痛快歴史ミステリ。邪馬台国東北説を語る表題作「邪馬台国はどこですか?」をはじめ、面白歴史ミステリが6編。各編の序盤に提示されるとんでも歴史論に最初は「そんなバカな」と思うんですが、畳みかけるようなロジックでそのうち理屈上は正しいようにも思えてきたり来なかったりという感じで、我々が共通認識として教えられてきた歴史観を題材にして、論理ゲームを展開してくれます。「真実は一つ!」と命がけで歴史に取り組んでる人達からは嫌われそうですが、僕はこういうなんでもお遊びにしてしまう感覚というのは好きです。冒頭の作者の注意書きは「この作品がフィクションであるという保証はどこにもありません」。こういうメタな視点から固い題材も料理してお遊びにできるスキルというのは正直尊敬です。
 収録してある6編にて、いわく「ブッダは悟りを開いていない」、いわく「聖徳太子と推古天皇は同一人物」、いわく「本能寺の変は織田信長の自殺計画」、いわく「明治維新は勝海舟が催眠術をもちいて一人で成し遂げた」etc、と、一編一テーマでとんでも歴史論ががっつりと語られます。されどそれらのとんでも歴史論が、主人公宮田六郎の超絶ロジックとディベート術にハマっていくうちに、「それ、アリかも!?」な展開になっていくという奇妙な快感を是非とも味わって欲しい作品。

 僕的にはオチが美しいと思った表題作の「邪馬台国はどこですか?」が一番お気に入りかな。全編を通して気むずかしい重い歴史論が展開するワケじゃなく、徹底してエンターテイメントしてるんですが、この一編は特にそれが顕著で、ラストにスパイスが効いてます。やはりエンタメはラストが大事で、「ストン」とオチた音が聞こえてくるようなこの一編はかなりの秀作ではないかと。あとはさすがにそれはぶっ飛ばし過ぎで科学的、客観的な理論とは言えないだろ!と思った「謀叛の動機は何ですか?」なんかも突き抜けてて好き。歴史論なんだけどデュルケームを絡めて語っちゃうなんてセンスがステキ過ぎ

 構成はとんでも歴史論を展開するメインパーソンのフリー歴史家(詳細な職業は語られないんですが、ホームページ作ったり色々やってる自由人という感じ)の宮田六郎、それに対抗する強気な美人女性歴史家の静香助手、従容不迫な静香の先生の三谷教授の三人がとあるバーで歴史論争を展開し、バーテンダーの松永はそんな三人に影響されて最近歴史の勉強を始めている……って感じで、アカデミックテイストに満ちています。ちょっとばかしアカデミックな雰囲気に浸りたい人にも気軽にお勧め。定説、常識で反論してくる静香助手の攻勢を、宮田がぶっとびつつも切れのある論証でぶった切っていく様が面白くて、寝る前に一アカデミック……という感じで短期間で読了いたしました。意外と自分、歴史の雰囲気が好きなことが分かったんで、第二弾の『新・世界の七不思議』の方も是非手にとってみようと思います。

邪馬台国はどこですか?


現在の人気blogランキングをCHECK!