「違う 選んだだけだ」(百目鬼)
今回も堪能しました。
◇
同時発売とあって、表紙の侑子さん&四月一日君の髪飾りが、ツバサ10巻のサクラちゃん&小狼君のモノとシンクロしてるという演出。ツバサ&ホリックは単行本の装丁も毎回凝っていてステキです。
以下、がっつり読んだ人用のネタバレ感想。
![]() XXXHOLIC 6 (6) |
![]() ツバサ 10―RESERVoir CHRoNiCLE (10) |
●百鬼夜行の話
・今夜は用があって来れないひまわりちゃん
侑子さんの「この世に偶然は無い 全ては必然だから」からすると必然的にひまわりちゃんは百鬼夜行に参加できなかったものと思われます。所々に張られているひまわりちゃん伏線です。浄の百目鬼に対してひまわりちゃんが不浄の属性なのかどうかまではまだ言い切れないんですが、少なくとも今回の百鬼夜行に参加していたいいヤツ属性のあやかしとは逆の属性をひまわりちゃんが持ってることが分かります。ここはいいヤツ属性のあやかしである座敷童とひまわりちゃんとを対比させて四月一日との恋物語に関わってくる所なので、伏線回収回を楽しみに待ちたいと思います。
・侑子さんのお店
「あの店はね。これから起こるコトの為に構えたものなの だから四月一日が来た」(侑子さん)
さらに推測されるのは、『ツバサ』で小狼くん達が侑子さんの店を訪れたのも侑子さんの中の「必然」で、「これから起こるコト」に関係しているのではないかという点。『ツバサ』も読んでいると侑子さんの敵が『ツバサ』の飛王達の勢力だというのが分かるのですが、この侑子さん−飛王の対立が、「これから起こるコト」にどのように関わっているのかはまだまだ不明。
ただ一つ、『ツバサ』では所々に侑子さんが飛王のもくろみを押さえるために明らかに多干渉してる場面があるので、その辺りから判断すると『ツバサ』と『XXXHOLIC』はクライマックスで大きな話としてリンクするっぽいということです。『ツバサ』サイドでは「もう一人の小狼」、『XXXHOLIC』では侑子さんが備えてる「これから起こるコト」、その辺りの伏線をシンクロさせつつ、「本当の願い(とそれを叶えるための覚悟)」であるとか「対価の思想」であるとかのテーマもシンクロさせてクライマックスを描いてくれたらと思うと今から期待がとまりませんね。
●昔話だったりいいならわしだったりの話
訓話的なショートエピソード。
5巻の雨童女の、
「人間は尊きものを助けないのに 何故、尊きものが人間を助けなければいけないの」(雨童女)
の台詞しかりで、人外の存在を描くことで人間の奢りへの戒めを描いている『XXXHOLIC』です。ショートエピソードながら、人外の存在あなどりがたしと人外の存在の存在を強調する意味で『XXXHOLIC』の本筋から外れない話だと言えます。
「この世に住まうのはヒトだけに非ず。ヒトが認めしモノだけに非ず。」(侑子さん)
序盤にある怪奇を提示して読者視点の四月一日君を通してそれを読者に体験させつつ、ラストは『京極堂』シリーズの中禅寺秋彦ばりに解体役として登場した侑子さんが超越者の立場から怪奇を解体するという、『XXXHOLIC』の王道の物語パターンが1話で体験できる凝縮された1話でもあります。やっぱり解体演出中の侑子さんの描き方がステキ。この雰囲気を上手くビジュアルで表現する方法は『XXXHOLIC』の卓越してる所です。
●女性と四月一日、百目鬼、それぞれの選択の話
第1巻からずっと続いてるテーマ、侑子さんの、
「今の世界を失っても 居心地のいい場所を捨てても、求めるものを追う 失うものの重さも辛さ分かってて、それでも欲する そのために生きる そういうのが本当の覚悟」(侑子さん)
の台詞に代表される「本当の覚悟」とそれに基づく「選択」をテーマに、シンプルな物語で描ききった中編。
四月一日は「衰弱していく自分」という「失うもの」の重さ、辛さを分かってても女性と逢うという選択を「選んだ」。
百目鬼は「これまでの四月一日との関係」という「失うもの」の重さを分かっていても、女性を射って四月一日を助けるという選択を「選んだ」。
物事は「1=1」で回っていて、何かを選べば何かを失うという重厚な真理をついてる話の分、ラストのエンディングの美しさに救いがあります。
結局女性の素性を聞かないまま、
「人間じゃなくても、おれにとっては暖かくて優しい女性でした」(四月一日)
と語る四月一日で、人間−あやかしの境界を無化するテーマをここでも描き、ラストシーンの百目鬼との関係をこれまで通り続けるという選択を「選ぶ」四月一日の絵で、何かを失ってもやり遂げるという選択と同様に、失いかけたものを取り戻すという選択も可能なことを伝えます。
それら全ての風景を超越者の立場から眺める侑子さん(おそらく侑子さんは「なかなか大変な子」と言われる四月一日の属性、百目鬼の属性、ひまわりちゃんの属性の全てを知った上でこの風景を許容しているんでしょう)がかける言葉は一言、
「良い夢を」(侑子さん)
実に、キレイなエンディングです。
王道のラストに侑子さんが怪奇を解体型の物語だったら、最後に女性の素性を解体して終わったんでしょうが、そうではなくてこのように解体されないなりの残留感を残して締める場合もある……ということに気付かされた1話でした。こっちのパターンも好きです。
●満月としりとりの護法の話
ショート1編。怪異の解体役が侑子さんではなくてサブキャラのおじいさんで、ポジティブな怪異オチというステキな1話。
「言葉で結界を張る」と、4巻辺りで「言葉」をテーマに一物語描いていた『XXXHOLIC』としては、『XXXHOLIC』らしさもにじみ出ていた1話です。こういう小ネタの「言葉」ネタはかなり好き。
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