!ユーフォニアム』シリーズ的には重要なキーワードで、たとえば番外編「かけだすモナカ」で葉月が口にした言葉ですね。麗奈や、今作だとみぞれみたいな才能がある人が勝ち進んでいく類の道とは別に、「支える」という道のカッコ良さ、生き方もある。↓


参考:響け!ユーフォニアム番外編「かけだすモナカ」の感想〜椅子に座れなかった存在への抱擁(ネタバレ注意)


 希美は「特別」じゃなかったという話ではあるのですが、才能があって、競争を勝ち進んでいけるような意味での「特別」ではなかったのだけど、ちょっと違うカタチでの「特別」に堕天(これも、当ブログの一連の感想記事で使っていた言葉ですが)する話でもあると思いました。

 5000ユニークアクセス超えの人気記事でありました、『響け!ユーフォニアム』(一期)最終回感想のこちらの記事で書いてみたところの、麗奈的な「特別」ではなく、夏紀先輩的な「特別」ですね。↓


参考:響け!ユーフォニアム最終回の感想〜ポニーテールと三人のハルヒ(ネタバレ注意)


 これはさすがに意図的なキャラデザだと思うのですが、希美も「ポニーテール」の記号持ちです。

 なので、才能で勝ち抜くみたいな、麗奈的、あるいは今作だとみぞれ的な意味での「特別」ではないのですけど、劇中でみぞれが口にしてる通り、希美はみぞれにとっては変わらずに(少し別な意味での)「特別」なのですね。

 なのだけど、そんなみぞれの告白を、希美がそのまま受け取れているかというと、そのままでは受け取れない、「伝わってない」。みぞれの愛は希美に「伝わってない」。希美の嫉妬や悲しみも本当の意味ではみぞれに「伝わってない」。

 それでも、お互いを大事だと思う、最初の方で書いた言葉だと真実性のような「何か」はあって、そういった「何か」をか細くお互いに共有して、「伝わらない」ままの美しい時間を希美とみぞれは生きている。

 一昔前の深夜アニメオタク層が好んだような方向での(二次元的な)記号的な表現でもないし、一方で実写で描く類でのリアルに寄せた表現でもない。そのどちらとも重ならない領域を示す言葉が見つからない(あるいは、本格的に美術評論・映画評論などをされている方は、ピンポイントな専門用語を知っておられるかもしれませんが)、本当に『リズと青い鳥』でしか表現できない領域を表現していた映画だったと思います。

 ◇◇◇

 「伝わらない」、でも? みたいな話に関しては、同山田尚子監督の映画『聲の形』を、原作漫画版と横断しながら語ってみた、漫画を語るWEBメディア「マンガタリ」様で書かせて頂いたこちらの記事なども参照にして頂けたらと思います。↓

参考:本当の気持ちが伝わらないのに幸せ?漫画「聲の形」の魅力を紹介/マンガタリ





→前回:響け!ユーフォニアム2最終回の感想〜全てに終わりがあるとしてもゆかりにまつわる音楽を響かせることへ

【関連リンク0:2018年の京都アニメーション作品(映画)第一弾の感想記事】

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『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の感想へ
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