昨年、大学の卒業式の日に「自分とはいつか見つかるモノではなく、ある時点で自分でそう決めるモノなんだ」という僕にとって去年一番の警句を頂いた僕の尊敬する前大学の先生が、

 「最近は、どんな分野も科学的であろうとしている。経済にしろ、心理学にしろ。でも、実際に科学として認められるような最近の学問は脳科学だけだろうな。近頃は、脳科学の本ばかり読んでるよ」

 とのお言葉を仰っていたとのメールを友人のMネコさんから受け取りました。

 >誰か(あいば)も似たようなことをいっていたなぁと思うようなことをおっしゃっていたので、
 >私も読んでみようかと考えているわけですよ。そんなに、需要があるかどうかはわ
 >からんけれども、HPでとりあげるような暇があれば紹介して下さいよ。

 と、Mネコさんも言ってるので、突然ですが専門に勉強していた名残で、あいばの方から一般人向けの脳科学入門本のお勧め本を今日は紹介させて頂きます。

 僕の尊敬する先生もおっしゃってる通り(この先生は国語教育の先生ですが)、あらゆる分野が科学的であろうとする昨今のアカデミック業界において、脳科学の需要はますます高まっております(だからこそ一時はその道を選択したんですが)。僕の方から付け加えるならば、本当、そう遠く無い未来、あらゆる学問が脳科学と混合していくんじゃないかとの予想を僕は抱いております。医療とかロボット工学とか密接に関係ありそうな理系の分野だけじゃなく、ぶっちゃけ心理、経済とかの文系の分野も。この予想は一学生の予想ですが、一定期間やる気出して勉強していた人間の現場から得た直感的な予想です。参照してみようという方は、自分の専門分野と結びつけられるかな?みたいな軽いモチベーションで、以下の書籍をご覧あれ。

●松沢大樹『目で見る脳とこころ』

 とりあえず最初に読むものとしては、ここらがお勧め。

 なんでって、タイトルどおり目で見えるんで、脳科学に対するイメージが作りやすいから。

 目で見えるっていうのは画像をふんだんに使ってくれてるっていうことですな。これこれこういう活動をしてる時は、脳のこの部分が活動してるんだ……というのを分かりやすく画像のイメージを使って伝えてくれてます。結構、サプライズありますよ。え、この活動してる時、意外と脳使ってないんだ!とか、逆に、こんな時にめっちゃ脳使ってるんだ!みたいな。語り口も一般人向けなんで、入門用にはよろしいかと。ただ、脳のfMRI画像とか見慣れて無い人は最初ちょっとクラクラするかもですが。


目で見る脳とこころ

●酒井邦嘉『言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか』

 これは、ちょいとばかし自分の専門に引っ張られ過ぎたチョイスですが、脳と言語の関係を俯瞰したい時にお勧め。ちょいとばかしチョムスキー(知る人ぞ知る、アインシュタインとかダーウィンとかと並び称される(ハズ)な現代の知の巨人)最高!感が強すぎる一冊ではありますが、「獲得と学習-人間はチンパンジーとどこが違うか-(→言語の点で違う)」、「失語症(→言語を司る脳の部分って?)」、「手話と普通の言語(→どっちも言語なの?)」といった魅力的なトピックに対して知見を提出してくれています。


言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか

●Gakken mook―最新科学論シリーズ『最新脳科学―心と意識のハード・プロブレム』

 最後はちっと上級者向けですが、「意識の多文書モデル」とか「脳の時空理論」とか、正しいんだか正しくないんだかよく分からないんだけど、とりあえず最新の脳理論についてムックにまとめてあります。

 冒頭のチョムスキーインタビューとかは価値高いんじゃないかと。ただ、チョムスキーは本物の天才なので、言ってることが普通の人には良く分かりません。各種インタビューなんか読んでみると、いろんな前段階をすっとばして超高次なこと考えてる人感を受けます。でもまあ、そういう人の話を読んでみるのも悪くない。

 あとは性差による脳の違いとかね。あんまり本格的にやると男女の性差反対派のジェンダー論者が敵に回って騒ぎ出すんであんまりやる気出して扱うのは憚られる分野なんですが、このムックでは1トピックチャレンジブに入れてあります。


最新脳科学―心と意識のハード・プロブレム

 ぶっちゃけそんなに長い期間勉強したわけじゃないので、一般人向けに勧められるストックはこの位が僕の限界っス。あんまり専門的なのになると、全部英語の論文になってしまうのはどこの分野でもまあ同じかと。

 アカデミックに生きるあなたの視野を広げるきっかけになれば幸いです(^_^;