本日は活字部門をお送りします。

 今年は年間50冊強と読みまくったんですが、意外なことに一番迷わなかった部門です。僕的に、この5タイトルしかないだろ、みたいな。



第5位
京極夏彦『姑獲鳥(うぶめ)の夏』


 「――君を取り囲む凡ての世界が幽霊のようにまやかしである可能性はそうでない可能性とまったく同じにあるんだ」


 今年衒学小説にハマるきっかけになった一作。京極堂シリーズ、まだこの一冊しか読了してないんですが、来年は全部読みますよー。
 作中序盤で繰り広げられる衒学それ自体がまず面白い、そしてさらにその衒学が後半で描かれるテーマの伏線になっていて、結末、帰結にあたりストーリー展開とがっちり手を握って一つのテーマを強烈に読者に伝える……というこの手法にアカデミック崩れ(読んだ時はまだ崩れてなかったんだけど)の僕としてはがっちりと心を鷲づかみにされました。これをきっかけに竹本健治とか、衒学が効いてる小説に傾倒したなぁ……。この傾向は来年も続くと思います。衒学、堅苦しいなぁという方には好まれんでしょうが、もうしばしおつき合い頂けたら幸いです。


姑獲鳥(うぶめ)の夏
京極 夏彦
講談社文庫
定価:¥ 840
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第4位
今野緒雪『マリア様がみてる』シリーズ


 仏像もいい。でもマリア像もまた違った美しさがあるんだ、って。


 言わずもがな、今年出会えた僕の心の潤滑剤にして癒しにして拠り所(言い過ぎ)。各巻各巻読了後には温かい気持ちになれる、とても良質な成長物語、変化の物語、他者との相互理解物語を実に自然に心にしみ込んでくる文体で書いてくれています。
 今年の僕の言及件数トップじゃないでしょうか。コレからもガンガン言及、引用していくので、ランゲージダイアリーの読者にとっては必携の書です(^_^;。とりあえず、1〜3巻に相当する「マリア様がみてる」、「黄薔薇革命」、「いばらの森」くらいまでを読んでみましょう。僕的にもう一歩深くハマるきっかけになった「いばらの森」までは初読で読んでみて欲しい所です。ただのライト百合ノベルではなく、文芸的な機微も含まれているステキな作品なのだということが分かると思います。


マリア様がみてる
今野 緒雪
コバルト文庫
定価:¥ 480
Amazonで購入




第3位
三田誠広『デイドリーム・ビリーバー』


 それから、声を強めて付け加えた。「<部長>と呼ぶのはやめてくれ。僕の名前は<デイドリーム・ビリーバー>。略して<DB>。これからは、そう呼んでほしい」


 今年ついに巡り会った三田誠広の絶版最高傑作本。噂通りの超絶傑作作品。僕が死ぬまでに幾度と無く繰り返し読むことになるであろう、確実に人生の中の1作という本です。「どうせ死んでしまうのに何故生きるのだろう?」、「現実とは何か?」、「宇宙とは?」、etc、三田誠広が追いかけてきた文学的、哲学的テーマのあらゆる解答が凝縮されています。そんな、文学的、哲学的テーマの昇華と、敵対組織である新興宗教団体に対しての決起という物語上のクライマックスがシンクロする終盤のカタルシスはヤバイ、感動、というかむしろ燃えです。コビトの復活に人間の生きる意味を見、上述の主人公の決意にこの不可思議な世界に投げ出された一存在としての矜持を感じて欲しい。
 閲覧者の皆様で古本屋で見かけたという方は是非ご一報を。本代+郵送代+謝礼で郵送して頂きたいと思います。本当、いつか絶対手に入れてやるんだ。


デイドリーム・ビリーバー 上 下
三田誠広
トレヴィル
完全絶版本




第2位
山田風太郎『明治断頭台』


 「政府というものは、正義の政府でなければならない。――そうあらせるためにだ」


 天才山田風太郎による、伝説の探偵小説。是非とも死ぬまでにラストエピソードまでを通して読んで欲しい。ミステリの解決編にあたるラスト30ページの衝撃、

 マジで凄いって!!

 ここまで言葉というものを使って読み手に衝撃を与えることができるのか。僕はあまりの衝撃に、深夜に読了後、意味もなくコンビニまで歩いたほどでした。「言葉は無力だ」などと宣う人も世の中にはいますが、それがいかに間違っているかがこれを読めば分かります。言葉とは、これほどまでに人の心を揺さぶることができる。その到達点を見せてくれた、山田風太郎の超絶技巧のプロット、その神懸かり的な言語構成力が存在した証しがこうして一冊の本に収まってること自体が一つの奇跡です。


明治断頭台―山田風太郎明治小説全集〈7〉
山田 風太郎
ちくま文庫
定価:¥ 998
Amazonで購入




第1位
奈須きのこ『空の境界』


 人間はひとりひとりがまったく違った意味の生き物。
 ただ種が同じだけというコトを頼りに寄りそって、解り合えない隔たりを空の境界にするために生きている。
 そんな日がこない事を知っていながら、それを夢見て生きていく。


 しかし今年の1位はコレしかないです。一話ごとに、「俯瞰」、「痛覚」、「矛盾」、「記憶」、そして表題「空の境界」といった概念を濃密にテーマとして絡めて煮詰めきってるのが凄まじいです。「テーマとして絡めて」とか簡単に言っちゃってますが、何気ない情景描写にまでそのような概念が象徴的に絡まっていたりと、徹底しています。鬼です。
 そのように一話一話が秀逸であるだけでなく、全話を通してみると、それはそれでしっかりと一本通った伏線、テーマが縦軸として存在するという凄まじさです。全ての伏線、伏せられていたテーマの意味が明かされる、ラストに驚き、そしてその切なさに泣いて欲しい。概念云々だけじゃなく、ストレートに切なさが残留する恋愛小説としても読めます。
 初読で満足できず、短い期間に読み返した小説というのも何かと多忙になってきた大人になってからは稀です。そのウチ、当ブログ内にて各話ごとを徹底的に煮詰め解体するという企画をやってみようかなーなんて考えているんで、未読の方は教科書代わりに是非。


空の境界 上
奈須 きのこ
講談社ノベルズ
定価:¥ 1155
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空の境界 下
奈須 きのこ
講談社ノベルズ
定価:¥ 1260
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 以上、活字部門をお送りしました。4部門なんで本来ならコレで終わりなんですが、実はもう一日だけ続きます。明日、1作品だけ、ランゲージダイアリー的2004年、ベスト・オブ・ベストを発表いたします。今までの4部門内にて、未発表の1作です。

 一体何が?

 ほどほどに楽しみにしてお待ち下さい(^_^;。