今年になってから大分経ってしまいましたが、今更ながら去年僕が随分と励まされた言葉を一つ紹介。

 「メディアで流れているメッセージも「個性出せ!」「自分探し!」みたいなものが多いけど。それって、自分で自分の中だけ見てもじゅんぐりじゅんぐりで結局分からないですよね。だから……自分が分からなくなったら外を見た方がいい気がする。自分の周りの人や外の人、自分のいる場所をよく見て考えた方が、それに対する自分の反応が出て来て、自分の人格とかするべきことを決めていくと思うんですよ。だって、生まれて何もない世界に一人ぼっちだったら、自分がどんな生き物かわからない。誰かに何かいわれて反応するから、あ、私こういう反応する人なんだってわかるわけだし。」(宇多田ヒカル)

 去年の「oricon style」8/2日号の宇多田インタビュー内での宇多田の言葉ですが、やけに胸にキて心に残りました。創作者、アーティストの中には、「自己主張」という言葉通りに「自分が!自分が!」と自分アピールのみを繰り返す人達も多いんですが、宇多田はそういう人種とはちょっと違う。
 常に外を見ていて、歌う言葉の先に他者を想定しているのがこういった言及から伝わってきます。創作(音楽)を自己表現、悪く言えば自己発露としてではなく、他人との関係の中でのコミュニケーションツールの一つとして捉えているかのような、そんな印象を受ける宇多田の言葉です。

 このような宇多田の態度はかなり前から見受けられて、僕的にずっと好感を持っていました。

 「誰かの為じゃなく 自分の為にだけ 歌える歌があるなら 私はそんなの覚えたくない」(「For You」)

 自分のためだけに歌うのではなく、自分の歌は常に他者を想定しているのだということを力強く宣言している1フレーズだと思います。

 さらにここで僕の宇多田唄解釈を一つ言わせて貰えば、『Distance』収録の「For You」と、『EXODUS』収録の「About Me」を対の楽曲として捉えるとステキ感が増します。

 「I gotta tell you, I wanna tell you (あなたに伝えなければならない あなたに伝えたい)」(「About Me」)

 「あなたのために」、「私のことを」というペアで、自分の内側に閉じこもってそれを自己表現してるだけではなく、他者を(あなたを)想定してつねに外側とコミュニケーションを取りながら歌っているんだと、そんなあなたに私というものを伝えたいんだと、そういう想いが込められているこれら二曲のように思えます。

 以上、「自分が自分が」と自分完全世界の構築が一つの芸術と捉えられがちで、それらを誤解して享受して自我肥大に陥ってる人が多いような昨今だからこそ、こういった宇多田の態度には救われるなぁと感じた、去年一年だったという話です。

 ちなみに、「For You」が収録されてるセカンドアルバム『Distance』は、以前ちらりと話した僕的に僕を救ってくれた一枚とまで思ってる一作で、病的に聞き込んでいたというヤツです。「For You」の他にもう1曲「Parody」というコレも語っても語りきれないほど思い入れのある曲もこのアルバムに収録されているのですが、そっちの方の語りは、また次の機会に。


Distance
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