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 <以下ネタバレ>

 「たぶん、幻想だったんじゃありませんか 薔薇さまとかつぼみとか。ただ、憧ればかりが先行して。少しでも近づきたい、彼女たちはそう願っていたんだと思います。側にいれば、きっと素敵なことばかり起こる。そんな幻想を抱いていた。でも、現実にはそんなことないですもの」(乃梨子)

 以前僕が考えたマリみてにおける関係性の発展段階表を再掲すると、

 第一段階:お互いをお互いのイメージでしか知り得ていない段階
 第二段階:お互いがお互いを知ってるがゆえに依存し合ってしまう段階
 第三段階:お互いに自立しながら助け合える段階

 となるんですが、乃梨子が言う「幻想」の話は第一段階のことを指しているのだと思います(既に第三段階にいる乃梨子だからこそ冷静に第一段階が分析できてるというのが既に熱いんですが)。祐巳が祥子に対して序盤に構築していた、イメージ先行の関係性、また最近では可南子が祐巳に対して抱いていた勝手な理想像を押しつけるような関係性、全てこの第一段階であり、今回の茶話会で妹候補になった少女達の描写も、この第一段階の至らなさの確認の意味合いが大きかったのではないかと思います。

 そして、そんなイメージ先行(乃梨子の言う「幻想」)の関係性のまま結局、祐巳らとの関係性を終わらせてしまった今作の少女達に対比されるように、同じく登場序盤では祐巳に対して第一段階の関係性を構築していた可南子を通して、この第一段階の関係性の昇華が描かれます。ここが今作でめちゃめちゃ素敵だったんで長めに引用。第一段階の関係性だったとしても、それを昇華して捉えることができる。実に素敵な祐巳−可南子の関係の帰結だったと思います。

 「祐巳さまは、不思議な例えをなさったことがあったでしょう?双子の片っぽが火星に行った、みたいなこと。覚えていらっしゃいます?」

 「私、それで気が抜けたんです。気が抜けたと同時に、肩の力が抜けたんでしょうね。無理して一人で戦わなくてもいいんだ、って」

 「私の憧れていた祐巳さまとは、もう会えない。会えないのは悲しいけれど、あの人はちゃんと火星で生きている。顔は似ているけれど別の人間と割り切るならば、地球に残った方ともつき合っていける気がしてきました。で、実際そうしてみたら、思った以上に味のある人間だったものだから。いつの間にか、こっちの方に親しみを感じるようになってきて」

 「祐巳さまは、私の抱いていた祐巳さまのイメージを全否定しないでくれました。あの時、私が見ていた物は全て幻だって言われていたら、たぶん私は救われなかったと思います。幻だったものは、私の想いです。ずっと抱いていた想いを否定されたら、……心を否定されるのは、それはとてもせつないことだから」(可南子)


 この帰結、最高です。今後の僕の人生における人間関係に使っていきたいくらいです。もしもこれを読んでる方がWEB上の僕に勝手なイメージを抱いていて、OFF会なんかで実際の僕にあって幻滅してしまったとしたら、是非ともそのイメージの僕は火星で生きていてると割り切って、地球にいる僕を見て欲しいと思います。

 祐巳−可南子物語のラストシーン。

 「祐巳さま、でも」
 「可南子ちゃんとの約束だからじゃないよ。私が欲しいの、可南子ちゃんとの写真」
 可南子ちゃんは一瞬目をパチクリしたが、やがて笑ってうなずいた。
 手をつないで、ちょっとだけ走る。
 枯れ葉も、カシャカシャと笑っている。
 冷たい風が、気持ちいい。
 可南子ちゃん。――祐巳は空を見上げて思った。
 がんばれ。
 姉妹にはならないけれど、私達は友達だからね。と


 美しすぎ。読んでて僕も「冷たい風が、気持ちいい」感じになった。最高。

◇可南子、乃梨子から、祐巳−瞳子物語へ

 そして、主軸ストーリーの祐巳の妹物語は、この可南子、次に乃梨子、そして瞳子へという形で紡がれていきます。可南子も乃梨子も、最初は瞳子に対して対立するような関係から始まっていたのが、物語を経てキーパーソンになってるのが素敵過ぎ。

 乃梨子は序盤の「銀杏の中の桜」辺りでこそ瞳子と対立するような立場でしたが、「羊が一匹さく越えて」(バラエティギフト収録)辺りの、

 「でも、めげないんですよね、瞳子って。来年は白い糸で刺繍するんだ、とか燃えています。ほんと、ばかでしょう?」
 乃梨子ちゃんが笑ったから、祐巳も笑った。乃梨子ちゃんの「ばか」はすごくやさしくて、愛情のこもった「ばか」だったから。心おきなく笑えたのだ。


 といった乃梨子の描写から、乃梨子は表面上とは裏腹に瞳子に好意を抱いているのが描写されていました。そもそも、乃梨子と瞳子はリリアン一般生徒と比して自我が強いというか、ちょっと一般生徒の中にはとけ込めない有標な性質を共に持っている登場人物として描写されているので、この水面下で形成されてた乃梨子−瞳子の友情には納得できるものがあります。

 そんな関係の乃梨子−瞳子間における今作最重要描写。

 「祐巳様の妹になりたいと思っている?」(乃梨子)
 <中略>
 プイッと教室を出ていってしまった瞳子の後ろ姿を眺めながら、乃梨子はなぜかわかってしまった。
 「……瞳子」
 口に出さなかったのに、その答えが。


 長きにわたる祐巳−瞳子物語もついに佳境に。ここで一役買うのが乃梨子だというのが嬉しかった。白薔薇姉妹の関係の完成っぷりゆえに、もう作中では濃密な描写はないんじゃないかと予想していた新白薔薇姉妹だけに、ここで志摩子さん−乃梨子ではなく、乃梨子−瞳子でもう一物語もってきてくれたのは非常に満足。祐巳−瞳子物語のキーパーソンとして動く乃梨子に期待。

 そして可南子の方は、今作では瞳子といっしょに剣道の試合を見にきているという描写だけでしたが、上述のように祐巳−可南子物語を完結させた立ち位置から、このラストの祐巳−瞳子物語にかかわってくるものと思われます。繰り返しになりますが、最初瞳子と対立気味だった乃梨子、可南子が瞳子のために立ち回るようになるというこの展開は素敵過ぎます。

◇志摩子さん

 僕の一番好きなキャラですが、「レディ、GO!」における、

 けれど、志摩子さんはいつでも祐巳の二歩も三歩も先を歩いていて、とてもじゃないが容易に追いつけそうもないのだった。

 や、今作の由乃視点からの、

 志摩子さんのこういう、臆せずに整然と自分の意見を言う姿勢は、見ていて時々憎らしくなる。ただ、それは嫌いって意味では全然なくて、むしろ逆。自分にはできないことを、簡単にやってのけてしまう友への憧れ。嫉妬と憧れは表と裏だから

 のように、最近ではもう辿り着いてしまったキャラ感があります。僕がよく使う言葉で言えば、超越者ポジションにたどり着いてしまったキャラ(前述の関係性表で言えば、第三段階に辿り着いてる人だし)。
 なんで、今後はその立ち位置を生かして、新しく始まった乃梨子−瞳子物語で乃梨子の導き手のようなポジションで活躍してほしい。乃梨子の物語に志摩子さんは必須なんで、何だかんだでもう少し志摩子さんを見れるのが嬉しい。

◇辿り着いてしまったキャラといえば

 僕的に『マリみて』作中では志摩子さんと蟹名静さまが「辿り着いてる」カッコいいキャラのツートップなのですが、なに気に蔦子さんもかなりこの二人に並ぶほどカッコイイポジションのキャラであります。「ロザリオの滴」では志摩子さんレベルの悩みに助言を与えられる数少ないキャラとして描かれ、静様退場にあたってはシャッターを切らずに見送るというクールな描写があったりしました。そんな蔦子さんにも妹候補が……という今作の面白さは勿論なんですが、むしろ内藤笙子物語で重要なのは、祐巳が蔦子さんにおせっかいを焼くという形で、祐巳もかなり上のレベルまで成長してきている点を描写した所ではないかと思います。志摩子さん、静さま、蔦子さんレベルの強者レベルに近い所まで祐巳は成長してきているという描写。
 この辺りはもう最終回へのタメのようで涙が出そうになってきます。まだまだ近刊では「祥子様が卒業してしまっていなくなってしまったらどうなってしまうんだろう」的な心情描写が入ってラストの課題が残ってるのが描写されてる祐巳ですが、このような成長っぷりを描写されると、それでも、もう祐巳はラストに祥子さまを笑って見送れる所までたどり着けるんだろうなと、『マリみて』物語のラストに想いを馳せられてしまいます。祐巳ちゃん成長したよ。1巻の時とは比べものにならないよ。純粋な主人公成長物語として、ベストなラストを見せてくれそうな予感が漂います。それは最終回の予感という側面もあるので、ファンとしては悲しい予感でもあるんですが。

◇最後に由乃

 残る由乃の物語も進展して、終わりが見えてきました。前述の表からすると、令ちゃんとお互いにべったりという第二段階から第三段階へいくまでの物語が由乃のラスト物語だと思うんですが、令の側からは「茶話会については干渉しない」と由乃の自立に任せるような描写、そして由乃物語において最重要と思われる今作の由乃視点からの令への述懐、

 「私ね、かなり嫉妬したよ。令ちゃんをを見ていて分かったもの。でも、今なら理解できそうな気がするんだ。別の環境で育った未知の人と、新たな関係を築いていくのは、何ていうのかな、すごく清々しい感じがする。だからといって、令ちゃんのことがどうでもよくなるわけじゃないんだね。不思議なんだけど、妹ができても、令ちゃんのことは変わらずずっと大好きなままでいられそう」(由乃)

 が入ります。由乃物語も帰結が見えてきた感じ。妹との新たな関係を作り自立しながらも、令のことは変わらずに好きで……みたいな帰結。その暗示に被せるように、ラストでは由乃の妹候補有馬菜々が登場。こちらもまた敵対してる姉妹の末妹という設定が面白い。自分より剣道が強い妹はイヤという由乃が、剣道一家の娘と関係していくうちにどう変化していくのか。それらの物語の末の、由乃物語の帰結。こちらも楽しみです。

 全体として、作品そのもののフィナーレが見えてくるような(第一部完みたいな一区切りなのか、本当に終わるのかは分からないけれど)今巻で、十二分に堪能できました。次巻が発売される前に、もう一回くらい読み返したいと思います。

 それでは長くなりましたがこの辺りで。


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