
WJ感想記事の、第7巻相当部分をまとめてみました。
初見の方へ、僕の今イチオシの漫画作品です。
魅力の一つをあげるのならば、「精神的な何かしらの負荷」→「その負荷の浄化」→「浄化してくれた人物への恩義」という、人間の尊厳連鎖とでもいうような段階かきっちりと踏まえられて描かれている点なんかを挙げます。「連鎖」というのは、今度は恩義を感じた人物が逆に恩義を感じてる対象を救おう(負荷を浄化しよう)と奔走したりするんですね。
現在は、命の危機という負荷をカズキに浄化された斗貴子さん、誰にも認識されないという負荷をカズキに浄化されたパピヨン、幼少体験からくる依存という負荷をカズキに浄化された早坂姉弟らが、今度は逆にヴィクター化という負荷にさらされるカズキを助けようと奔走するという熱い展開になっています。
そして、今週も上記三連鎖が熱い。上の三つのうち、どれか一つでも省略されて描かれてしまうと、読者は唐突な印象を持ってしまうものだと思うんですが、和月先生はそれをしません。
剛太、生きる目的が見いだせないという負荷を浄化してくれた斗貴子さんへの恩義を胸に、所属に反逆。必要な三段階をみっちり描いてくれている、輝きの1話です。1話挿入の過去篇のお手本みたいだ、と僕は思いました。
◇第56話「THE ANOTHER THIRD」
やっぱりカズキ達のもとに剛太来た!って感じで、この好感度キャラの合流はとても嬉しいです。ただ、カズキ→剛太ではカズキはパピヨンとも関係を結ぶくらいにそれまでの所属、立ち位置とかには捕らわれないキャラなんで問題ないとして、剛太→カズキではまだ剛太はカズキを認めていないので、一イベント入りそう。二人とも「斗貴子さんを守る」という点では共通してるので、共有できるものが少しでもあれば共闘できそうです。
ただ、恋愛の場合、この共通要素は裏目。思うに、カズキ→斗貴子では一度命がけでカズキは斗貴子さんを救っているということをやってのけてるけど、剛太→斗貴子ではまだ剛太は斗貴子さんに何もできてないんだよね(今週戦ってくれましたが)、逆に斗貴子さんが剛太を導いてくれたというだけで。剛太、不利です。作品構成的にも、作者の思惑的にも、読者の最終的なニーズ的にも、不利です。
◇第57話「逃避行開始」
今週の感想というワケではないんですが、こんなに掲載位置が下でもこんなに主観的に好きな理由に、どの男性キャラにも、何かしら感情移入できる自分がいるというのがあります。構成とかテーマとか云々で漫画を読む年頃に自分もなりましたが、主観的にどっぷり愛せる漫画っていうのは、昔と変わらずキャラに感情移入して読める漫画なのかな、などとフと思いました。ひたすら真っ直ぐなカズキ、孤高で上昇志向なパピヨン(変態な部分には感情移入できないが)、少年を見守る大人な視点のブラボー、皆、どこかしら感情移入できる自分がいます。
その文脈で、剛太も、なんか恋愛に関して分かるなぁという感じ。女性読者はピンとこないかもしれないし、はたまた僕だけの主観かもしれないけれど、何か、男って惚れてしまうと一方的に女性を守りたくなってしまうという側面があるような気がします。例え、この漫画の場合の斗貴子さんのように、惚れた女性が守ってあげる必要のないほど自分より強い女性だったとしても。女性視点から見るとウザッたかったりするのかもしれませんが、とにかく守りたいという願望、どこか男性にはあるような気がします。
当の惚れられた女性からすると、別に守ってもらわんでも……ってな滑稽さ、現実にもままあるような気がして、ダサ感情移入。それがダサカッコよくなったりすると最高なので、やっぱしこの漫画はやめられません。
◇第58話「エピソード0」
明確な作中悪を置かないまま、謎解き要素で読者を惹きつけているという印象です。ヴィクターも完全悪とは言いづらいし、錬金戦団にも言い分はあるしで、ドラゴンボールで言うフリーザやセルみたいな完全な敵はいない感じ。
でも、武装錬金は非常に特撮ヒーロー物的なので、それも分かるかという感じ。善悪の境界シャッフルこそが最近の特撮なんじゃないかと思うんで。
それはそうと、逃避行に、それを追う特殊能力を持つ集団という図には、古典的な燃えを感じます。山風忍法帖的というか、もっとライトに伊賀の影丸的というか、そんな感じのエンタメを期待。
◇第59話「負けるつもりはない」
新生SUNLIGHT HEARTの描写とか、僕はすこぶるシビレましたが、コレはマズい気がする。ここで、バトル続きになるのは一般読者には飽きられる気がする。ブラボー戦ではブラボーが強すぎるゆえに満足に描写できなかった新生SUNLIGHT HEARTの強さをこの辺りで見せてカタルシスをという意図があるのかもしれませんが。
「最悪の時はちゃんと自分で始末をつける」と言ってるのは蝶野編の時の斗貴子さんと同じですな。タイムリミットとか、所々に蝶野編と絡む要素が入っていて好きです。
コミックス5巻発売です。アンケートと闘いながら描いたであろうヴィクター編を収録。裏話に期待です。
せめてコミックス売り上げで打ち切り回避を!みんな、購入購入!
◇第60話「WIND and LEAVES」
剛太が斗貴子さんのために一時わだかまりを捨ててカズキとタッグ共闘という、それに向けてここ数話で練られてた構成が中々カッコ良く生きました。
そして、斗貴子さんの衣服のみという絵でサプライズラスト。
斗貴子さんは早着替えが特技という設定をイカして脱出してるんでしょうか。というか下着or裸体の斗貴子さんを描くんでしょうか。水着描いていっぱいいっぱいになってる和月先生なんで、そんなことしたら和月先生死にます。なんで、それは無さそう。単行本5巻でもまだ死にたくないみたいなこと言ってたし。
◇第61話「Which is MONSTER」
カズキが作中で最ポジティブに描かれる立ち位置になりましたな。主人公自体は立ち位置としては未熟で、道を模索しながら成長、主人公が最ポジティブの立ち位置にたどり着くのは最後という物語も多いんですが、カズキは既にたどり着いてる感じ。しかしながら、これまで十分にカズキはそういうヤツで、そういう位置に行くまでに成長してるということが描写されているので、違和感はまったく無し。
そして、カズキがすでにたどり着いた感がある分、道の模索者としてある意味読者視点キャラに選ばれたのが剛太。ラストの「どっちが本当の化け物だ…」の剛太の問いは、それこそ読者に考えて欲しいこの作品のテーマの一つじゃないかと。
そして、この手のテーマは単行本コメントなどから察するに和月氏が意識して書いているだろう仮面ライダーを初めとする等身大ヒーローの物語に付き物のテーマです。この前の「仮面ライダー555」では同じテーマに関して、このような表面的な「仲間−敵」、「人間−ホムンクルス(555ではオルフェノク)」という括りを打ち破って、広義の「仲間」、「人間らしさ」を守る主人公を描くという帰結を取ってましたが、この武装錬金はどうなるのでしょうか。今話のラストの剛太で、さらに楽しみ度が加速してきました。打ち切りなんてあり得ない。
◇どうでもいいですが
「大丈夫!なんとかする!!」の所の、言葉の裏でパピヨンと桜花の性質を一瞬で適格に分析する斗貴子さんはステキ。
◇第62話「戦部出撃」
「守りたいものが同じなら きっと必ず戦友になれる」
物語当初から「守る」を連呼してきたカズキだからこそ重みがある、というかカッコいい台詞です。守れたものや守れなかったものもあったなぁと読者はしみじみ。
人食い断ちという変化を見せるパピヨンと、ホムンクルス・即・斬の斗貴子さんを組ませることで、斗貴子さんのホムンクルス認識改変エピソードにもなってます。ますます、敵−味方、人間−ホムンクルスの境界をシャッフルしてくる感じ。
◇第63話「十文字槍・激戦」
普通に動きのあって、これぞプロの絵という迫力のバトルシーンだなと思いつつ、そういった秀逸さの中で動いてるキャラが変態だというギャップが面白かったです。
単行本の和月先生コメントでも、WEB上の武装錬金感想でも毎回反応がイマイチなのか?(アンケート人気が落ちるのか?)と話題になる問題のバトルエンタメの回ですが、今回は僕的には結構惹きつけられましたよ。この戦部の反則っぷりの武装錬金特性を、如何にしてパピヨンは破るのか、その点に純粋に興味を引かれました。

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