昨年12月25日発売の新作は、続・バラエティギフトとでもいうような短編集。「図書館」をキーワードにした短編5連。趣味が読書という関係上、図書館にも色々と思い入れがある一読者としては、思わずニヤけさせられてしまう短編集でした。

 以下、ネタバレ有りです。




●静かなる夜のまぼろし

 既に一度「コバルト」掲載時に感想書いてるので繰り返しになりますが、若蟹名静様ステキのクリスマス短編です。

 例によって古典(『マッチ売りの少女』)を本編に絡めながら、『マッチ売りの少女』の蟹名的解釈(というか今野的解釈)、炎に揺らぐ幻像の幸せ、幻像の佐藤聖、そうじゃなくて、幻像ではなく本物の佐藤聖に正面から自分を見て貰いたいと、ロサ・カニーナ事件に繋がる構造が秀逸です。

 マッチの炎で幻視ユラユラは、蟹名様じゃなければ間違いなく危ない人ですが、蟹名様なのでオールOK。僕はこれから毎年クリスマスにこの短編を読んで、僕も一人幻視ユラユラ気分を味わいながら過ごしたいと思います。めっちゃ孤独なクリスマスです。

●ジョアナ

 前巻『特別でないただの一日』の、瞳子物語を瞳子視点から再構築したもの。これも古典『若草物語』を絡めているんですが、瞳子からの祐巳評が「物語の中とは違ってまったく人見知りしないベス」になっています。これが、別に否定的なニュアンスじゃないんだよなー(苦笑いしながら頭下げてるし)。瞳子における祐巳認識もここまで変わってきたのかとか、わざわざこの短編集に瞳子視点の物語を書き下ろしたワケとか、色々想像すると妹候補としては瞳子の方が先んじてるのか?なんて思ってしまいますね。何気に瞳子ちゃんが有能なのも描写されてます。属性として表面上凡人キャラの祐巳とは、有能な瞳子の方がペアとして映えるかも、なんても思ったり。あー、可南子の方の『特別でないただの一日』時の内面描写も知りたかったり。

●チョコレートコート

 これは、マリみてにしては珍しく、お互いの想いがすれ違ったまま、特に救いもなく終了してしまう話です。すれ違いから、関係性の再構築を描くのがマリみての十八番なのに、これは珍しい。単に短編だから尺が足りなかったのか?という見方もできますが、まあいつもいつも関係は修復されていいように治まるワケじゃない、こういうこともある……という話だと思って捉えると、関係性がちゃんと再構築された種々のマリみてエピソードと対比されて面白いです。

●桜組伝説

 これは、ノスタルジーを感じることができた一話でした。あー、やっぱそういうピコ伝説ってどこの高校にもあるよねー、みたいな。個人的にはどっちが現実かよう分からなくなるような認識系SFチックな白雪さんと白妙さんの話が一番ツボでした。

 時々挿入されるマリみてで自分語りですが、僕の通ってた高校にもこういう伝説話のたぐいはあって、当時柔道部やりながら放送部にも所属していた僕は、一つレポートにまとめて、ローカルのラジオ地方局経由で電波に乗せて放送発表したりしましたよ。懐かしいなぁ。その伝説は、僕の高校にあったエレベータは、階に辿り着くと「○○階です」という音声アナウンスが入るんだけど、それがたまに「一階です」とか「二階です」とかじゃなくて、「魔界です」というアナウンスに変わって異世界に通じる時がある……という今考えると甚だバカバカしいものだったんですが(^_^;でも、もうラジオで発表しちゃったから遅いや。若気の至りですな。

 でもそんな感じで伝説を検証するというエピソードが、個人的な経験もあって感情移入できて楽しめた一編でした。

●図書館の本

 で、僕的に今回の短編集で一番好きな話がコチラ。紅薔薇様だ、黄薔薇様だと移り気で「それがファンの特権」という安美さんをカウンターに(決してネガティブキャラというわけではないですが)、みきさんとさーこ様のほんの少しの一期一会の関係は、本に刻まれて世代を超えて残るほどに尊いものだったというのがステキ。「世代を超えて残る」という本の性質を最大限ギミックに使っていて、まさに『イン ライブラリー』にふさわしい一話ですよ。一時の関係性でもずっと残るものもある。さりげなく薔薇様卒業話や、これから訪れる祥子さま卒業話でも描かれるであろう、マリみてのテーマを絡めてあるステキ短編でした。

●全体/イン ライブラリー

 ミステリ風味で、「祥子様はどこに?祥子様を捜せ!」な展開で引っ張るんですが、普通にミステリも何もなく祥子様図書館で寝てたオチでした。ミステリなのか!?と思って気合い入れて読んでた自分が裏切られたのが良い感じでバカバカしくなって笑いました。あの瞳子を待機させておく所とか、普通になんらかのミステリ的物理トリックが仕込まれてるのかと訝しんで読んでしまいましたよ。ふ、深読みし過ぎた。

 それでは今回はこの辺りで。

 それでは、マリみて関係のコメント、トラックバックお待ちしてます。




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