『ツバサ』の方は子ども向けのバトル重視エンタメ(バトルがかなりスーパーな事になっとりました)、『xxxHOLiC』の方は、ライト京極堂とでもいったテイストの子どもから大人まで楽しめるミステリ&ホラー+ちょっぴり哲学な感じの作品になっておりました。そして映像美は両方とも一見の価値有りの出来映え。そんなこんなで公開初日からのネタバレ感想です。
●『劇場版 ツバサ・クロニクル年代記 鳥カゴの国の姫君』

 冒頭の白黒フィルターがかかった美麗絵で、侑子さんの店の前での小狼くんの覚悟完了シーンを再構築してくれただけでも観にいった甲斐があったと思いました。

 ただ全体的にはかなり大ざっぱな子ども向けバトルエンタメの物語になっていたので、アニメ版ツバサ・クロニクルにときおり挿入される哲学テイストな部分を期待していた人は肩すかしをくったかもです(哲学分は続く『xxxHOLiC』で十分に供給されるワケですが)。お姫様が悪の王様にさらわれました、助けに行きます、悪の王様と主人公のバトルです……という至ってシンプルな話だったので。

 それでも王様と小狼くんのスーパー空中バトルははったりが効いてる+映像美で見応えがありました。最初の空中に昇っていった王様に対抗するために主人公サイドが慣行した作戦が、樽大砲による小狼くんキックで撃墜というのが無茶過ぎ(笑)。案の定効かないで小狼くん落下してるし。でもそこから想いパワーで知世姫の鳥(名前失念)が復活(何の裏付けも無い想いパワーによる復活なんですが、怒りや覚悟でパワーアップするWJテイストの少年モノと割り切ればOK)して再び小狼が突撃する所をアニメでも流れてる定番のコーラスで盛り上げる所はがっつり盛り上がりました。突撃小狼くんキックで悪い王様を撃墜。久々に勧善懲悪のがっつりした一撃を拝見できました。

 ◇

 次元が変わるたびに異なる世界描写が丁寧なのが売りの『ツバサ・クロニクル』、劇場版というだけあって、「鳥カゴの国」の世界観描写は綺麗でした。序盤の木の蔦みたいな道を伝って小狼とサクラが移動するシーンなんか、壮大だけど綿密に作られてる一つの世界がばっちりそこにありました。また、世界が鳥カゴに囲まれてるという世界設定が、ラストのカゴが解体されるエンディングに繋がっていくのはニクいと思いました。色々と象徴性を持たせることはできますが、ひとえに開放感を演出するのには十分だったような気がします。ラストシーンで少年が自分の鳥を追うのを止めるのもマルです。鳥は自由。そして、差し出した対価は守る……というツバサテイストの綺麗なラストでした。

◇どちらかというと小狼くんが主人公で知世姫がヒロイン

 黒鋼、ファイがほぼ脇役でメインバトル(VS王様)に絡まなかったのはやや残念。サクラもヒロインとしての影は薄く、見せ場は知世姫のツライ境遇を特殊能力で感知したシーンくらいでした。なかなか、小狼くんの独壇場な映画でした(^_^;

◇と言いつつ樽の中の小狼とサクラのシーンには

 ドッキドキ!(ツバサ・クロニクルの次回予告のモコナの調子で)

 そんな後ろからギュって!回転してるウチに正面からって!

●『劇場版 xxxHOLiC 真夏ノ夜ノ夢』

 「あなたは決して満たされるコトは無い。可哀想に」(侑子さん)

 こちとらかなりの傑作

 関口くんばりに翻弄される四月一日くん視点で謎を秘めた物語が進み、ラストに京極堂バリに解体役として侑子さんが降臨するという『xxxHOLiC』の黄金パターンが十全に堪能できました。最終的なテーマも「本当の願い」という、xxxHOLiC、ひいてはCLAMP作品全体に通じる黄金テーマで、ラストの鬼気迫る侑子さんの解体シーンはちょっとステキ過ぎでした。魔可不思議な洋館という、王道ミステリ要素を持ってきたのもツボです。翻弄される四月一日くんがイイ!

 ◇

 「鍵はあるのに家に入れない女性」が最初に出てきた時は、この女性が定番のネガティブ描写のゲストキャラなのかな?とすっかり騙されて観てたんですが、がっつり裏切られてポジティブキャラでした。

 で、あからさまなどんより演出でネガティブ描写されてたのは、館に集まったコレクター達。このコレクター達のネガティブ要素を、コレクトに専心する余りいつの間にか手段が目的化して最初の「本当の願い」を忘れてる点に凝縮させておいて(序盤の侑子さん邸の保管物とそれに対する侑子さんの態度の描写も、蒐集に対するカウンター的な伏線)、その対比としてラストに侑子さんの解体によって館の主の方は「少女との誓いを守るためだった」という最初の「本当の願い」を思い出すという構成は綺麗でした(つーかちょっと涙腺にキましたよ?)。クライマックスでネガに落とされた館の主に対して、ラストにポジに裏返って救いを与えるというのはイイですな。館の主のネガ時の、コレクター達をコレクトするというちょっとマッドなメタコレクトも、不気味さが練れてて個人的にマルです。ネガ要素だったコレクト(蒐集)が、最後に少女のお手玉蒐集とそれと絆を結んでいる館の主との約束というポジティブ要素に収斂していくのがステキだった。というか、ネガな因果応報オチ(原作版ではこのパターンのラストもよくある)かと思ってラストまでハラハラしてましたよ。映画版のせいか明るいオチで観てる方としても視聴後の気分がさわやかでした。

◇瞳の描写

 これがかなり良かったです。侑子さんのとろろんとした瞳も十全に再現されてて満足だったんですが、さらにツボだったのがひまわりちゃんの瞳。原作版でも進行中のひまわりちゃん伏線を踏まえて、エラく怪しさを宿した瞳になっております。それに呑気にラヴ光線はなってる四月一日とのギャップが良質なギャグになってて楽しかったです。

◇館の描写

 制作がプロダクションI.Gだけあって、攻殻チック、というか『イノセンス』の館シーンを彷彿とさせる美麗で不気味な館の映像、それに惑う四月一日くんのシーンだけでも一見の価値アリの作品だと思いました。怖いよー、マジメンタルに怖いよー。そういう意味で夏に観るのがふさわしい映画とも言えるかもだ。

◇クライマックスはバトル要素まで

 館の主の怪奇と、四月一日くん&百目鬼くんがバトル。無理矢理バトル要素入れんでも!とも最初思ったんだけど、あの混沌とした場で一人超然と歩を進める侑子さんの超越者っぷりをアピールするための舞台装置だったんだなと途中で納得。それくらい、館の主に歩を進めるラストの侑子さんの解体シーンは見応えがありました。あのシーンだけで、ちょっとDVD出たら購入しようかなと、そんな感じ。

 非常に満足な一作でした。もう一回観に行ってやろうか!というくらいに(笑)。

キンヤ『aerial』/『劇場版 ツバサ・クロニクル年代記 鳥カゴの国の姫君』OP

牧野由依『アムリタ』/『劇場版 ツバサ・クロニクル年代記 鳥カゴの国の姫君』ED

劇場版xxx HOLiC 真夏ノ夜ノ夢 オリジナル・サウンドトラック

XXXHOLIC OFFICIAL FANBOOK 劇場版

スガシカオ『奇跡/夏陰/サナギ (初回生産限定盤DVD付)』/『劇場版 xxxHOLiC 真夏ノ夜ノ夢』主題歌「サナギ」収録


現在の人気blogランキングをCHECK!

ツバサ・クロニクル第17話の感想へツバサ・クロニクル第18話の感想へ