それぞれの正しさ、目的、言い分が交差するがゆえに、戦争という悲劇に収斂していく様が十全に詰まっていた1話だったと思います。
●シン
・キレイ言じゃない。戦場では武力で戦わなきゃ、敵は殺さなきゃ守りたいモノも守れない。守りたいモノは仲間がいるミネルバであり(シンの家族を失ってから笑顔を取り戻すまでのきっかけ、現在の居場所として、仲間は重要なファクターを担っている。アニメ版ではレイやルナとの何気ないやりとりににじみ出てる程度だが、小説版なんかだと内面描写の述懐がある)、あるいはミネルバに収容されてるステラかもしれない。そして守れなかったモノは妹と家族であり、これまで戦場で失ってきた仲間(ハイネなど)である(カガリに対してキレイ言と激昂する場面にグフ・イグナイテッドの回想アリ)。
・立場が違えば恩人(トダカ)をも手にかけることになる。またステラを通してエクステンデットも犠牲者であることには気付いていても、戦場では(アウルを)殺す。手はどこまでも汚れていく。

●アスラン
・悪いのは地球軍。正しいのはザフト(というか議長)。オーブが地球軍に付くのなら、ハイネの言う通り「割り切って」撃つしかない。
・オーブを撃つことにまだ迷いがある。またカガリのバイタルな想いを汲んでやれない。そして(おそらく)アスラン自身無意識化に自分の芯の無さに気付いてるがゆえに、未だSEEDを弾けさせられない。ゆえにそれほど実力差が無いにも関わらず、現在では信念と覚悟の量が抜きんでてるキラの前に完敗。

●キラ(カガリ)
・オーブが地球連合に組し、命ぜられるままにザフトを撃つのを止めさせたい(オーブの理念を守りたい)。カガリの想いを汲んでやりたい@キラ。両軍を問わず戦闘での犠牲を最小にしたい。
・戦場で理想(キレイ言)を語っても、戦闘が止まるはずがない。両軍のカテゴリを無化しているため、結果両軍を助けたいのではなく、両軍に無差別に攻撃をしかけて戦場を混乱させていると解釈されている。既存の戦場の価値観では理解されない(タリアも今話では「敵艦として対応」)。

●オーブ
・自国を焼かせないためには、地球連合に組するしかない。地球連合が撃てと言えばザフトも撃つしかない。しかしそれも全て自国を守るため。
・自国の理念は捨てるしかない。しかしまだ自国の理念を捨て切れない人も少なからず存在する。

●ファントム・ペイン
・ステラの弔い合戦。
・現状では、ロゴスやブルーコスモスに言われるままに非道に荷担している。

 と、それぞれに立場があり、それらがめくるめく様に戦場で交差し、結果として悲劇が起こっていく話だったんですが、以下、今話で気になった所。

◇シン、「怒り」、「殺し」といったキーワードに変化無し

 ステラとの邂逅を得て、地球連合で戦場に出てるヤツらにも犠牲者がいる……ということに気付いたのかと思われたのだけど、そこから相手の立場までエンパシーを広げてしまい、戦場にて「怒りのままの武力行使」や「迷い無い殺人」に対して躊躇いが生まれる展開になるかと思えば、そんなことは無し。苦渋の立場があるオーブ艦隊に対してもエンパシーを光らせるどころか迷い無く怒りのままにブッタ斬り、アウルに対してもアビスのパイロットもエクステンデットだと気付いたような描写があったにも関わらず、敵・即・殺で終了。どうやら、ステライベントはシンがマクロに戦闘に対する自分のスタンスを省みるイベントというよりは、ステラ限定でミクロに戦場に守りたい人がいた……という程度のレベルのイベントとして今の所落ち着いている模様。

◇スティングとアウルの対比?

 前EDでは関係が深いキャラ同士がペアで描かれ、スティングとアウルがさも対比されるような位置づけで描かれていたんですが、今話で対比があったと思われる所を強引に考えれば、やられキャラとして、キラの不殺でやられるか(スティング)か、シンの必殺でやられるか(アウル)の対比だけだったと思われる。スティング、アウルの対比というよりは、キラとシンの対比に一役買わされたような状況。アウル、御愁傷様でした。

◇ついにきたカガリ浮上の暗示

 「既に無い命と思うなら 想いを同じくする者を集めてアークエンジェルへ行け!」(トダカ一佐)

 当ブログでは14話の敬礼シーンから、トダカ一佐に関しては後半でアークエンジェル(特にカガリ)支持層が顕在化する伏線だと捉えていましたが、ズバリでついにキました。28話、落とされに落とされ続けたカガリに、ついに浮上に向けての一筋の光明です。タメが長かっただけに、これは燃える。

◇姉想いの弟が最高にカッコいい

 それでも今話の見所は、

 「分かるけど、キミの言うことも分かるけど、でもカガリは今泣いてるんだ! こんなことになるのがイヤで 今泣いているんだぞ! 何故キミにそれが分からない!? なのにこの戦闘もこの犠牲も仕方がないことだって 全てオーブとカガリのせいだって そう言ってキミは撃つのか? 今カガリが守ろうとしているモノを! なら僕はキミを討つ!」(キラ)

 ここ。

 世界がどうこうと大きいことをキラも考えてるんだけど、全てはラクスを守りたいだとか、フレイを守れなかっただとか、カガリの想いを汲んでやりたいだとか、小さな大切な人達に対する想いに立脚してるのがキラはカッコいい。大きい話では未だ道を模索中なんだけど、キラはこの小さな芯の部分だけは揺るがないので、そりゃSEEDも弾けますよ。

 逆にアスランは議長やハイネといった他人の言葉の影響でメインの思考を形成していて、未だ芯を持てずにいるので、そりゃ現時点ではキラに負けますよ。つーか、キラ、ここはブッタ斬ってやるのがむしろ友情だと思った。親友に喝!みたいな感じの一閃で。

 逆に言えば、アスランがここから再びSEEDが弾けるまでの物語が燃え物語。セイバー大破で、さらなる落としパートがアスランに始まるものと思われますが、乗り越えて、再び立ち上がる時に期待です。

◇主人公3人の新機体について

 スーパーフリーダムガンダム、ナイトジャスティスガンダム、デスティニーガンダムが公式サイトなどでフライング発表されてますが、SEEDの新機体は名称にかなり物語上の役割に関する象徴性を持たせるのが特徴です。
 完全にカンですが、それぞれネガティブな象徴とポジティブな象徴を持ってるような気がしてならない。スーパーフリーダムは、ネガとしての、度が過ぎた「自由」は悪にもなるというような意味と、ポジとしての類い希な本当に縦横無尽の「自由」という象徴。ナイトジャスティスは、チェスの駒の一部としての「ナイト」というネガな象徴と、大切な人を守るモノというポジの象徴での「ナイト」、デスティニーは「所詮運命には逆らえない」的なネガな使い方での「運命」の象徴と、「運命の出会い」「運命に立ち向かう」といったポジな使い方での「運命」の象徴と……物語前半でネガティブな感じが出されて、後半でポジティブな意味合いに裏返っていくとかだったら最高なんですけどね。

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